やる気のなさ&においと闘った卒業試験の記録
これは日本語の試験ではない。やる気のなさと「におい」と自分との一時間半に及ぶ闘いだ。
問題児の卒業試験
昨日は朝から授業の上、正午に四年生の卒業試験で疲労困憊。
彼は再履修で授業受けてたのに後半授業にこなくなり、課題も提出不足で本来試験資格はない。
でも学校命令で試験はやることに。
そもそも授業にこなかったのは彼の指導担任が私の授業に行かなくていいと言ったからということだった。
そのことで私は怒っていた。
でも別の学生が言うには、そもそもインターンに行く前に私の授業を欠席するための書類を提出すればよかったとのこと。それをやらなかった本人が悪いと。
しかも、それを彼は指導担任のせいにしてるだけだと。
真相はわからない。いずれにしても、私の連絡に返事もよこさず、授業欠席の理由も説明なかったのは確か。
しかも私の今回の試験に通らなければ卒業ができなくなるらしい。
なのに本人必死さがない。
基準に満たないなら落とせばいい。
或いは他の先生みたく、適当に合格させておけばいい。
でも私は中途半端だ。
この学生はみんなが当り前にできることができないだけかもしれない……。
でも、だからって簡単に合格させたくない。
そこで考えた苦肉の策。
彼がこれまで提出してこなかった課題をまとめて試験課題にした。
本来はペアでドラマやアニメの短い場面を一つだけ再現する試験だが、意見や感想、創意工夫も含めた彼だけの特別試験だ。
そこで奮起してがんばるならば、本来平常点で得られたはずの点数に少し加算しようと思った。
ところが、この学生はそもそも奮起なんてする気もなかった。
やる前からできないと言う
月曜は朝一から正午まで午前はびっしり授業だ。
なので、授業後、12時に教室にくるように彼には言った。
ところが、なぜか彼は11時に来る。
ちょうど休み時間だったので、何しに来たか聞く。
すると、携帯で台詞を見ながら試験を受けていいかと言ってきた。
本来、暗記する試験だが、大学が突然試験やるように言ってきたので、彼には準備時間が足りない。なので黒板PCの大画面で見れるようにしようと思った。
でも、まだ試験まで1時間あるのに、最初から暗記しようともしないその態度にムカつく。
「あと1時間あるし、できる限り暗記しなよ。そのほうが点数は上げられる」
しかし彼は言う。「できません」
これで私怒る。
「ゴルァ!やる前からできないとか言うな!最後の一分までねばってみせろ!」
やる前からあきらめるのと、やるだけやってあきらめるのは全然ちがう!
コロナ前は、廊下の隅や外で教科書を持ちながら念仏唱えるようにぶつぶつ言ってる学生をよく見たものだ。彼らは暗記のために声を出す。
そういや今そんな学生全然見ない。そこまで必死にやる学生がまずいない。
必死にやらないどころか、あきらめがめちゃくちゃはやい。
この学生にいたっては、自分の卒業がかかってるのに、簡単に「できない」と言う。
それは試験が始まってもそうだった。
試験時間一時間半
試験が始まり、本人が何の準備もしていないことは明らかだった。
彼の将来の夢は声優。それならなおさらアニメやドラマの再現をするこの授業しっかりやれよと思う。
しかも本当にすぐ「できません」「わかりません」と言う。
「そうやっていつも言ってたら、それを一番近くで聞いてる脳が『できない』って判断して、本当にできなくなっちゃうよ!」
もうここからは日本語の試験というより、卒業後の仕事も踏まえた指導になってくる。
そして、仕事で一番大事なのは信頼だということ、小さな嘘をつくことも、人のせいにすることも、何より約束を守らないことも、信頼を失うことにつながるということなどを話したと思う。
あと、自分が今できる限界のところまでがんばれってことも。たとえ目標に到達できなくても、近づいた分だけの力はつくと。
今彼ができるレベルの最大限までやることを私は求めた。
心の中ではずっと「がんばれ」と言っていた。
先生が「できる」と信じるのと「ダメだ」と見限るのとでは、結果がちがう。場の空気というか、学生に影響が出てしまうのだ。
合格レベルでもないのに合格にはさせたくない。
それは自分の信念に反する。
だからこれは私のためでもある。
結果試験一時間半。
私の会話試験は一人一人と会話するので、5時間から8時間は当たり前だが、一人に一時間半もつかったのは初めてだ。

もはや何の闘いかもわからないが、私はこの一時間半「におい」とも闘っていた。
においに始まりにおいに終わる
彼が臭いというのは有名な話で、ルームメイトは部屋から逃げ出し、授業中も彼の席に近い学生が移動する。
私は鼻が悪いのか、そこまで気にせず近づいてたが、一時間半もびっしり向き合ったことはない。だから初めてこれかと気づく。
単に風呂に入ってないせいだろうと私は思った。
それなら十日に一回しか風呂に入らない私の友人(女)も似たようなもの。
しかも銭湯に車で連れていくとき、にんにくラーメン食べた後の友人は、凄まじい異臭を放っていた。
あれに耐えた私が、こんなところで試験を投げ出してたまるか!
そして試験が終わり、外に出て、ライチジュースを飲みながらぼーっとしてると、仲良しのゲイっ子Aが通りかかる。
「よく私に気づいたね」と言うと、Aは「におい」と言った。
え、まさかうつったのか?と思ってびっくりしたが、「香水みたいな匂い」と言われた。
でも私は香水はつけていない。だから謎。でもそのおかげでAに会えた。
においに耐えて、においで終わる。
とりあえず、今回の試験、私は自分が納得のいくところまでやった。
結果として平常点41点試験成績79点の総合60点で彼は合格。
卒業後、彼はどんな生き方をするだろう。
どんな学生でも一度は関わった縁だし、自分のことをあきらめがちでも、私が最後まで投げなかったことは覚えていてほしいと思う。
