水面心理相談室#3「付き合っていないのに、期待して苦しくなる恋の心理」|心理学|HSP|人間関係



この番組は、読むラジオをテーマに、皆様からお寄せいただいたお便りの中から、ひとつの心の悩みを取り上げ、朝倉と相馬が心理学の視点を交えながら、静かに言葉を交わしていく相談室です。
朝倉
「それでは、本日のお便りです。」
“まだ付き合っているわけではないのに、相手の言葉や態度に期待してしまって苦しくなります。
優しくされると、もしかして脈があるのかなと思ってしまうし、少し距離を感じると、一気に不安になります。
はっきり関係が決まっていないのだから、期待しないほうがいいと頭では分かっているのに、気づくと心が相手に振り回されています。
付き合っていないのに、こんなふうに苦しくなるのはどうしてなのでしょうか。”
朝倉
「まだ名前のついていない関係ほど、心は置き場所を失いやすいのかもしれませんね。」
相馬
「うん。恋人ではない。でも、ただの知り合いとも言い切れない。そういう場所にいると、心はどうしても答えを探し続けてしまうんだと思う。」

相馬
「付き合っていない恋が苦しいのは、気持ちがあるからだけじゃなくて、関係に余白が多いからなんだと思う。」
恋人ではない。
けれど、何もないわけでもない。
ただの優しさかもしれない。
でも、少し特別だったようにも見える。
曖昧な関係の中では、ひとつひとつの言葉が大きく見えてしまう。
朝倉
「人は、空白があると、そこに意味を置きたくなるものですからね。」
相馬
「そう。だから相手の表情や返信の速さや、何気ない一言から、答えのようなものを探してしまう。」
あの言葉は、特別だったのかな。
あの優しさは、誰にでも向けるものだったのかな。
返信が遅いだけで、自分が昨日まで大切にしていたものまで、急に間違いだった気がしてしまう。
そうやって、まだ形のない関係に輪郭を描こうとする。
けれど、輪郭のないものをなぞり続けるほど、心は疲れてしまう。
好きだから苦しい。
それもきっと、間違いではない。
でも本当は、好きだからだけではない。
分からないまま、大切にしてしまったから苦しいのだと思う。

朝倉
「優しくされれば、期待してしまうのも自然ですね。」
相馬
「うん。期待すること自体は、悪いことじゃないよ。」
嬉しかった言葉。
気づいてくれたこと。
他の人とは少し違うように感じた時間。
そういうものは、心の中で小さな希望になる。
朝倉
「ただ、その光が本当にこちらへ向けられているのかは、まだ分からない。」
相馬
「そうなんだよね。優しさは希望にはなる。でも、確証ではない。」
相手が優しかった。
それは事実かもしれない。
でも、その優しさが恋愛感情から来ているのか。
自分だけに向けられたものなのか。
これから関係が進む合図なのか。
そこまでは、まだ分からない。
それなのに、心は先に進もうとしてしまう。
もしかしたら。
きっと。
たぶん。
あの時の言葉は。
そんなふうに、希望と不安のあいだで同じ場所を行き来してしまう。
朝倉
「人は、曖昧な優しさの中に、自分に都合のいい祈りを沈めてしまうことがあります。」
相馬
「うん。だから苦しいんだと思う。期待している自分と、期待しすぎて傷つくのが怖い自分が、同時にいるから。」
相手が悪いとは限らない。
自分が重いわけでもない。
ただ、曖昧な優しさは、人の心に長く残ってしまう。
相馬
「期待してしまうのは、弱いからじゃないよ。それだけ、その人のことを大切に感じていたということでもあるから。」
朝倉
「期待した自分を笑う必要も、なかったことにする必要もありませんね。」
相馬
「うん。ただ、その期待に自分の全部を預けなくていいんだと思う。」

朝倉
「では、期待しないようにするべきなのでしょうか。」
相馬
「無理に消そうとしなくていいと思う。ただ、少しだけ分けて見ることは大事かもしれない。」
相手が優しかった。
連絡をくれた。
気にかけてくれたように感じた。
それは、事実や感じたこととしては本当。
けれど。
自分を特別に思っているに違いない。
いつか関係が進むはず。
きっと同じ気持ちでいてくれている。
そこには、願いが混ざっていることがある。
朝倉
「恋をしている時ほど、事実と願いは自然に重なりますからね。」
相馬
「うん。だから、苦しくなった時は、自分を責める前に少しだけ整理してみるといいと思う。」
これは、実際に起きたことなのか。
それとも、自分がそうであってほしいと願っていることなのか。
相手の態度なのか。
自分の不安が作った想像なのか。
もちろん、きれいに分けられない日もある。
それでも、少しだけ立ち止まることはできる。
相馬
「期待を消すためじゃなくて、自分を守るために分けるんだと思う。」
朝倉
「期待を裁くのではなく、期待に飲み込まれないために。」
相馬
「そう。好きな気持ちは大切にしていい。でも、自分の価値まで、相手の反応に預けなくていい。」

相馬
「付き合っていないのに苦しくなるのは、おかしなことじゃないよ。」
名前のない関係ほど、心は行き場をなくしやすい。
少しの優しさに救われて、少しの距離に傷つく。
たった一通の返信で嬉しくなって、たったひとつの沈黙で不安になる。
それは、あなたが重いからではない。
ちゃんと人を好きになったから。
曖昧な場所で、それでも心を差し出していたから。
朝倉
「水面は、形のないものほど映してしまう。」
相馬
「うん。まだ名前のついていない関係ほど、心はそこに意味を見つけたくなるんだと思う。」
けれど、映ったものがすべて真実とは限らない。
水面に映る月は、美しい。
けれど、手を伸ばしても掴めない。
それでも、美しかった気持ちまで否定しなくていい。
期待してしまったこと。
不安になったこと。
何度も相手の言葉を思い返してしまったこと。
その全部を、恥ずかしいものにしなくていい。
相馬
「恋がどうなるかは、相手の気持ちもあることだから、自分だけでは決められない。でも、自分を大切に扱うことは、自分で選べると思う。」
朝倉
「相手に選ばれるかどうかと、自分に価値があるかどうかは、別の話ですからね。」
その恋がどう転んだとしても、
あなたの価値まで、一緒に揺らさなくていい。
相手の気持ちは、相手の中にある。
けれど、自分をどう扱うかは、自分の手元に戻していい。
期待してしまった夜があってもいい。
不安で眠れない日があってもいい。
それでも最後には、
相手の答えを探し続けたその手を、
少しだけ、自分の心へ戻してあげてほしい。
まだ名前のない関係の中でも、
あなた自身まで、名前のないものにしなくていい。
最後まで読んでくれてありがとう。
その恋の中でも、あなたの心を置き去りにしないでね。

第4話につづく▼




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