英語、本当にあかんかった僕が、ラグビーをきっかけに話せるようになるまで。
プロラグビー選手の山川力優です。東芝ブレイブルーパス東京に所属しながら、アスリートと社会をつなぐマッチングサイトを経営しています。
今回で4本目のnoteです。
前回はちょっと社会的な話やったので、今回は軽く読める話を書こうと思います。
前回のnoteで、「日本のリーグなのに、チームの公用語が英語になってきている」という違和感について書きました。中にいる選手として、その違和感は今もあります。
ただ、僕個人のキャリアとして見たら、「これ、めっちゃチャンスやん」と思ったのも事実なんです。
普通の社会人で、こんなに英語を使う場所はあんまりない。英語がまったくわからんかった僕みたいな選手でも、毎日普通に英語で会話できる環境がそこにあるって、すごい恵まれてるなと。
そう思って、大学を卒業してNTTドコモのチームに入ってからは、英語を意識して勉強してきました。今回はその話をします。
大学卒業時、中学レベルもあやしかった
正直に書きます。
中高の頃の僕は「英語なんか勉強してどないすんねん、どうせ使わんやろ」と本気で思ってました。スポーツに打ち込んでて、勉強もまともにしてなかった。
どれくらいできなかったかというと、それこそ「I /my /me/mine」みたいな格変化もあやしくて、be動詞の使い方も雰囲気っていう。
これが大学を卒業して、社会人になったときの英語の実力でした。
ドコモ1年目、「これはやばい」
社会人になってチームに入ったら、通訳はついてるけど、ミーティングは英語、コーチの指示も英語。
これは自分で勉強せなあかんし、理解できないのは自分の責任やと思ったんです。あと、シンプルに、外国人と話してみたかった。
「これはやばい」となって、勉強し始めました。
最初に使ったのはDuolingoというアプリ。あと、自分でノートに書いて単語を覚えたりしていました。これでゼロから、かなり伸びることができました。
あとで振り返って思うのは、Duolingoが効いたのはアプリ単体で完結してたからじゃなくて、チームに英語を話せる環境があったからやということ。
アプリで覚えた単語を、すぐ次の日にチームの外国人選手相手に試せる。アウトプットできる場所があるっていうのが、一番強かったんですよね。
2年目、飲みに行く回数を爆増させた
そこで2年目からは、外国人選手と飲みに行く回数をめちゃくちゃ増やしました。
「わからんけど、とりあえず聞く耳作らなあかんわ」と思って。もうご飯行きまくって、聞く耳をめちゃくちゃつけにいった。
とはいえ、何言ってるか聞き取れない状態で、2時間、3時間の飲み会を乗り切るのは、そう簡単じゃない。
それでも、翻訳アプリにはできるだけ頼らないようにしてた。目的はその場の会話を成立させることやなくて、英語を上達させることやったから。便利な道具に逃げ続けたら、そこで成長が止まる気がしてたんです。
最初は何言ってるか全然わからん。でも、ちょっとずつわかるようになってくる。聞き取れるようになっても、自分から話すのはまた別、というのが2年目の終わりの状態でした。
決め技は「How was yesterday?」
毎日、チームにいる外国人とどんな感じで話してたかというと——
朝は "Good morning"。それから "How are you?""Good, thank you" で会話を始める。
Good morning.
How are you?
Good, thank you.
そこから僕がずっと使ってた決め技が、"How was yesterday?" です。
How was yesterday?
外国人選手って、Snapchatみたいなアプリでよくストーリーを上げてるんですよ。前の日にカフェに行ってたら"How was the cafe yesterday?"、週末明けやったら "How was last weekend?"と声をかけてみる。
How was the cafe yesterday?
How was last weekend?
これがめちゃくちゃ便利で、「とりあえずHow wasだけ覚えといたらいい」くらいに思ってました。
ただ、最初の頃は失敗もありました。"How was yesterday?" って聞いたら、「めっちゃ良かったよ!なんかね〜◯×△□!」みたいなテンションで一気に返ってきて、何言うてるかわからん。「Oh, yeah」で会話が終了する、みたいな。
ここで「もう無理」ってなる人もいると思うんですけど、毎日やってたら、徐々にわかるようになってくる。
ドコモ同期に教えた「遊びちゃうぞ」
ここで、僕の英語人生のなかの忘れられない話をします。
ドコモには、入団同期にタイラー・ポール(現クボタスピアーズ/日本代表)とTJ・ペレナラ(現ブラックラムズ/ニュージーランド代表)がいました。
特にタイラーとは、僕が英語ができない、彼が日本語ができない、という似たもの同士で、お互いに「お前の言葉を教えてくれ」って感じで、大阪の街でめちゃくちゃ一緒に飲んでたんですよ。
そんな中で、ある時、僕がタイラーに「遊びちゃうぞ!」っていう関西弁を教えたんです。意味は "This is not a joke."。
遊びちゃうぞ!=This is not a joke.
そしたら、これがタイラーに異常にハマってしまって。
何かといえば、「遊びちゃうぞ!遊びちゃうぞ!」と言いまくる。
普段の会話に挟むだけならまだしも、しまいにはプレー中まで「遊びちゃうぞ!」と言い出す。
しかも使う場面が、真剣にやってるスクラム練習の最中。フィットネスゴリゴリの、空気がピリッとしてるあの瞬間に「遊びちゃうぞ!」って発するんです。
チームメイトたちはちょっとイラッとしてましたが、僕はハマって面白くて仕方がなかった笑
最近、久しぶりにタイラーと会ったら、もうめちゃくちゃ日本語が上手くなってて、僕も英語が上手くなってたから、お互いびっくり。
僕が英語で喋ってるのに、向こうは日本語で返してくる。
完全に逆になってました。同期入団の時は、お互いほぼゼロからのスタートやったのに。
同期のTJ・ペレナラも、ずっと真面目に日本語を勉強し続けて、いまやすごいうまいんですよ。あの真面目さは、見習わなあかんなと思います。
ここまで「教えた話」ばかり書いてますけど、タイラーからも、僕は英語を山ほど教わってます。
ただ、覚えた英語のほとんどが、ここでは到底紹介できないものばかりで。人前で使ったら一発アウト、みたいな。
海外の選手って、なぜかそういう英語を真っ先に教えてくるのが好きなんですよね。
だから、あの時期に覚えた英語の半分くらいは、いまだに表で出したことがないです(笑)。
東芝で、もう一段必要になった
ドコモの2年が過ぎると、「一回ちゃんと海外に行きたいな」と思うようになりました。「どんだけ話しても向上していかない」感覚があったんです。
それまでも友達とバリに遊びに行ったりはしてたんですけど、ちゃんと「英語に向き合うために動く」というのはやってこなかった。
東芝に移籍してからは、ドコモの時よりさらに英語が必要になった。
東芝2年目の中盤くらいから、週1で英語レッスンに通い始めました。日本人講師の対面レッスンです。
これが、めっちゃ効いた。
ニュージーランド3ヶ月で爆伸び
そして東芝3年目のはじめ、ニュージーランドに3ヶ月留学しました。ここで一気に伸びました。
「ある程度勉強してから留学に行ったほうがいい」ってよく言われるけど、本当にその通りやと思います。ベースがあるから、現地で吸収できる速度が違う。
ただ、行った瞬間に困ったのがカフェの注文の仕方。
そんな初歩的な英語?と思うかもしれませんが、日本にいて選手と話す中では使うシーンが一度もなかった。「これ、注文どうやってやんねん」となって、一緒に行った友達に教えてもらいました。
そこで覚えたのが、"Can I get an iced latte, please."
Can I get an iced latte, please.
この"Can I get〜"がすごい使える。日常で1日3〜4回は使ってました。命綱みたいなフレーズですよね。
現地で新しいラグビー選手と会うときも、とくに難しい言葉は使いませんでした。だいたいこんな感じ。
Nice to meet you. I'm Rikyu. I'm from Japan, playing for Toshiba Brave Lupus Tokyo. I play loosehead and tighthead.
ちなみに"loosehead"が1番、"tighthead"が3番を指す言葉で、僕は両方をプレーするので、こういう伝え方をします。
ミーティングのノートを、英語で取る
ニュージーランドから帰ってきてからは、コーチと一対一でも英語で話せるようになりました(公式の1on1は、誤解されたら失礼なんで、今でも通訳に入ってもらってますけど)。
とはいえ、コーチによって英語の難易度って、全然違うんですよ。
簡単な英語でゆっくり話してくれる人もいれば、もう容赦ないスピード・難度で話す人もいる。
東芝のディフェンスコーチの英語はわりと聞き取れるから、そのコーチとのミーティングでは、ノートは聞いた英語のまま書きます。
たとえば「相手はアンブレラディフェンスで来るから、低いキャリーで行こう。アグレッシブにいかないといけない、なぜなら相手は掴みかかってくるからだ」みたいな話やったら——
They wanna do umbrella on defense. → We gonna do low carry.
We have to be aggressive. → Because they wanna do grappling.
こんな感じで、矢印で繋げて書く。通訳を介すより、自分の耳で聞いたほうが「頭に入る」んですよ。
一方で、FWコーチの英語は難しく、文も長く、専門用語も多いから、そっちはもう諦めて、通訳の日本語を聞いて日本語でメモります。 無理して英語ノートにこだわってたら、肝心の戦術が頭に入ってこないので。
聞き取れるところは英語、無理なところは日本語。全部英語で取ろうとしない。これが今の僕のミーティングノートのスタイルです。
ちなみに、こうやって英語のままノートが書けるようになって気づいたことがあって。英語って慣れてくると、ゆっくり話す方が逆に難しい。
人にゆっくり伝えようとすると、自分の思考のスピードと噛み合わなくなって、かえって詰まる。普段の早さでサッと言う方が自然に出てくる。これは英語が少しずつ体になじんできた証拠かな、と勝手に思ってます。
違和感と、チャンスは両立する
最初の話に戻ります。
リーグの公用語が英語化していることへの違和感は、今もあります。資料も別に日本語でええやん、と思います。
でも、その環境を個人としてどう活かすかは、自分次第でもある。
英語ができるようになって、海外の選手と直接話せるようになりました。コミュニティが広がるんですよ。
ラグビーをやっていなかったら絶対に出会わなかった人たちと、対等に関われる。これはほんまにすごいことやなと思ってます。
海外旅行の怖さもなくなりました。どこに行っても「したいこと、欲しいもの」が自分で言える。人生観が広がるし、行動の幅もめちゃくちゃ広がった。
それでも、ニュアンスで言いたいことが言えへん時はいっぱいあるし、「1年くらい海外住みたいな」って気持ちもある。終わりはないです。
