【3分間小説】夜に溶ける美しい歌声の残響|容姿端麗な嘘 ― THE ORAL CIGARETTES
この作品はフィクションです。特定の曲や歌詞にインスピレーションを得て執筆していますが、実在の人物・出来事とは関係ありません。音楽をきっかけに生まれた短い小説としてお楽しみください。
17時。パソコンを閉じて荷物をまとめる。
「お先に失礼します。お疲れ様でした。」
「おつかれー!」
会社を出たら家とは逆方向の電車に乗り、着いた駅のトイレへ直行する。
鏡には38歳の冴えない女が映る。
戦闘服に身を包み、漆黒のアイラインを目尻に強く引く。真っ赤な口紅を塗って金髪のウィッグを被ったら、私の唯一の居場所へ向かう。
ライブハウスに着くと、観客のざわめきとスピーカーの振動が全身を突き上げる。
ギターの低音が胸に刺さり、ドラムが鼓動を揺らす。
スポットライトが目に刺さる瞬間、私は歌う。
歌声が、ステージに広がる。
仮初の私が、自由に羽ばたく瞬間だ。
観客の羨望の眼差し、突き上げられる拳。
ここでは私は、女神だ。
この仮の姿こそが、私の真実だと思っているだろう。今の私を見ている客たちは、この完璧な「嘘」に熱狂している。
歌い終えると同時に、照明が落ちる。
その瞬間、暗闇の中で現実に引き戻された。
虚無に襲われながら、街の夜風に当たる帰り道。
『嘘は美しかった。
でも、もう嫌だ。』
私はライブハウスから姿を消した。
店長も観客も、誰も私の行き先を知らない。
数か月後——
私は冴えない38歳の"本当の姿"で、ギターを抱えて1人ライブハウスに立っている。
金髪でも、派手なメイクでも、赤い口紅でもない。
歌い出すと、エイミーの時とは違う開放感があった。
客席には見慣れた顔もある。
だけど、誰も私がかつてのエイミーだとは思っていないようだ。
ただ、店長だけは眉をひそめた。
耳を澄ますと、確かにあの声が残っている——
残響として、消えずに胸に届く声。
そして、ある一人——
店長と驚いた顔で見つめあっている男がいる。
私はギターをかき鳴らす。
嘘の仮面はもういらない。
この声が残響として、誰かの胸に届くなら——
「…あの声、どこかで聞いた気がするな」
「エイ…ミー…?…まさかな」
Ah 容姿端麗な嘘で 完全に騙して
単純に飲み込んでしまいそうだから
このまま生死なんて構わず
きっとやりたいこと貫いて 私を救いたいの
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チップありがとうございます!
大変はげみになります。