お酒と睡眠の関係|「寝酒」は本当に眠りやすくなるのか?
「寝る前に一杯飲むとよく眠れる」とよく言われます。仕事の疲れを癒すために、ベッドに入る前のお酒を習慣にしている方も多いはず。でも、その「寝酒」、実は眠りの質を大きく下げているかもしれません。今回は、お酒と睡眠の意外な関係について、わかりやすくお話しします。

●寝酒の習慣は日本人に多い
厚生労働省の調査によると、日本人の成人男性の約30%、女性の約10%が「眠るためにお酒を飲むことがある」と回答しています。世界的に見ても、日本は寝酒の割合が高い国のひとつです。フランスやドイツでは10%前後、アメリカでは約20%という数字と比べても、日本の数値は際立っています。
なぜ日本でこれほど寝酒が広まったのでしょうか。背景には、長時間労働による寝つきの悪さ、睡眠導入剤への抵抗感、そして「お酒は薬」という古くからの考え方があります。江戸時代の医学書にも「少量の酒は気を巡らせ、眠りを誘う」という記述が残っており、寝る前の晩酌は日本の文化として根付いてきました。
●アルコールは寝つきを早めるが、眠りは浅くする
確かに、お酒を飲むと寝つきは早くなります。アルコールには中枢神経を抑える働きがあり、脳の活動を落ち着かせるからです。実験データでは、ビール中瓶1本(500mL)程度の飲酒で、寝つくまでの時間が平均で約10分短くなることがわかっています。
ところが、ここからが問題です!アルコールが分解される過程で、体内に「アセトアルデヒド」という物質が発生します。これは二日酔いの原因にもなる成分で、交感神経を刺激して心拍数を上げ、脳を覚醒させる方向に働きます。その結果、入眠から3〜4時間後には眠りが浅くなり、夜中に目が覚めやすくなるのです。
さらに、深い眠りである「ノンレム睡眠」(脳と体がしっかり休む眠り)の時間が、お酒なしの場合と比べて約20%短くなることも報告されています。寝つきが良くなった分、後半の眠りの質が大きく落ちてしまうわけです。
●利尿作用とイビキも睡眠を妨げる
アルコールにはもうひとつ、強い利尿作用があります。ビール1Lを飲むと、約1.1Lの水分が尿として排出されることが知られています。つまり、飲んだ量以上に体から水分が失われるのです。これによって夜中にトイレで目が覚める回数が増え、睡眠が分断されてしまいます。
加えて、お酒は喉やまわりの筋肉をゆるめるため、イビキや無呼吸が起こりやすくなります。普段イビキをかかない人でも、飲酒後はイビキをかきやすくなり、酸素の取り込みが悪くなることがあります。これが翌朝の頭痛やだるさにつながるケースも少なくありません。
●上手にお酒と付き合うための工夫
では、お酒を楽しみつつ睡眠の質を守るにはどうすればいいでしょうか。ポイントは飲む量とタイミングです。
まず、寝る前の3時間はお酒を飲まないことが理想です。アルコールが体から抜けるまでには、体重60キロの人でビール中瓶1本につき約3時間かかります。夕食時に楽しんで、就寝までに分解を済ませておくのが理想的です。
量の目安としては、純アルコール換算で1日20g程度が「節度ある飲酒」とされています。これはビール中瓶1本、日本酒1合(180mL)、ワイングラス2杯(200mL)、ウイスキーダブル1杯(60mL)に相当します。この範囲なら、翌日の睡眠への影響を最小限に抑えられます。
また、お酒と同量の水を一緒に飲む「チェイサー」の習慣もおすすめです。脱水を防ぎ、アルコールの吸収もゆるやかにしてくれます。バーで「お水もください」と頼むのは、決して恥ずかしいことではありません。
●お酒は眠りの薬ではなく、楽しみの一杯に
「寝酒で眠る」という習慣は、短期的には効果があるように感じても、長く続けると睡眠の質を確実に下げてしまいます。さらに、毎晩のように寝酒を続けると体が慣れてしまい、同じ量では眠れなくなって飲む量が増えていく「耐性」の問題も出てきます。
お酒は、眠るための道具ではなく、食事や会話を豊かにする楽しみとして味わうのがいちばんです。今夜の一杯は、寝る直前ではなく、夕食の時間にゆっくり楽しんでみてはいかがでしょうか。翌朝の目覚めが、きっと違って感じられるはずです。
