大学不要論 第3回【大谷翔平in草刈マスター養成所!】
大学の復活条件:研究者と教員を同じ生き物だと思ったところから全てがおかしくなった
はじめに
私は大学不要論を唱えている。
すると必ず、
「大学をなくせと言うのか」 と、
絵に描いたような的外れな反論をされる。
違う。
なくしたいのは大学ではない。
大学ごっこである。
大学は本来、学問の最前線であり、
未知への探検隊であり、
知識の生産工場であるはずだ。
ところが現在の大学は、
教育機関であり、
研究機関であり、
就職予備校であり、
資格学校であり、
地域振興センターであり、
子育て支援拠点であり、
防災拠点であり、
国際交流拠点であり、
最近ではメンタルケア施設でもある。
大学が万能であることは素晴らしい。
問題は、万能であるために、結果として
何一つ能力を発揮できなくなることである。
第一章:ウナギ屋にコンサルを入れるな
私はウナギが好きだ。
だからウナギ屋へ行く。
すると店主が言う。
「本日はラーメンもやります」 まあいい。
商売だから。
次に行く。
「本日は焼肉もやります」
大変だなと思う。
さらに行く。
「介護相談も始めました」
店主が自発的に狂ったのではない。
役所から派遣されたコンサルタントが
「これからは介護とラーメンの時代です。
やらないウナギ屋には補助金を削ります」
と脅したのだ。
次の年には
「DXうな丼」の提出を義務付けられ、
その翌年には
「うなぎの多様性(ジェンダーフリー)」
を証明する書類を100枚書かされている。
その頃にはもう、
ウナギの焼き方を知る唯一の職人は、
書類作成の残業で過労死している。
当然、ウナギは冷めきっている。
現在の大学はこれである。
教育しろ。
研究しろ。
論文を書け。
科研費を取れ。
学生相談しろ。
FD研修へ出ろ。
オープンキャンパスをやれ。
地域連携をやれ。
SNSを発信しろ。
高校訪問をやれ。
不祥事を起こすな。
残業するな。
その結果、一番やるべき学問が
「締め切りのない雑務」
として後回しになる。
そして偉い人たちが眉をひそめて言う。
「日本の大学の研究力が落ちた」
落としたのは誰だ。
第二章:大谷翔平に草むしりをさせるな
ここで、日本の高等教育が隠し続けている恐ろしい話をしよう。
教えるのが上手い人と、研究が上手い人は、だいたい別人である。
もちろん両方できる天才もいる。
だが世の中の制度というものは、
大谷翔平が量産できることを前提に作ってはいけない。
大学は長年、全教員に対して
「研究もしてください」
「教育もしてください」
と言い続けてきた。
これは野球で言えば、
四番を打ちながら、
先発完投しろ
と言っているのに近い。
これだけでも頭が痛いのに、現代の大学はさらに
「年に数回、グラウンド整備とチケット販売もやれ」
と命じている。
そして最も絶望的なのは、
球団(大学)が彼を評価する基準が、
ホームランの数でも防御率でもないことだ。
「グラウンド整備の報告書が、期日通りに、
指定のExcelフォーマットで提出されたか」
どれだけ完封勝利を挙げようが、
セルの色やフォントを間違えれば、
彼は「協調性のない無能な教員」
として査定を下げられる。
第三章:なぜ分離しないのか
ではなぜ分離しないのか。
答えは簡単である。
みんな薄々気付いているからだ。
誰が教員向きで、誰が研究者向きなのか、実はよく分からない。
だから全員に両方やらせる。
この思考停止を、大学のパンフレットでは、
「シナジー効果を発揮する、教育・研究の一体化ガバナンス」 と呼ぶ。
日本語では「丸投げ」といい、
居酒屋で言えば「めんどくさいから全部のせ」である。
分からないから全部やらせる。
その結果、誰も何もできなくなる。
第四章:私の大学不要論
ここで誤解を解く。
私は大学を廃止したいのではない。
むしろ復活させたい。
だから専門教育の入口までを、
すべて大学の外へ叩き出す。
統計、論理、文章、情報、基礎科学、基礎社会科学。
ここまでは、普通の高等教育機関(あるいはAI)が担当すればいい。
大学は、専門の核だけを扱う。
しかも、「研究しながら学ぶ」のだ。
研究室へ入る。
論文を読む。
失敗する。
教科書に載っていない問題と格闘する。
分からない。
誰も分からない。
だから研究なのである。
高校の高等専門外学校化こそ核心なのだ。
第五章:教科書の最後のページ
大学の最大の欠陥は、
教員が自分の出版した本を教科書副読本として
学生に買わせ…
そのわずかな印税を
自分の小遣いにすることだ。
本当の学問は、そこからは始まらない。
教科書の最後には、必ずこう書いてある。
「これについては、現在も研究が続いている」
だったら、そこへ行け。
そこが大学だ。
しかし、その未知の領域へ一歩踏み出そうとした瞬間、
後ろからガシッと服を引っ張られる。
「先生、未知の領域へ行くための『事前リスク管理計画書』と、
来年度の『未知達成度ロードマップ』を、
3つの委員会を通してから提出してください。
あ、それと来週オープンキャンパスなので、
高校生の前でニコニコ笑う練習をしておいてくださいね」
未知の探検隊は、
出発する前にベースキャンプの書類仕事で全滅するのである。
終章
私は大学不要論を唱えている。
しかし本当に不要だと思っているのは、大学ではない。
学問のふりをした学問である。
研究のふりをした研究である。
教育のふりをした教育である。
そして、それらを
「適切に管理しているふり」
をするための膨大な書類である。
大学をなくしたいのではない。
大学を大学へ戻したいのである。
――と、熱弁を振るった私の前で、
会場後方から土屋先生がゆっくり手を挙げた。
土屋先生 「海尾君」
海尾 「はい」
土屋先生
「君の言うことは分かった。非常に素晴らしい」
海尾
「ありがとうございます」
土屋先生
「しかしね」
海尾
「はい」
土屋先生
「その画期的な制度改革を実行する会議を開くために」
海尾
「はい」
土屋先生
「まず『改革準備委員会』と、
その妥当性を検証する『外部有識者会議』と、
コンプライアンスをチェックする
『ワーキンググループ』を立ち上げよう。
議事録の作成は海尾君、君に頼む。
あ、もちろん業務外だから手当は出ないよ」
会場、満場一致の拍手。
海尾
「だから大学はそういうところなんですよ」
(第4回「巨人軍の補強戦略が大学を蝕む」へ続く)
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