マルクス・ガブリエルと斎藤幸平の思想対立~監修なのに掲載NGされたヤバい話
マルクス・ガブリエルと斎藤幸平。
名前くらいは聞いたことがある人も多いだろう。どちらも現代を代表する若き天才哲学者だ。この二人の思想の対立が、あまりに激しくてヤバくて面白かったので、今回はその話をしたい。
まずは、それぞれのプロフィールから確認しておこう。
■哲学界のロックスター:マルクス・ガブリエル
マルクス・ガブリエル。ドイツの名門、ボン大学の哲学教授。
25歳で博士号を取得し、29歳でボン大学の最年少教授となる。
国際哲学センター長も兼任。
複数の言語(ドイツ語、英語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語、フランス語、中国語)を操る。
さらには古代ギリシャ語、ラテン語、聖書ヘブライ語といった古典語にも精通。
とまあ、絵に描いたような天才で、まさに異次元のスペックである。そんな彼が提唱するのが、「倫理資本主義」という思想だ。
これは簡単に言うと、
「倫理を大事にしながら資本主義をやろう!」
という立場で、つまり、
「倫理(道徳)をちゃんと守ろう!
悪い(人や環境を犠牲にする)ことをしないで、
経済活動をすれば、社会は良くなるよ (^▽^)v」
という話である。
この思想は、彼の著書『倫理資本主義の時代』に詳しく書かれているが、実はその日本語版の「監修」を務めたのが、もう一人の主役──日本の天才哲学者・斎藤幸平である。
■脱成長の男:斎藤幸平
斎藤幸平。東京大学准教授であり、世界的なマルクス研究の第一人者である。
31歳で、マルクス研究の最高権威「ドイッチャー記念賞」を日本人として初めて受賞(しかも歴代最年少)。さらに、著書『人新世の「資本論」』は新書大賞を受賞し、50万部を超えるベストセラーとなった。
この本の主張をざっくり言えば、こうである。
「人間の活動は、地質学に影響を与えるくらいヤバいよヤバいよ!」
地質学では、「この地層は酸素濃度が高いから〇〇代」といった具合に、地層の特徴によって「古生代/中生代/新生代」などの時代区分がされている。したがって、1万年後の未来人が今の地層を掘り返したら、おそらくこう言うだろう。
「わっ、なんだこの地層!
他の時代とまったく違うじゃん!
何があったんだよ、ヤバいよヤバいよ!
これは“人新世(ひとしんせい)”と呼ぶべきだね」と。
つまり、それくらいとんでもない地球規模の環境変化が起きているぞ、おまえらわかってるのか???
──という話。
では、それを食い止めるにはどうすればいいのか?
斎藤はこう主張する。
「地球は有限なんだから、無限に経済成長を目指す資本主義なんかやってたら人類は滅亡する! だから、オレたちは、“脱成長”を目指すべきなんだ!」

ここでいう「脱成長」は、ただ経済成長を控えましょう、という生ぬるい話ではない。もっと根本的に──「資本主義そのものをやめよう!」という、過激な提案である。
そのヒントは、晩年のマルクスにあると、斎藤は言う。
マルクスといえば、「共産主義=富の平等な分配」というイメージが一般的だろう。だが、晩年のマルクスは「エコ思想」に目覚める。そして、「資本主義は自然のサイクルを壊す」と強く批判し、自然と人間が共に生きられる、新しい経済のかたち──「循環型経済」を構想していた。
たとえば、マルクスは以下のような施策を提案している。
金儲けのための過剰生産をやめる(作りすぎ禁止)
土地をくじ引きで定期的に再分配する(富の集中禁止)
斎藤はこう訴える。
「もう、資本主義では地球はもたない。環境を壊してまで成長を追い求めるような経済活動はやめて、持続可能な社会を目指そう!」
それが斎藤幸平の「脱成長」という思想である。
■対立する思想、そして事件は起きた
ここまで見てきたように、二人の思想は真っ向から対立している。
ガブ:資本主義OK(みんなが倫理的になれば、資本主義でも大丈夫!)
斎藤:資本主義NG(成長を前提とするから、資本主義はやめるべき!)
さて、ガブリエルの著書『倫理資本主義の時代』で、斎藤幸平が「監修」を務めたという話はさっきしたが、実はそれだけでなく、巻末に斎藤による「解説」も掲載される予定であった。
……のだが、まさかの展開が起きる。
なんと、斎藤の解説を読んだガブリエルが、「これは載せないでくれ」と掲載をNGにしたのである。
なぜか? いや、とても簡単な話。斎藤がガブリエルの思想をバッサリ批判していたからだ。
この話を聞いたとき、あなたはこう思うかもしれない。
「え、自分の思想を批判されたくらいで掲載NG? ガブリエル、ちょっと器が小さくない?」
あるいは、
「巻末解説なんだからさ、斎藤幸平、そこは空気読んでちゃんと持ち上げようよ……」
いやいやいや!
そんな生易しいレベルじゃない!
たぶん、中身を知れば、あなたも
「こんな解説、載せられるわけないだろ!!
斎藤幸平、ガチでヤバすぎる!!」
という感想になるだろう。
ではいったい、斎藤幸平はどんな解説を書こうとしていたのか──
<本記事の続きはこちら↓>
※このnoteでは、哲学や科学など、人類が考えてきた「知」を面白く解説しています。初めての方は、以下の記事から読むのがおすすめです。
もし「面白かった」と思っていただけたら、メンバーシップにもぜひご参加ください。
「飲茶にコーヒー1杯(500円)おごる」くらいの気持ちで登録していただけると嬉しいです。
登録すると、これまでの有料記事がすべて読めます。
分量としては文庫本4〜5冊分くらいあります。
