「ラグビー選手はビジネスに強い」は本当か? 現役プロ選手兼・起業家が出した結論
経営者と飲みに行くと、だいたい言われるんです。「ラグビーやってたんやろ? うちの会社来ーへん?」って。
プロラグビー選手の山川力優です。東芝ブレイブルーパス東京に所属しながら、アスリートと社会をつなぐマッチングサイトを経営しています。
前回のnoteでは、現役選手のまま起業した経緯を書きました。今回は、もう少し広い話をしてみたいと思います。
「ラグビー選手はビジネスに強い」——これ、よく聞くけど本当なんか?
僕なりの答えは、本当です。
でも、当の本人たちがそう思ってない
先に一番大事なことを言います。
僕が起業して、SNSで発信して、いろんなサービスを始めたのを見て、チームメイトや後輩が聞いてくるんですよ。「すごいな、どうやってんの?」「収益立ってんの?」って。
で、僕が「こうやってやってるよ」って説明すると、みんな口を揃えてこう言う。
「俺やったら絶対できへんわ。」
いや、できます。簡単な話じゃないけど、やれば絶対できる。
ラグビー選手はビジネスに強い。経営者もそう思ってるし、僕自身もそう確信してる。なのに、当の選手たちにその自覚がない。 これが一番もったいないことやと思ってるんです。
だから今回は、なんでラグビー選手がビジネスに強いのか、その理由を書いていきます。これを読んで、「あ、俺にもできるかも」って一人でも思ってくれたら嬉しい。
今、学生で、社会人でラグビーを続けようか迷っている人がいたら、ラグビーをやる選択は悪くないよって、思ってほしい。
経営者はラグビー経験者を欲しがっている
まず事実の話から。いろんな調査で、企業が採用したいスポーツ経歴の1位にラグビーが入ることが多いんですよね。野球やサッカーなどの人気スポーツを抑えて、ラグビー。
僕自身、経営者の方たちと飲む機会が多いんですけど、体がでかいんでだいたいバレます。「ラグビーやってるの?」って聞かれて、そこから話が広がって、「引退したら全然うちの会社来てくれてええから」「拾ったるわ」って、普通に言われる。
冗談半分、本気半分。でもそういう声は、本当に多い。
で、僕自身も今、経営者として人を雇うとしたらどうするかって考えると、正直、ラグビー経験者がいい。
なんでそう思うのか。
15人の「違う人間」と勝つスポーツだから
ラグビーがビジネスに強い一番の理由は、ここに集約されると思ってます。
ラグビーは15人でやるスポーツです。で、一人ひとりに明確な役割がある。僕のポジションはプロップやから、スクラムを絶対に負けないのが仕事。ロックならラインアウトを絶対取る。フランカーならタックルを絶対決めていく。
自分に与えられた役割をまず全うする、という意識がデフォルトで入ってる。 これがまず大きい。
会社って結局、それぞれが自分の持ち場をきっちりやれるかどうかで回るわけじゃないですか。「それは僕の仕事じゃないんで」って逃げずに、与えられた仕事をまず全力でやる。ラグビー選手はこれが体に染みついてる。
でも、もっと大事なのはその先です。
フォワードとバックスでは体格も役割もまるで違う。フォワードの中でもフロントロー、ロック、フランカーで全然タイプが違うし、バックスの中にもハーフ団がいて、ウイングがいて、それぞれ別の人種みたいなもんです。
同じポジションの人とは自然にしゃべれる。考え方も似てるから。でも、違うポジションの人たち——自分とはタイプの全然違う人間と連携して、勝たなあかん。
しゃべらんと勝てないスポーツなんですよ、ラグビーは。だから関係構築の力がとにかく鍛えられる。
これって営業の場面でも、チームで仕事する場面でも、ものすごく効いてくるスキルです。
礼儀と根性——社会人の「基礎体力」
ラグビーって結構な縦社会なんですよ。特に高校時代、寮生活してた人間とかは、先輩の洗濯物を洗ったり、先輩がどうしたら喜ぶかを常に考えて動く。
僕自身は洗濯とかはあんまりやってなかったですけど、掃除とか、気を回すことはめちゃくちゃ鍛えられました。
先輩にどうしたら喜ばれるかを考える——これをビジネスに置き換えると、上司が何を求めてるかを想像する力になる。
できる後輩がいたら「こいつええやん」って思うのは、どこの会社でも一緒ですよね。そういう人がいると職場が回りやすくなるし、外に営業に行っても「礼儀正しい人やな、ええ会社やな」って印象を持ってもらえる。
それに加えて、ラグビー選手は根性がある。営業をガンガン回せるし、断られても折れない。「あそこに営業行って、この資料まとめといて」って頼んだ時に、レスポンスが早くて、しっかりやってくれる。
チームがどう動いているか察して、自分のところに来たボールをきちっと回す。
礼儀正しくて、根性があって、レスポンスが早い。ラグビーをやってるだけで、社会人としての「基礎体力」がある程度できあがるんです。
あと、意外に思われるかもしれないですけど、場を盛り上げる力もビジネスではめちゃくちゃ重要で。僕自身、経営者の方との飲みの場では結構盛り上げ役をやるんですけど、面白い=人の心を掴むのがうまい、ということやと思ってるんです。
ラグビー選手って、自分だけ楽しければいいっていうタイプじゃない。みんなで楽しもうよっていう空気を作れる。これは持ってない人の方が多いスキルです。
入社してみたら「勝ち筋あるな」と思った
僕は天理大学出身です。
新卒でNTTドコモに社員選手として入社した時は、「Fラン大学出身」って言われてました。「社会出てやっていけるわけないやん」って。
でも働き始めたら、正直、全然違った。
東大出身の人、明治の人、立教の人、いろいろおったけど、「え、この仕事量で疲れてんの?」「え、これ俺でもできるやん」って思うことがめちゃくちゃあった。とくに営業の仕事では、僕の持っているコミュニケーション力はかなり生かされました。
もちろんコンピューターに強い人はいたし、そういうスキルは認めてる。でも僕は新卒で入社したあの頃に、「そういうIT的なスキルは、将来、必要とされるポジションじゃなくなるんかな」と思ったんです。
実際、今AIが出てきて、まさにそうなってる。
一方、営業とか対人間の部分は、コンピューターにはできへん。そこにラグビー選手の勝ち筋があると、入社当時から思ってました。
チームビルディングと「ストレートトーク」
ここからもう少し大きな話をします。
経営とラグビーのチームって、すごい似てると思ってるんです。
ちゃんと役割分担があって、そこをそれぞれが全うする。一人じゃどうにもできへん。みんなが同じ方向を向いてやっていく。これがラグビーやし、経営やし。
よく「三本の矢は折れない」って言うじゃないですか。ラグビーはそれが15本ある。で、なんで折れないかっていうと、同じ方向を向いてるから。もしバラバラの15本やったら、一本ずつ簡単に崩せる。
ラグビーはみんな同じ方向を向いてる。だから折れない。折れない経営ができる。
そしてそのチームビルディングの中核にあるのが、「ストレートトーク」の文化です。
ラグビーでは、みんなで遠慮なしにはっきり話し合ったり、普段言えないこと、我慢してることを、なくすためのセッションをよくやります。
飲みに行って、自然な流れでストレートトークになっていく。「お前のああいうところ、正直俺あかんと思ってんねん」「俺はこうした方が絶対いいと思うわ」って、面と向かって言い合う。
言いたくないことも言わなあかんし、言われたくないことも言われなあかん。
でもそれを受け止める力も必要やし、受け止めてもらえるように伝える力も必要。これって、今のビジネスの世界で一番足りてないスキルなんちゃうかなと思うんです。
率直にものを言うことがリスクでしかなくなってる時代に、ラグビー選手は「上手に本音を言う」訓練を積んでる。しかもフォローもちゃんとする。傷つけて終わりじゃない。
リーチマイケルさんなんかは、こういうチームビルディングの飲み会をよく開くんですよ。あの人は本当にそういうところがすごい。
社員でも経営者でも、どっちでも戦える
ここまで読むと「ラグビー選手は最強やん」って思うかもしれない。実際、社員としてはめちゃくちゃ強いと思ってます。
じゃあ経営者としてはどうか。正直に言うと、ちょっとハードルがある部分もある。
ラグビー選手って基本的に「言われたことを自分で細分化して実行する」のが得意なんですよ。逆に言えば、トップに立って人に指示を出す側の経験は、意外と少ない。キャプテンとかはまた別ですけど。
僕の場合は、中学まで野球のキャッチャーをやってたのが大きかった。キャッチャーっていろんな人に指示を出さなあかんし、全体を見る目線が求められる。ラグビーでいえば、フッカーみたいなポジションが近いかもしれない。
ただ、これは「経営者に向いてない」っていう話じゃない。経験が少ないだけで、やればできるんです。場の空気を作る力、誰とでも協力してゴールを目指せる調整力も備わっている。
社員としてもめちゃくちゃ活躍できるし、経営者としても挑戦する力はすでに持ってる。
どっちの道を選んでも、ラグビーで鍛えたものは絶対に武器になる。
ただし、何もしなかったら置いていかれる
ここだけは厳しいことも言っておきます。
ラグビー選手がビジネスに強いのは事実。でも、現役の間に何もアクションを起こさなければ、せっかくの可能性を大きく狭めてしまう。
プロ選手ってラグビーしかしないわけで、普通にやってたら社会からかけ離れていく。10年やれば10年分、社会から離れる。
その間にビジネスの勉強をしてる人、副業をやってる人、経営者と飲みに行ってる人——そういう人たちは少しずつ社会に慣れていける。でも何もアクションを起こさなかった人は、やっぱり出遅れる。
前回のnoteでも書いたけど、ラグビーをやりながら同時にビジネスも走らせることは、絶対にできる。ニュージーランドのオールブラックスの選手がやってるんやから。
おわりに
僕の座右の銘は「なせばなる」です。おじいちゃんが亡くなる三日前に言ってくれた言葉で、ずっと覚えてます。
基本的に人って、やり続けてたら何らかの形にはなる。途中でやめるのが一番もったいない。
考えてみてほしいんですよ。ラグビーを続けて、リーグワンのチームでプレーできる確率って、1%未満の世界。ビジネスで成功する確率がそれより低いわけがない。
役割を全うする力。礼儀。コミュニケーション。根性。場を盛り上げる力。チームビルディング。ストレートトーク。全部、ラグビーで鍛えてきたものです。
ラグビーやってる人は、もっと自信持っていい。ビジネスに強い。これは本当です。
