【最終報告書】オンライン・コミュニティ参加者への支援の効果と調査実施上の課題(結果出ずの報告です)
研究の背景と目的
近年、オンライン・コミュニティは「新しい働き方」や「学び直し」を支える重要な場として注目されています。
一方で、「参加はしたものの、思うように行動できなかった」
「発言やイベント参加に心理的なハードルを感じた」
といった声も少なくありません。
私自身も、これまでいくつかのオンライン・コミュニティに参加してきました。その中で、とてもよい出会いや学びを得られた場がある一方、「興味はあるが発言できなかった」「イベントに参加できなかった」という経験や声を多く見聞きしてきました。
同じようにコミュニティに参加していても、積極的に活動する人と、そうでない人が分かれるのはなぜなのか。また、ちょっとしたサポートがあれば、その人の行動に変化が生じるのではないか。
そうした問題意識が、本研究の出発点です。
本研究では、あたラボ5期に参加する参加する人の特徴や、行動に影響を与える要因、さらにサポートが行動変容につながる可能性について、実践的に検討することを目的としました。
当初の研究計画と測定内容
本研究では当初、以下の点を明らかにすることを目指していました。
コミュニティ参加者の中で、比較的積極的に活動する人の特徴は何か
サポートがあることで、「やってみよう」という意識や行動に変化が生じるのか(サポートグループと、そうでないグループとの比較)
行動の変化が、気持ちの面にどのような影響を与えるのか
これらを検証するため、アンケート調査および行動ログの分析を組み合わせた研究計画を立てました。
主な測定項目
アンケートでは以下の項目を測定しました。
基本的属性
プロフィール、年収などのデータを整理し、以下の項目との関連を調べる。
統制の所在(Locus of Control)
自分の行動や結果の原因を、自分の中に求めるか、外に求めるか。
自己効力感(Self-Efficacy)
自分には行動できる、やればできると信じる気持ち。
ウェルビーイング(PERMAスケールを用いる)
持続的に幸せと感じられている状態かどうか。
これらのデータを用いて、群別比較や時系列での変化を分析することを想定していました。
調査の実施状況
調査の結果、初期アンケートについては25件の回答を得ることができました。
一方で、中間アンケートについては2件の回答にとどまり、当初想定していた群別比較や時系列比較を行うには、サンプル数を確保できませんでした。
そして、ここで当初想定していたことが成立し得なかったことに加え、仕事や大学院生活と、あたラボ5期の活動を並行することができず、8月半ば以降はとんど参加をすることができなくなりました。
5期のみなさん、クラブ参加された皆さん、本当にすみません。
ですが、最終報告だけは使用と思いまして、本報告では方針を切り替えまして、初期アンケート結果に絞り…
結果の整理
参加者の特徴に関する考察
調査実施上の課題の明確化
に重点を置いてまとめることとします。
結果|基本的情報
参加者の属性

まず、参加している方々ですが、フリーランスが多く、12名、次に会社員が5名となりました。
あたラボならではの結果かもしれません。
コミュニティ参加状況
次に、あたラボのようなコミュニティ参加状況ですが、半分以上の方が、あたラボ以外のコミュニティにも属していることがわかりました。

さらに、過去のコミュニティ参加状況では、3つが最も多く、10名に上りました。
5期ということもあり、かなり慣れた方が参加しているものと思われます。

相談相手
次に、相談できる相手についてです(複数回答あり)。
これは、ソーシャル・サポートといわれるもので、私が着目していた要素です。
こういった相談相手が多くいることが良いとされています。
まず、「相談できる相手はいないと感じる」はゼロで、さすが?コミュニティに参加されるだけあるなと思いました!
一方で、「専門家」はまだまだ少なめ。
ここは、キャリアコンサルタント頑張るところだなと改めて感じました。
一番多いのは友人/知人となりました。
配偶者やパートナーに相談している人も多いようです。

さて、次に、測定した心理学的尺度をベースにしたものを記載していきます。
結果|統制の所在(Locus of Control:LoC)
結論から
まずは、統制の所在(Locus of Control:LoC)についてです。
結論から言いますと、25名のデータを分析したところ、このような感じになりました。

何のことかいな?かと思いますので、補足説明します。
LoC(Locus of Control/統制の所在)とは?
LoC(Locus of Control/統制の所在)とは、「自分の人生や出来事は、何によって決まると感じているか」を表す心理学の概念です。
大きく分けて、次の2つがあります。
内的統制(図中、内的)
物事の結果は「自分の行動や努力」によって決まると考える傾向
例:「うまくいったのは自分が工夫したから」「次はもっと改善できる」
外的統制(図中、外的)
物事の結果は「運・環境・他人」によって左右されると感じる傾向
例:「たまたま運が悪かった」「環境が違えば結果も違ったはず」
どちらが良い・悪いというものではありませんが、行動の起こしやすさや、困難への向き合い方に影響するとされています。
今回の図は、25名のLoC得点を
内的LoC
外的LoC
に分けて示したものです(箱ひげ図といいます)。
全体的な傾向
内的LoCの得点は、外的LoCよりも高い傾向が見られます
内的LoCは、中央値・平均値ともに比較的高い水準にあります
外的LoCは、ばらつきがやや大きく、低めの値も一定数見られます
このことから、今回の参加者全体としては、「自分の行動によって状況を変えられる」と感じている人が比較的多い集団であることがうかがえます。
この結果は、次のように解釈できます。
今回のあたラボ5期参加者は、
「誰かに何かをしてもらうのを待つ」というよりも、
「自分なりに工夫すれば、状況をよくできるかもしれない」
と考える人が多い傾向にあります。
つまり、
学びや行動に対して主体性を持ちやすい
自分の選択や関わり方を大切にする
参加そのものが「自発的な行動」である
といった特徴と合致する結果だと考えられます。
考察
ここで重要なのは、内的傾向=必ず行動できる、ではないという点です。
内的傾向の人ほど、
・「ちゃんとやりたい」という思いが強い
・失敗や中途半端な関わりを避けたい
・場の空気や他者との関係性を慎重に見る
といった傾向も見られることがあります。
そのため、
・最初の一歩を踏み出すきっかけ
・安心して試せる雰囲気
・小さな成功体験を積める設計
などがないと、「自分で何とかしようと思うがゆえに、逆に動き出せない」
という状態が生じる可能性があります。
結果|自己効力感(Self-Efficacy:SE)
結論から
自己効力感(Self-Efficacy:SE)について、今回の測定では、こうなりました。
5段階中3.3くらいですね。

自己効力感(Self-efficacy:SE)とは?
自己効力感(Self-efficacy)とは、端的に言えば「自分はその行動をうまくやれると思えているか」という感覚のことです。
心理学者アルバート・バンデューラによって提唱された概念で、端的に言えば能力そのものではなく、主観的な「できそう感」を指します。
たとえば、
「初めてだけど、やってみれば何とかなる気がする」
「失敗しても、次は改善できそうだ」
と感じられている状態は、自己効力感が高い状態です。
逆に、
「自分には無理そうだ」
「どうせやっても変わらない」
と感じている場合は、自己効力感が低い状態だと考えられます。
自己効力感は、実際に行動を起こすかどうか、続けられるかどうか
に大きく影響するとされています。
前述の、LoCと自己効力感の組み合わせが行動に重要であるとの仮説を持っていました。
今回の測定結果から言えること
これは、学術的にはほとんど何も言えないというのが結論です。
なぜなら、単一データであり、群間比較(サポートのあり/なし)や、時系列の変化(初期値、中間地点、終了地点)の変化を言っていないからです。
ただ、自己効力感が極端に低い集団ではないということは分かったかなと思います。
同時に、個別に見ると当然ばらつきがあることもわかりました。
結果|ウェルビーイング
結論から
最後に、ウェルビーイングについてです。

ウェルビーイングとは
ウェルビーイング(Well-being)とは、「人がよく生きている状態」「人生の質が保たれている状態」を表す概念です。
今回は、心理学者マーティン・セリグマンが提唱したPERMAモデルに基づいて測定しています。
PERMAは、以下の5つの要素の頭文字です。
P(Positive Emotion):前向きな感情
E(Engagement):没頭・夢中になれている感覚
R(Relationships):人とのつながり
M(Meaning):意味・価値の実感
A(Accomplishment):達成感
これらは、「楽しいかどうか」だけではなく、その人の生活や活動が、どれだけ充実しているかを多面的に捉える指標です。
今回の測定結果から言えること
こちらもなかなか難しいところなのですが、特定の要素だけが極端に低い、あるいは高いという偏りは見られませんでした。
よって、「著しくウェルビーイングが低い集団ではないが、要素ごとに感じ方には幅がある」ということが言えます。
参考
参考として、まったく同一の尺度(PERMA)を用いた既存研究(979例)の平均値と比較すると、今回のあたラボ参加者の平均値(25例)は、いずれの要素においても数値上はやや高い傾向を示していました。

ただし、両者はサンプルサイズや調査対象、調査条件が異なっており、統計的検定も行っていないため、差の有無や大きさについて結論づけることはできません。
あくまで、あたラボのウェルビーイング水準を把握するための参考情報として位置づけさせていただきます。
結果のまとめ
本研究では、あたラボ5期の参加者を対象として、統制の所在(Locus of Control:LoC)、自己効力感(Self-Efficacy:SE)、ウェルビーイングの3つの観点から、参加者の状態像を把握することを試みました。
まずLoCの結果から、参加者全体としては、外的要因よりも自らの行動や選択を重視する内的統制志向が比較的高い集団であることが示されました。
これは、オンライン・コミュニティへの参加自体が、自発的な意思決定に基づく行動であることと整合的であり、参加者が一定の主体性をもって場に関わろうとしている可能性を示唆しています。
一方、SEについては、単一時点での測定であるため変化や効果を論じることはできないものの、極端に低い水準ではなく、一定のばらつきを伴って分布してました。
この結果から、参加者の多くは「全くできないと感じている」わけではない一方で、行動に移す際には迷いや不安が生じやすい状態にある可能性がうかがえます。
さらに、ウェルビーイング(PERMA)の結果では、5要素いずれにおいても平均的には中程度からやや高い水準が確認され、参加者が著しく不調な状態にあるわけではないことが示されました。
ただし、こちらも単一時点の記述的データであるため、コミュニティ参加やサポートによる影響を直接示すものではありません。
本データは、参加者の基礎的な状態を把握するための補助的指標としての位置づけに留められます。
これら3指標を総合すると、本研究の参加者は、
主体性や意味意識を一定程度もっている
自己効力感やウェルビーイングが著しく欠如しているわけではない
しかし、行動の有無や積極性には差が生じている(私も含めなかなか参加できませんでした…)
という状態像にあると考えられます。
なお、本研究では当初、群間比較や時系列比較を通じて変化を検証することを想定していたが、十分なデータ数を確保できなかったため、よい結論を導くことはできませんでした。
この点は本研究の明確な限界です。
感想
これと同時に、オンライン・コミュニティにおいて、一参加者の立場から調査を行うことの難しさなど、調査協力を得る際の構造的課題を可視化する結果も得られました。
実は私は当初、「100例くらい余裕で集まるんじゃ…」と思ってしまっていたんです。💦
それがなかなかうまくいかず、初期値でも25例となってしまいました。
もっとアンケートをシンプルにすればよかったとか、積極的に活動に参加して周知すればよかったとか、様々な思いはありますが、結果的に大変いい勉強になりました。
余談(当初の仮説)
本研究では、オンライン・コミュニティにおける「やりたいのに動けない」という状態を理解するため、以下のような仮説的枠組みを当初設定していました。
仮説の前提となる考え方
まず、オンライン・コミュニティへの参加は、多くの場合、自発的な選択によって行われます。そのため、参加者の中には、「自分の行動が状況を左右する」と捉える内的統制傾向の人が多いと考えました。
一方で、内的LoCが高いことと、実際に行動できることは必ずしも一致しません。
内的LoCが高い人ほど、
自分で何とかしようとする
失敗や中途半端な行動を避けようとする
十分に準備が整ってから動こうとする
といった傾向を持つ場合があり、その結果として、行動に慎重になってしまう可能性があると考えました。
そこに、自己効力感との関連性があると考えました。
当初の仮説
以上を踏まえ、本研究では当初、次の仮説を想定していました。
仮説1
内的LoCが高く、かつ自己効力感が低い人(=図中の紫色実線)に対しては、自己効力感を高めるサポートが特に有効に働き、行動の一歩を踏み出しやすくなる。
この仮説では、「やりたい気持ちがない人」ではなく、「主体性はあって気持ちはあるが、できそうだと思いきれない人」に焦点を当てています。
仮説2
活動を進めていくことで、自己効力感が高まり、行動をするので、ウェルビーイングも高まっていく。
そして、そうした人にサポートをしていくと、自己効力感が高まって行動に進めるので、結果的にウェルビーイングも高まっていく…。というイメージをしていました。
仮説の全体像

I:内的LoC(Internalの略)E:外的LoC(Externalの略)
+:自己効力感が高いー:自己効力感が低い
自己効力感=やればできる感覚を上げるための方法として、
・成功体験(自分が成功体験を積むこと)
・代理体験(他の人の成功を目撃し自分事と思うこと(
・言語的説得(★すなわち、サポート)
・情動的覚醒(身体や精神の状態が良いこと)
があることがわかっており、この研究では言語的説得、すなわちサポートに着目をしていました。
ただし、再三述べました通り、中間地点でのアンケートが回収できなかったことから、ここはとん挫してしまいました。
次の課題にしたいと思います。
全体のまとめ
オンライン・コミュニティ参加者は主体性や幸福度を一定程度有している一方で、自己効力感の揺らぎから行動に慎重になることが予想されます。
行動の差は個人要因よりも支援や場の設計にもよる可能性を今後改めて検証したいです。
謝辞
今回、この場をご用意くださったあたラボ5期の皆さま、スタッフの皆さま、そして、私のアンケートにお答えくださった25名の皆様に感謝申し上げます。
また、サポート部にご参加いただいた皆様には特に感謝したいです。
至らぬ点が多々ございましたが、皆様とお話しできたのは貴重な経験となりました。
今後もこの繋がりを大事にしていけましたら幸いです!
いいなと思ったら応援しよう!
ありがとうございます😊