公務員にとっての盲点 人件費≒コスト意識
人件費は、コストなんです。
商売などをしていたら、当たり前ですよね。
民間から転職すると、公務員の”一番”の弱点はコスト意識がないという感覚です。
「我々の税金に対して、コスト意識がないとはどういうことか!!?」
ごもっともです。
ですが、ここで勘違いしないで欲しいのは、
「無駄遣いをしよう!」という人がそこにいるというわけではないのです。
例えば、ニュースに出てくる”入札”という制度。
(”入札”がニュースに出てくるのは大体、不正入札という悪いものばかりですが…)
入札ってそもそもなんぞや?
という点をざっくり御伝えすると、
国民(あるいは市民)の皆様から預かった税金で、多くの、かつより良い事業を安価に行うために行う契約方式です。
【例】
ペン100本を買いたい!!
となったときに、
「黒が出ること」
「5月1日までにまとめて納品できること」 などの条件=仕様 に対して
この条件を満たすことのできる業者さんが
A社:100円×100本=10,000円
B社:98円×100本=9,800円
とそれぞれ、金額を書いた紙=入札書を封筒に入れて、封印した状態で役所に渡し、役所は封印されたまま(入札金額は見ないまま)金庫に保管します。
この間に、契約担当者は市場ではどれほどの価格が主流なのか、他の似たような機関ではどれくらいで契約できているのかなど、さまざまな調査を行い、「今回の契約で出せる金額はこれだ!」という予測を立てます=予定価格
開札の日になると、A社さん、B社さんの金額を比較し、安い方(B社)、かつ予定価格より安いかを比較し、問題なければB社と契約…となります。
よくニュースになっているのは、2パターン。
●業者同士で入札する金額を決めておくというもの。(官製談合)
A社とB社で相談して、とある都市のペン100本はA社が契約するから、こっちの都市のペン100本はB社が落としていいよ。と、役所が知らないところで取り決められてしまっているもの。安くするために入札をしているのに、業者同士で価格競争を行ってくれないと意味がありません。
●契約担当者が「予定価格を漏らしてしまう」というもの
一番安い入札書を入れていても、契約担当者がたてる予定価格より安くなければ「契約不調」となり、仕様の見直しなどを以て、再度入札となります。予定価格を漏らすのにも2パターンあり(と個人的には考えており)、1つは業者側からの賄賂などを受け取り、その業者に落札もらおうというもの。こちらは救いなし。もう1つは、緊急を要するなど再度入札することができない場合にポロっと言ってしまう(こちらもダメはダメです)。
本題から外れましたが、このような面倒な手続きまでして、「コストを安く抑えて税金を無駄にしないように…」と行っており、無駄使いをしようと思ってはいないのは当然です。
だけど、例えば、本当に上記のような例で、「ペン100本」を買うのに入札をするとなると、企業側はどうでしょうか。
社内の決裁を取り入札書を作成、また入札にもさまざまな資格が必要なのでそういった入札にかかる添付書類を準備。添付資料にかかる疑義照会などへの対応。そして、開札に立ち会って、契約相手の決定を見守る…そんなコストを払うと10,000円の売上の中で得られる利益なんて当然ないことは分かります。となると、入札なんてややこしい手続きには参加しません。
(極端な例となりましたが、実際に10,000円で入札まではないです!安心してください!)
手続きを行う、職員側に利益思考は当然のようにありません。
これらの処理をするために、会議があり、仕様書をとりまとめて、入札公募をかけ、予定価格を作る。そのプロセスに人件費がかかっていることは、一切度外視されます。
つまり、『例年であれば10,000円かかっていたペンの調達を
9,800円に節約できた!』という1円のみが、評価され、その手続きに
人件費がいくらかかったか…などは分析すらされません。
「税金を無駄に使ってはならない」
が先行しすぎており、10000円のペンを6000円で納めてくれる業者はないかという点には注力しますが、その事務処理のプロセスにかかる人件費を意識することはほとんどありません。
中にいてても、一番課題だと感じるのはそれが監査においても同様という点です。
税金の適正な利用を監査する立場の方も、その手続きにかかる人件費については考慮されず、「この1円の端数計算はどういう風に行っているのか」という質問を投げかけてきます。それに対し、該当部署(よくあるのは人件費処理の小数点以下の端数なので、人事など)に確認し、投げ返し、再度質問が来る…など。
気になるというのは、分かります。
ですが、このときに監査で指摘されるものと言えば、
・何故このペン100本は入札にできないのか
・(例えば、「これを入札にかけても入札に参加する業者がいない」と回答すれば)どうして入札企業がないと断定できるのか
・全部署の年間のペン使用量を集計すればもっとスケールメリットがとれるのでは。
などなど。理屈ではそうかもしれませんが、「常識的に考えて意味あります…?」と言いたくなるのをグッとこらえて、対応しなくてはならないのが監査対応です。
そして、その質問を投げる人間・質問を受けて確認する人間・確認されてその取引の詳細を調べる人間…そして、それぞれが上司に報告するなど、その一つの対応にも3~6人(場合によってはそれ以上)の人件費がかかっています。更に、そんなラリーを何度か繰り返します。
監査する側も国の機関ですので、そちらも含めてその人件費は税金で賄われていることはしばしばです。
このラリーを行っている人件費を何かサービス対応に充てていれば、もっと良い市民サービス提供などもできるかもしれません。
ですが、この人件費が無駄だ!という声はどこからも聞こえてきません。
『補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律』など、その管理に関しては当然の適法性が求められるのは間違いございません。
一方で、数百円単位の取引の明確化に多くの人件費がかかっているという
事実もまた、考えなくてはならない課題なのでは…と、監査を受ける側なので強くは言えない立場で小さく考えております。
