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創作大賞感想 濃い水墨と、緋色の花

導かれるような読書体験

櫻井とこさんの「濃い水墨と、緋色の花」を拝読させていただきました。

読み始めて最初に感じたのは、どこか昔話や伝承を聞かされているような不思議な感覚でした。

歴史の一場面から幕を開けながらも、単なる時代小説ともホラーとも言い切れない雰囲気があり、気がつくと自然に物語の中へ引き込まれていました。

特に印象に残ったのは、作品全体に漂う「長い時間の流れ」です。
人ひとりの人生では到底抱えきれないほどの思いが、世代を越えて受け継がれていくような感覚がありました。

もちろん詳しい内容には触れませんが、登場人物たちが過去から続く何かと向き合っていく姿を見ていると、人の想いは本当に消えてしまうものなのだろうかと考えさせられます。

また、恐ろしさを描いている場面であっても、ただ怖がらせることだけを目的にしているようには感じませんでした。むしろ、その奥にある悲しさや切なさのほうが静かに伝わってくるように思えます。

そのため、読み進めるうちに「次はどうなるのだろう」という興味と同時に、「この物語はどこへ向かうのだろう」という気持ちも強くなっていきました。

サブタイトルが語るもうひとつの物語

個人的に興味深いと感じたのは、各章のサブタイトルの存在です。

普通であれば内容を簡潔に示すための見出しとして受け取るところですが、この作品ではサブタイトルそのものが小さな物語のように感じられました。読んでいる最中は何気なく通り過ぎた言葉でも、章を読み終えたあとに振り返ると印象が変わることがあります。

それは伏線というよりも、読者の感情をそっと誘導する道標のような役割を果たしているのかもしれません。先を予感させるものもあれば、読み終えて初めて意味が心に落ちてくるものもありました。

私は読書中、ときどきサブタイトルだけを並べて眺めてみました。
すると、それぞれが独立した言葉でありながら、どこか一本の流れで繋がっているようにも見えます。

もしかすると作者様は本文だけでなく、サブタイトルの配置や響きにもかなり心を配られているのではないかと想像しました。

読者は本文を追いながら物語を楽しみますが、その少し外側で、サブタイトルが静かに語りかけているようにも感じられます。

この作品を読んでいて、そうした「見出しの読み方」まで楽しめたことは、私にとって少し新鮮な体験でした。

「守る」ということについて考えた

読み終えたあと、私の中に残ったのは恐怖よりも「守る」という言葉でした。

登場人物たちはそれぞれ違う立場にありながら、自分なりに大切なものを守ろうとしているように見えます。家族だったり、約束だったり、信念だったり。その形は人によって異なりますし、必ずしも正解があるわけではないのだと思います。

だからこそ、誰かの選択を簡単に良い悪いで判断できないもどかしさがありました。読んでいる間、私は何度も「自分だったらどうするだろう」と考えましたが、はっきりした答えは見つかりませんでした。

また、この作品には家族の会話や日常の場面が数多く描かれています。
そうした何気ないやり取りがあるからこそ、登場人物たちの願いや葛藤がより身近に感じられたのだと思います。特別な力や不思議な出来事が描かれていても、根底に流れているのはとても人間的な感情なのかもしれません。

読み終えた今も、水墨の黒と緋色の花という印象的な題名が心に残っています。その色彩が象徴するものは人によって受け取り方が異なるでしょうし、私自身もまだ整理しきれていません。ただ、物語を閉じたあとも静かに余韻が続いていることだけは確かです。

恐怖や謎を楽しみながらも、その奥にある人の想いや家族のつながりについて考えさせられる作品だったように思います。そして何より、続きを読み進めたくなる力を持った物語だったと感じました。


<note記事のご紹介>

結構ギリギリの応募のようでしたね……😅
「チャレがや企画」などで拝見していたので、てっきり序盤応募の作品だとばかり……。

櫻井さんには、拙作「香りの先で、もう一度」にも感想を寄せていただいておりました(その節はありがとうございました!)が、様々な記事を拝見する限り、この上なく趣味が合いそうな気がしておりまして……。

いつか、しっかりと語らいたい創作仲間でもあります!
まずはスペースでも、いかがですかね?🤣

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