クリエイティブサポートツール(CST)を研究開発する難しさを語るまで(前日譚)

本稿は、HCIアドベントカレンダー(12/5分)の前日譚となります。
元々は1つの記事でまとめて出す予定でしたが、思ったより自己紹介のボリュームが多くなってしまったので、別記事に切り出した形になります。
クリエイティブサポートツールの困難さを語る人間がどのようにできあがったか気になる方は是非読んでみて下さい。
(主にここ5年の活動を振り返る形となります)


学部〜修士時代(~2021年)

学部では雑多に、修士では主にホログラム関連の研究をしていました。メインは光学系のホログラムの研究ですが、派生して超音波ホログラムの研究をしたりもしました。博士課程に入っても、後輩の手伝いなどでホログラム関連の論文の共著には入っていますが、自分が主体的に時間を使ったのは修士までです。
直接的にはあまり本稿と関わらないので、プロフィール系のリンクだけ貼っておきます。
<Lab member page>
https://digitalnature.slis.tsukuba.ac.jp/2017/04/kenta-yamamoto/ 
<Google Scholar>
https://scholar.google.co.jp/citations?user=b3GDxFcAAAAJ&hl=en


博士課程時代(2021年~)

博士課程の始まり(D1: 2021年)

修士までの研究はそれなりに順調にまとまって終わったので、そこから博士課程で何の研究をするのか、ということで悩みました。色々悩んだ結果、より趣味的な、自分じゃないとやらないような研究テーマにしていきたいと思い、主に撮影(写真・映像)を対象としたクリエイティブサポートツール系の研究に進んでいきます。

D1~D2にかけて、一本きちんと頑張って論文を通したのが下記の研究で、UIST'22に採択されたりもしました。内容としては、写真撮影におけるライティングデザインにフォーカスした研究で、どのようにライティングデザインタスクのサポートをするか、ということをツールを作りながら考えていた研究になります。

インターンの夏(D2: 2022年の夏)

そして、学会発表も終わって次のテーマについてどうしようか悩みながら日々が進んでいく中、D2の夏から、様子が変わってきます。

まず、D2の夏にインターンをしようかと思い、インターン先を考え始めました。もちろん研究インターンなども候補としては考えていたのですが、撮影についてもっと深く知らなければ、つまり現場に行ったりして対象ドメインについてより肌感を掴んだほうがいいんじゃないか、という仮説などもあり(純粋に自分が現場を知りたいというのもあり)、最終的には制作会社でインターンさせてもらうことにしました。
(研究に従事する博士課程の学生としてそういうことをする人は流石に少ないと思います)

結果的には数ヶ月ほどの短期間とはなりましたが、オフィス近くのマンスリーを借りて住み、論文投稿期間以外は、ほぼほぼ働き詰めでアシスタントとして現場に行かせてもらいました。大小合わせて20件近くの現場に同行させてもらったのは、今にも繋がる大事な財産です。

そして、そんな貴重な現場経験を終えてから、さて改めて研究を考えていこうかな、となった時期、今度は別の事件が起きます。

画像生成の春、季節は秋冬(2022年の秋冬)

リンク:2022年(AI画像生成・生成系AI問題年表)

Midjourneyのサービス開始が2022年の7月。
その前後にDALL-Eも出ていたし、秋冬にかけてStable Diffusion含めた画像生成系のクオリティアップが怒涛の勢いで進んでいきます。

そんな時期に、指導教員の落合さんと会って話すと、
「撮影(特に商業)とかなくなってくんじゃない?」
みたいな展開にも。
自分はその時点までは、写真撮影タスクを対象とした支援ツールについて考えていたわけですが、そもそもそうしたタスクがこの世に残っていくのか、など対象ドメイン自体の存続の危機を感じるようになるわけです。

(今振り返ってみれば、一定の切り分けで済む話に落ち着きはしましたが、当時はより大きな影響を感じていたわけで、その辺の難しさはありますよね…)

映像制作への切り替え・未踏アドバンスト採択(D3: 2023年)

こうした世俗的な背景や、制作会社での個人的な経験も踏まえ、対象ドメインが写真撮影から映像撮影に移っていくことになります。

そして、映像撮影に対象ドメインが移る中で、将来的な映像生成AIの発展も予見される中、そうしたコンテンツ生成側ではなく、コンテンツを作る人間側をサポートするということをテーマに、未踏アドバンスト(AD)で採択をしてもらいます。

採択された未踏ADでの期間は、とにかくビジネス的なところと向き合うことになりました。これは、ずっと研究畑にいた自分にとってはなかなか大変で、全く違う世界を一から知るという経験になります。

会社創業:制作会社x研究開発を自分たちの手で(D?: 2024年春~)

そうこうするうちに、未踏ADの期間は終了となり、その後どうするかを考える時期になります。未踏ADでやっていたものを引き続きやりたいということと、制作自体も自分たちでやった方が色んな面で良い、ということもあり、それらを合体させた形でBONSAI STUDIOを創業しました。

創業後は、ひたすら会社を回していくという感じでした。
会社経営自体、初めてだったこともあり、とにかく一年目は全てが新しい経験、という中で日々が過ぎていきます。
うちの会社は、VC等からの資金調達をするルートにはいかず、借入などはしつつ、自己資金で回す形を選択したので、いわゆる小規模な会社として普通に回すためにはどうしたらいいか、ということを模索した日々でもあります。今や2期目の後半にもなり、ようやく色んなものが落ち着いて見えるようになりましたが、それまではいわゆるビジネスというものにきちんと向き合う大変な日々でした。

他のクリエイティブサポートツールの開発を見たり手伝ったりする中で(2025年)

会社は会社でやる中で、未踏ADのイベントには定期的に参加させてもらっていたため、自分たちの同期を含めたいくつかのプロジェクトで、クリエイティブサポートツール的な開発を見聞きする機会に恵まれました。

アニメ・漫画や、ファブリケーション系など、意外と幅広くこの数年でプロジェクトを見せてもらうことができました。

その中で、特に自分にとっての興味・親和性が持てたプロジェクトで開発を手伝わせてもらうことになりました。これは現在進行形で進んでいるわけですが、そこでの経験も、クリエイティブサポートツールに対するものの見方を深める糧になっています。


振り返り・まとめ

このように、最初は研究者として自分独自の研究をしたいというところから始まった旅も、今や全く想像もつかなかった場所に来ています。
改めてまとめてみると、

  • 割と純粋な研究的好奇心から、撮影を対象とするクリエイティブサポートツールの道へ

  • 対象ドメインへのより深い理解のため、現場へ

  • 技術進展による世間の大幅な変化

  • 対象ドメインを少しスライドさせて、改めてツール開発へ

  • 未踏ADを通じた、ビジネスとの向き合い

  • 会社創業・経営を通じた、ビジネスとの向き合い

  • どうしたらクリエイティブサポートツール開発はうまくいくのか、新たな方法論への道のりの模索

という感じでしょうか。
最後の模索は現在進行形ではありますが、その中での仮説的なものは立っているので、その辺は本編の記事で整理して話せたらと思います。

この記事はひとまず以上となります。
これまでの活動をまとめたいな、と思って数年くらい何も書けてなかったので、この機会に少しでもまとめることができて良かったです。

p.s.
自分で文章を0→1で書く機会が減りすぎて、文章書くのが大変・下手になりましたね…



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