創作大賞感想 バックヤード!!
段ボールは、たぶん登場人物である
緒川ヒカリさんの「バックヤード!!」を拝読させていただきました。
この作品を読んでいて、妙に気になったものがあります。段ボール(パッキン)です。
普通、物語に出てくる段ボールは背景です。
荷物を入れる箱であり、主人公が格闘する障害物であり、それ以上でもそれ以下でもありません。
でも『バックヤード!!』に登場する段ボールは、どうも違う。
積み重なり、崩れ、運ばれ、時には人の感情を受け止める。読み進めるうちに、「もしかしてこの作品のもう一人の主人公なのでは?」と真面目に考えてしまいました。
華やかなアパレル業界と聞くと、多くの人は照明の当たる売り場や、洗練された店員さんを思い浮かべるはずです。けれど、この物語が丹念に描いているのは、その光を成立させるための薄暗い場所です。
服は勝手に棚に並ばないし、お店は勝手に回らない。その当たり前を、段ボールの重さやビニールの擦れる音を通して何度も思い出させてくれる作品でした。
読み終えたあと、ショッピングモールのバックヤードの扉を見る目が、少しだけ変わった気がします。
「好き」で働く人たちの温度
この作品には、誰かを打ち負かすような熱さではなく、「今日も出勤しよう」と思わせる種類の熱があります。
登場人物たちは皆、それぞれの立場で働いています。
店長、副店長、社員、アルバイト。そして主人公。誰か一人が突出しているわけではなく、それぞれが少しずつ足りない部分を補い合っている。その距離感がとても心地よいのです。
特に印象的だったのは、「好き」という感情の扱い方でした。
好きだから頑張れる。
でも、好きだけではどうにもならない日もある。それでも明日にはまた出勤して、目の前の仕事を片づけていく。その積み重ねが、人を少しずつプロにしていく。
華やかな成功譚ではなく、働くことの手触りを描いているからこそ、登場人物たちの言葉が妙に胸に残ります。
読んでいる間、何度か「こういう人、私の職場にもいるな」と思いました。そして少し経ってから、「いや、ひょっとすると自分も誰かの物語の端役なのかもしれない」と考えてしまったのです。
そういう意味で、本作は仕事小説であると同時に、「働く人間観察記」でもあるのだと思います。
閉店後の明かりについて
個人的に、この作品を読むのに一番ふさわしい時間は、夜だと思いました。
仕事や学校を終えて、シャワーを浴びて、少しだけ肩の力が抜けた時間帯。そんなときに読むと、作中の空気が不思議なくらい馴染みます。
大きな出来事が起きなくても、人はちゃんと生きている。誰かに褒められなくても、誰かの役に立っている。そんな当たり前だけれど、忙しいと忘れてしまうことを、この作品は静かに思い出させてくれます。
バックヤードには窓が少ない。でも、この物語には確かに光があります。
それはスポットライトではなく、閉店後の売り場にぽつんと残る非常灯みたいな光です。派手ではないけれど、「明日もなんとかやってみるか」と思わせてくれる光。
『バックヤード!!』は、誰かの人生を劇的に変える物語ではないのかもしれません。でも、疲れた日の帰り道にそっと隣を歩いてくれるような作品です。
そして私は今、服を買いに行ったら、きっとバックヤードの向こう側に思いを馳せてしまうのでしょう。
……段ボール(パッキン)の皆さんも、今日一日お疲れさまでした。
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「あとがき」も必見レベルでございますよ!
(読んだ方だけしかわからない、『お楽しみ』がありますよ!)
それから、ぜひ触れておきたいのが「サムネ画像」。
私はこれをnoteで投稿するときの「ご褒美」みたいに受け止めているのですが、緒川さんの「作り込み」も相当のレベル。
テキストにまで、一分の隙もない!!
「ご褒美堪能してるなぁ!」と思いました。
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