小岩と葛西をつなぐ江戸川区内の「異文化交流」
1. 交通網の影にある「南北の分断」と草の根の挑戦
鉄道網の鉄道網の恩恵により東京中心部へのアクセスが極めて良好な江戸川区だが、その利便性の影で「南北の公共交通網の欠落」という構造的な課題を抱えてきた。総武線沿線の小岩周辺と、東西線・京葉線沿線の葛西周辺。同じ区内にありながら、日常の生活圏や心理的境界は完全に分断され、互いの街を「知らない」状態が長く続いている。この見えない分断線を、行政のインフラ整備に頼るのではなく、住民の草の根の地域活動という「心の交通網」で繋ぎ直す試みが求められている。
2. 異文化としての往来と「歩ける軸」の具体論
実践すべきは、お互いを知らないことを逆手に取った「異文化交流」としてのマイクロツーリズムだ。
小岩の住民が「ディープな路地裏や純喫茶」を案内し、葛西の住民が「西葛西の絶品カレーや臨海エリアの穴場」を案内し合う相互ツアーを企画する。お互いが「観光客」として相手の街を訪ねることで、新鮮な驚きを持って地域を再発見できる。
また、小岩のシニア層が持つ江戸型染めなどの伝統技法を葛西で教え、逆に葛西の若い世代が小岩に出向いてスマホ・タブレット教室を開くといった「出張ワークショップ」は、多世代交流と南北交流を同時に達成する。さらに、小岩から葛西まで南北を緩やかにつなぐ親水公園や緑道などの「歩ける軸」を舞台にしたリレー式マルシェも有効だ。小岩の伝統工芸や老舗の味と、葛西の国際色豊かな食文化を、中間の親水緑道沿いに点在するコミュニティスペースや「大人の食堂(地域食堂)」を中継基地として合流させ、物々交換や食を通じた顔の見える関係を育てていく。
3. 結節点としての船堀と新しい公共性の創出
こうした草の根の具体論を非同期的に結びつけ、持続可能なものにするハブとして、中間地点である船堀の立地や、新しく整備される船堀新庁舎を位置づける。庁舎内のフリースペースを予約不要の「ボランティア・リビング」として使い倒し、お互いのノウハウや課題をシェアする。船堀という文化の汽水域を最後の結節点とすることで、分断の歴史は終わり、リスペクトで結ばれた新しい区民の公共性が立ち上がるはずだ。
