ホルムズ海峡は、やはり信玄餅でした。
【地政学話】ホルムズ海峡信玄餅論
最近になってSNSには「湾岸情勢の専門家」が大量発生しています。
昨日まで生成AIで猫を踊らせていた人まで、今日は真顔で
「エネルギー安全保障」を語っているのですから、
インターネットとは本当に恐ろしい場所です。
「私は以前から警鐘を鳴らしていた」
「こうなることは予測済みだった」
その声の洪水を見ながら、私は静かに一年前の記事を開きました。
日付は2025年6月16日。
タイトルは『ホルムズ海峡は信玄餅である』。
今見ると、少し頭がおかしいタイトルのように思えます。
ですが中身は妙に真面目で、オマーンの飛び地であるマサンダム半島の地政学的位置、UAEやサウジアラビアのバイパスパイプライン、そして「海峡封鎖」という言葉が、実際にはどれほどきな粉まみれの面倒くさい概念なのかを延々と書いていました。
もちろん当時は、誰も読みませんでした。
アクセス解析は、深夜の地方港みたいに静かでした。
いいね欄など、葬儀場の受付くらい沈黙していました。
私はその時、少しだけ勘違いをしていたのです。
「正しい分析を書けば、いずれ評価される」と。
しかし、現代の情報空間において重要なのは、当てることではありません。
当たった瞬間に、どれだけ騒がしく席に飛び込めるかです。
つまり予言者とは、本来は山奥で静かに暮らす存在だったはずなのに、いまやショッピングモールの呼び込み係に近くなっています。
そして私には、その才能が絶望的にありません。
時代が火を噴く一年前から、誰にも読まれないタンカー航路の記事を噛み続け、黒蜜の流通経路みたいな話を延々としていました。結果として残ったのは、「変な比喩を書く人」という評価だけです。
本当に価値があるなら、あの時にもっと読まれていたはずです。せめて缶コーヒー一本分くらいの広告収益には化けていたはずでした。現実には、きな粉だけが増えました。
ですが、それでいい気もしています。
喉に詰まる前から危険を語る人間は、だいたい宴会では嫌われるものです。みんなが「うまいうまい」と餅を飲み込んでいる時に、一人だけ「それ、水なしでいくと死ぬぞ」と言っているのですから当然でしょう。
そして、実際に世間がむせ始めると、今度は全員が評論家になります。
世界情勢とは不思議なもので、タンカーが燃える頃には、昨日まで恋愛ポエムを書いていたアカウントまで第五艦隊を論じ始めます。どうせ数週間後には、また別の炎上へ群がっていくのでしょう。ホルムズ海峡など、アルゴリズムの海では回遊魚の一種に過ぎません。
その頃には私はまた、誰にも読まれない湾岸ニュースを、ぬるくなったお茶で流し込みながら、一人できな粉まみれていると思います。
騒がれなかった予言は、歴史には残りません。
ですが、後出しジャンケン大会のステージで、スポットライトを浴びながら踊るくらいなら、私は砂浜で古い海図を広げている側でいいと思っています。
むせ返る世界を横目に、今日も静かに、信玄餅を噛んでいます。
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チップのお返しは・・・なにができるのか?思案橋です