アメリカで「高タンパク食」がブームになっている理由──薬剤師がメリットと注意点を解説

最近、スーパーやコンビニで「高タンパク」と書かれた商品をよく見かけるようになりました。

高タンパクヨーグルト、
プロテインバー、
プロテイン飲料。

筋トレをしている人だけでなく、
ダイエット中の人や健康を意識する人にも、
タンパク質は身近な存在になっています。

この流れは日本だけではありません。

現在アメリカでは、
「より多くのタンパク質を摂ること」
が大きな健康トレンドのひとつになっています。

では、なぜ今これほど高タンパク食が注目されているのでしょうか。

今回は薬剤師の視点から、
・アメリカで高タンパク食が流行している理由
・タンパク質を摂るメリット
・摂りすぎによる注意点
・高タンパク食品を選ぶときのポイント

について、わかりやすく解説します。




アメリカで高タンパク食が注目されている背景


アメリカで高タンパク食が広がっている理由のひとつに、肥満治療薬の普及があります。

近年、アメリカではGLP-1受容体作動薬
と呼ばれる薬が、

糖尿病治療だけでなく、
肥満治療にも広く使われるようになっています。

食欲を抑えやすくし、
体重減少をサポートする薬として
大きな注目を集めています。

一方で、
ダイエットによって体重が減るときには、
脂肪だけでなく筋肉量も減る可能性があります。


そこで注目されているのが、
「できるだけ筋肉を維持しながら体重を減らす」
という考え方です。

筋肉量の維持には、
筋力トレーニングと十分なタンパク質摂取が重要です。


そのためアメリカでは、
肥満治療やダイエットの広がりとともに、
高タンパク食品への関心も高まっています。

これまでの高タンパク食は、
「筋トレをしている人のための食事」
という印象が強いものでした。

しかし現在では、
「健康的に痩せたい人」
「筋肉を落としたくない人」
「年齢による筋力低下を防ぎたい人」
にも注目されるようになっています。


タンパク質は何のために必要なのか


タンパク質は、
私たちの体をつくる重要な栄養素です。

筋肉だけでなく、
・皮膚
・髪の毛
・爪
・血液
・内臓
・ホルモン
・酵素
・免疫に関わる物質
など、体のさまざまな部分に使われています。

そのため、
タンパク質は筋トレをしている人だけに必要な栄養素ではありません。

子どもから高齢者まで、すべての人に必要です。

ただし、
タンパク質は一度に大量に摂ればよいというものでもありません。
毎日の食事の中で、無理なく継続して摂ることが重要です。


高タンパク食のメリット① 筋肉量を維持しやすい


タンパク質の代表的な役割は、
筋肉の材料になることです。

ダイエット中に食事量を大きく減らすと、
脂肪だけでなく筋肉も減ってしまうことがあります。

筋肉量が減ると、
基礎代謝の低下や体力の低下につながる
可能性があります。

また、年齢を重ねると、
特別な病気がなくても筋肉量は少しずつ減っていきます。

特に高齢者では、筋肉量や筋力が低下することで、
・転倒しやすくなる
・歩く速度が遅くなる
・外出が減る
・介護が必要になるリスクが高まる
といった問題につながることがあります。

そのため、適切なタンパク質摂取と運動を組み合わせることは、健康寿命を考えるうえでも重要です。


高タンパク食のメリット② 満腹感が続きやすい


タンパク質は、糖質や脂質と比べて
満腹感を得やすいとされています。

例えば、朝食を菓子パンだけで済ませた場合、 比較的早い時間に空腹を感じる人もいます。

一方で、卵、ヨーグルト、納豆、豆腐、魚などを取り入れると、満腹感が続きやすくなる場合があります。

満腹感が続けば、
・間食を減らしやすい
・食べすぎを防ぎやすい
・ダイエットを継続しやすい

といったメリットが期待できます。

ただし、
高タンパク食品を食べれば必ず痩せるわけではありません。
総摂取カロリーが消費カロリーを大きく上回っていれば、体重は増える可能性があります。
高タンパクであることと、低カロリーであることは同じではありません。


高タンパク食のメリット③ 食事によるエネルギー消費が比較的大きい


食べ物を消化・吸収するときにも、
体はエネルギーを使います。

これを「食事誘発性熱産生」と呼びます。

タンパク質は、糖質や脂質と比べて、
消化や吸収の過程で使われるエネルギーの割合が比較的大きいとされています。

そのため、
同じカロリーを摂った場合でも、
タンパク質は体内で処理される際に、
より多くのエネルギーを必要とします。


ただし、この効果だけで大きく痩せるわけではありません。
あくまで、体重管理を助ける要素のひとつとして考える必要があります。


「高タンパクなら健康」は間違い


高タンパク食が注目される一方で、注意したいことがあります。

それは、
「高タンパクと書かれていれば健康的」
とは限らないことです。


高タンパクヨーグルト、高タンパクチョコ、高タンパクスナックなど、さまざまな商品が販売されています。

しかし、タンパク質の量だけを見て選ぶと、
・脂質が多い
・糖質が多い
・食塩が多い
・カロリーが高い

という場合があります。

例えば、
高タンパクのプロテインバーでも、
商品によってはチョコレート菓子に近いカロリーや脂質を含むことがあります。

高タンパクという言葉だけで判断するのではなく、栄養成分表示全体を見ることが大切です。

確認したい項目は、
・エネルギー
・タンパク質
・脂質
・炭水化物
・食塩相当量
です。

ダイエット目的で選ぶなら、タンパク質量だけでなく、総カロリーや脂質にも注目する必要があります。


プロテインだけ飲んでも筋肉は増えない


高タンパク食について、
特に誤解されやすいのが、
「プロテインを飲めば筋肉が増える」
という考え方です。


プロテインは、
タンパク質を手軽に摂取できる食品です。

しかし、
飲むだけで筋肉が大きくなるわけではありません。


筋肉を維持・増加させるためには、
筋肉に適切な刺激を与える必要があります。

つまり重要なのは、
「運動+タンパク質」
の組み合わせです。

プロテインを飲んでいても、
運動をせず、摂取カロリーが多すぎれば、
体脂肪が増える可能性もあります。
プロテインは魔法の飲み物ではありません。


肉や魚、卵、乳製品、大豆製品などの
食事から十分にタンパク質を摂れている場合、
必ずしもプロテインを追加する必要はありません。

忙しくて食事を用意できないときや、
食事だけでは不足するときに、
補助として利用するものです。


タンパク質はどれくらい摂ればいいのか


必要なタンパク質量は、
年齢、体重、運動量、健康状態によって
異なります。

一般的には、
成人が健康を維持するために必要な量として、
体重1kgあたり約0.8〜1.0g程度
がひとつの目安になります。

例えば体重60kgの人なら、
1日48〜60g程度です。


運動をしている人や筋肉量を増やしたい人、ダイエット中の人では、それより多く必要になる場合があります。

ただし、いきなり大量のタンパク質を摂る必要はありません。

まずは毎食、
・肉
・魚
・卵
・豆腐
・納豆
・牛乳
・ヨーグルト

などの
タンパク源を1品取り入れることから始める
と続けやすいです。


一度にまとめて摂るより、毎食に分ける


タンパク質は、
夜にまとめて大量に摂るよりも、
朝・昼・夕に分けて摂る方が実践しやすいです。

日本人の食生活では、
夕食では肉や魚をしっかり食べていても、
朝食のタンパク質が不足しやすい傾向があります。
例えば朝食が、
・トーストだけ
・おにぎりだけ
・コーヒーだけ
になっている人は、
タンパク質が不足しやすくなります。

朝食に、
・ゆで卵
・ヨーグルト
・牛乳
・チーズ
・納豆
・豆乳

などを追加するだけでも、
タンパク質を補いやすくなります。
高額な健康食品を購入する前に、普段の食事を見直すことが大切です。


腎臓への影響は大丈夫なのか


高タンパク食についてよく聞かれるのが、
「タンパク質を多く摂ると腎臓に悪いのでは?」
という質問です。

腎機能が正常な健康な人では、
適度にタンパク質を増やしたからといって、
すぐに腎臓病になるとは限りません。


一方で、
すでに慢性腎臓病がある人や、
医師からタンパク質制限を指示されている人は注意が必要です。

腎機能が低下している人では、
病気の進行度や治療方針によって、
適切なタンパク質量が異なります。

自己判断で高タンパク食を始めたり、
プロテインを大量に摂取したりすることは避けた方がよいでしょう。

また、
糖尿病、高血圧、腎臓病の家族歴がある人や、
健康診断で腎機能を指摘されている人は、
医師や管理栄養士に相談することが大切です。


高タンパク食で不足しやすいものにも注意


タンパク質を意識するあまり、
肉やプロテインばかりになってしまう人もいます。

しかし、健康のために必要なのはタンパク質だけではありません。

野菜、果物、海藻、きのこ、穀類などから、
・食物繊維
・ビタミン
・ミネラル
・抗酸化成分

を摂ることも重要です。

例えば、
高タンパク・低糖質を意識しすぎて、
野菜や穀類をほとんど食べなくなると、
便秘や栄養バランスの偏りにつながる
ことがあります。

高タンパク食を実践するときほど、
「何を増やすか」だけでなく、

「何が減ってしまっているか」
にも目を向ける必要があります。


薬剤師として感じる「高タンパクブーム」の注意点


薬剤師として感じるのは、
「高タンパク」という言葉がひとり歩きしていることです。

高タンパクと書かれているだけで、
「体に良さそう」
「太りにくそう」
「食べれば筋肉がつきそう」

と感じる人は少なくありません。

しかし、健康食品やプロテインは、
普段の食事を補助するためのものです。

摂れば摂るほど健康になるわけではありません。

また、タンパク質を増やしていても、
・運動不足
・睡眠不足
・野菜不足
・食べすぎ
・飲酒量が多い

といった生活習慣が続いていれば、健康的とは言えません。

タンパク質は大切です。
しかし、健康を決めるのは、
ひとつの栄養素ではなく生活全体です。


まとめ


アメリカで高タンパク食が注目されている背景には、肥満治療薬やダイエットの普及があります。

体重を減らすだけでなく、
筋肉をできるだけ維持しながら痩せたいという意識が高まり、高タンパク食品への需要が増えています。

タンパク質には、
・筋肉量の維持を助ける
・満腹感が続きやすい
・体重管理をサポートする
・高齢者の筋力低下対策に役立つ
といったメリットがあります。


一方で、
「高タンパクなら、いくら食べてもよい」
「プロテインを飲めば筋肉が増える」
「高タンパク食品なら必ず健康的」
というわけではありません。

大切なのは、適切な量のタンパク質を、
毎日の食事に分けて取り入れること。

そして、運動、睡眠、野菜や食物繊維を含むバランスのよい食生活と組み合わせることです。

流行している言葉だけに飛びつくのではなく、
栄養成分表示や自分の健康状態を確認しながら、自分に合った形で取り入れていきましょう。

※この記事は一般的な健康情報を目的としています。腎臓病や糖尿病などで治療中の方、食事制限を受けている方は、主治医や管理栄養士にご相談ください。


あわせて読みたい①
💪▶︎
【薬剤師が解説】プロテインの選び方。初心者こそ本当に見るべき5つのポイント
実はプロテインは、タンパク質の量・糖質・脂質・ビタミン配合などを確認するだけで、自分に合った商品を選びやすくなります。
薬剤師の視点で、初心者でも失敗しないプロテイン選びを分かりやすく解説しています。

あわせて読みたい②
💪▶︎
【筋トレしたいけど時間がない人へ】ジムが続かなかった僕が、休日を有効活用できるようになった話
高タンパクな食事を摂っても、筋肉への刺激がなければ十分に活かせません。
「仕事が忙しくてジムに行けない」「運動が続かない」という方へ、自宅で無理なく続けられる筋トレ習慣を、実体験を交えて紹介しています。




いいなと思ったら応援しよう!