見出し画像

未来のトヨタは闇バイト強盗団を「カイゼン」する

1. 鼻歌を歌えない悪党の敗北

「技術的にカイゼンできない問題など存在しない」

日本の技術史において、
この言葉ほど恐ろしいものはない。

普通の人はプリウスを見て思う。
燃費がいい。
静かだ。
安全だ。

まさかその延長線上の未来に、
「強盗団の自動回収システム」
が存在するとは誰も考えない。


だが、考えてみてほしい。

車はすでに運転者の視線を追う。
居眠りを検知する。
障害物を識別する。
人間の操作ミスを補正する。

ならば、次に来るものは何か。

人間そのものを、
「エラー」として認識する技術である。

2. 闇バイトは恐怖の発生装置

闇バイトで集められた即席強盗団。
彼らの共通点は何か。

「プロではない」 ということである。

本物のプロ犯罪者の心理は知らない。
しかし、闇バイト犯は知っている。
自分が捕まるかもしれないことを。

だから、現場直前になると身体が正直になる。

心拍数は上昇する。
呼吸は異常になる。
瞳孔は拡大する。
発汗は増加する。
筋肉は緊張する。

彼らは全身から、
「私は今から人生を終了させます」
という生体データを撒き散らす。

もし、鼻歌交じりでスキップしながら、
強盗できる怪物なら検知を逃れるかもしれない。

だが、そんな人物は、
そもそも闇バイトの募集広告を見ない。

応募するのは、 大体がビビり散らかした凡人である。

だから、未来の社会は彼らを見つける。

3. トヨタは車を作っていない

人々は勘違いしている。
トヨタは車を作っている会社ではない。
ムダを減らす会社である。

事故というムダ。
故障というムダ。
渋滞というムダ。

そして将来は、
「犯罪というムダ」である。

未来の住宅街。
深夜二時。
レンタカーから黒ずくめの男たちが降りてくる。
目指すは高齢者宅。

しかし、門を越えた瞬間だった。

住宅に設置された防犯AIが反応する。

心拍変動。
歩行パターン。
視線移動。
筋肉緊張。
位置情報。
過去の行動履歴。

総合判定。  0.2 秒。

結果。
「異常工程を検出しました」

4. 強盗専用「かんばん方式」

警報は鳴らない。
未来の日本は怒鳴らない。
静かに処理する。

庭の片隅。
植木鉢の横。
一見すると、ただの大型ゴミ箱がある。

しかし、蓋にはこう書かれている。
【犯罪者投入口】

実に親切である。

強盗たちが慌てて逃げようとすると、
防犯シャッターが作動する。

数秒後。
気が付けば三人とも、
中から開かない防犯収容カプセルの中だ。

見た目はゴミ箱。
しかし、性能は高い。

GPS付き。
監視カメラ付き。
生体認証付き。
冷暖房完備。

ついでにジャズも流れる。
人権への配慮である。

5. 犯罪人収集車

十分後。 住宅前に静かに到着する車両がある。

見た目はゴミ収集車。
しかし、違う。

車体にはこう書かれている。
【犯罪人収集車】

もちろん、トヨタ製である。

ロボットアームが伸びる。
ガシャン。
収容カプセルを持ち上げる。
ガシャン。
積載完了。

これぞ、犯罪物流である。

街に犯罪在庫を滞留させない。
必要な時に。
必要な量だけ。
ジャスト・イン・タイム。

トヨタ生産方式の完成形である。

6. 本当に恐ろしいのはここからだ

車内AIが犯人へ話しかける。

「氏名をどうぞ」
「え?」
氏名をどうぞ」
「えっと……」
「音声認識完了」

「職業」 「家族構成」 「応募経路」
「使用SNS」 「指示役との連絡手段」 「動機」
「後悔していますか」

留置場へ到着する頃には、
人定質問の八割が終わっている。

さらに車内カメラが表情を分析する。
位置情報ログを取得する。
スマホを解析する。
防犯カメラ映像を統合する。

AIが自動的に、
事件の時系列を作成する。

7. 警察署到着

夜勤の警察官が缶コーヒーを飲んでいる。
端末が鳴る。

案件番号、発行済み。
侵入経路、記録済み。
供述概要、作成済み。
映像証拠、添付済み。
初動捜査報告書、完成済み。
参考人候補、抽出済み。
送検書類、下書き済み。

警察官は画面を見つめる。
そして、一言。

「もう終わってるじゃん」

8. 法務部という最後の敵

もちろん、法的問題はある。

私人による拘束はどうなのか。
現行犯逮捕なのか。
監禁ではないのか。
AIに身体拘束させていいのか。

法務部は半年、会議した。
一年、会議した。
二年、会議した。

結論は出なかった。

その間に、技術部が完成させた。
いつものことである。

9. 日本が恐ろしい理由

昔は犯罪者が警察を恐れた。
今は違う。

犯罪者が恐れるのは
「事務処理」である。

日本の技術は犯罪を憎んでいるのではない。
ムダを憎んでいるのだ。

強盗団が敗北した理由も、正義ではない。
善悪でもない。

単に、トヨタのカイゼン活動の邪魔だったのだ。

未来の留置場。
強盗団が肩を落としている。
そこへ警察官がやってくる。

「君たち、逮捕されたと思ってるだろう?」

三人はうなずく。
警察官は首を振る。

「違う」
「君たちは、回収されたんだ」

その瞬間、彼らは理解する。

自分たちは犯罪者ですらなかった。
トヨタ生産方式において、
ただの「工程異常」だったのだと。

日本の未来は優しい。
そして、恐ろしく効率的なのである。


いいなと思ったら応援しよう!

海尾守【ジブチの象】 チップのお返しは・・・なにができるのか?思案橋です