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忘れても、心は残る。認知症ケアで私が大切にしているComfortable Careという考え方

私がエクアドルで伝えている「Comfortable Care」は、認知症の人の残された力や感情に寄り添い、安心して過ごせる時間を増やすケアです。

Comfortable Careの基本

快・不快の感情は残っている
認知症ケアで、私が大切にしている考え方があります。
それは、

「認知症になっても、感情は残っている」

ということです。

認知症になると、多くの人はこう考えてしまいます。

「何もわからなくなってしまう」
「話しても理解できない」
「もう以前のその人ではない」

でも、私は認知症ケアの現場で、何度も違う場面を見てきました。

記憶が薄れても、
安心した表情。

好きな音楽を聴いた時の笑顔。

優しく声をかけられた時の反応。

そこには、その人の「心」が残っています。

なぜ感情は残るのか

認知症では、記憶をつかさどる脳の部分が影響を受け、新しいことを覚えることが難しくなります。

そのため、
「何を話したか」
「何をしたか」
を忘れてしまうことがあります。

しかし、感情に関わる脳の働きは、記憶よりも比較的保たれやすいことが知られています。

そのため、
「内容は忘れてしまったけれど、安心した」

「理由はわからないけれど、この人は優しいと感じる」

ということが起こります。

だからこそ、認知症ケアでは、

「何を覚えているか」
だけではなく、

「何を感じているか」
を見ることが大切なのです。

名前は忘れても、私のことは覚えている

エクアドルの高齢者センターで、私は毎朝、認知症のあるおじいちゃんから声をかけられます。

「Doris(ドリス)!」
「Miriam(ミリアム)!」

私の名前は正確には覚えていません。

でも、不思議なことがあります。

そのおじいちゃんは、私が誰なのかを忘れているわけではありません。

私を見ると、満面の笑顔になり、

「¿Cómo estás?(元気なの?)」
と声をかけてくれます。
そして、いつも温かいハグをしてくれます。

名前という記憶は曖昧になっても、
「この人は自分に優しくしてくれる人」
「この人に会うとうれしい」
という感情は残っています。

私はこの姿を見るたびに思います。

忘れることと、失うことは同じではない。

私は「enfermera(看護師)」ではなく、「Mido」として覚えられている

エクアドルの高齢者センターで、もう一つ印象的なことがあります。
日本では、私は看護師です。

スペイン語では、
enfermera(看護師)
と言います。

しかし、高齢者の皆さんは、私のことを「enfermera(看護師)」とはあまり呼びません。

¡Doctora Mido!(ドクトーラ・Mido/女医さん、Midoさん)」
¡Profesora Mido!(プロフェソーラ・Mido/先生、Midoさん)」
そう呼んでくれます。

もちろん、私は医師ではありません。

でも、高齢者の皆さんにとって私は、

体のことを気にかけてくれる人。

健康について相談できる人。

創作活動や日本文化など、新しいことを教えてくれる人。

そんな存在になっているのだと思います。

肩書きではなく、日々の関わりの中で、
「Midoという安心できる人」
として覚えてもらえている。

それは、Comfortable Careが大切にしている「人と人との関係」そのものだと感じています。

だから、関わり方が大切になる

認知症の人との関わりで、私たちは時々、正しいことを伝えようとします。

しかし、相手が覚えていないことを何度も説明すると、不安や苦しさにつながることがあります。

例えば、
「さっき説明したでしょう」
「何回言えばわかるの?」
と言われた時。

認知症の人は、その言葉の内容を忘れてしまうかもしれません。

でも、
「怖かった」
「責められた」
「嫌な気持ちになった」
という感情は残ることがあります。

反対に、
穏やかな声かけ。
笑顔での関わり。
好きなことを一緒に楽しむ時間。

こうした快い経験は、
「ここは安心できる場所」
「この人は自分を大切にしてくれる」
という感覚につながります。

Comfortable CareがBPSDに向き合う理由

認知症ケアで、多くの人が悩むことがあります。

怒りっぽくなる。
落ち着かなくなる。
帰りたいと言い続ける。
介助を拒否する。

これらはBPSD(認知症に伴う行動・心理症状)と呼ばれます。

しかし、私はBPSDを単なる「問題行動」と考えません。

不安、寂しさ、混乱、苦痛などを、言葉でうまく伝えられない時の表現でもあります。

だから私は、
「どうやって行動を止めるか」
よりも、

「なぜその行動が起きているのか」
「本人は何を感じているのか」


を考えることが大切だと思っています。

Comfortable Careとは

Comfortable Careとは、
認知症の人の失われた記憶を取り戻すケアではありません。

認知症を治すケアでもありません。

残っている感情に寄り添い、
安心できる時間を増やしていくケアです。

認知症になっても、その人はその人です。

名前を忘れても。
出来事を忘れても。

安心した気持ちや、大切にされた記憶は、心に残ります。

だから私は今日も、「できないこと」ではなく、「その人の心」を見つめるケアを続けていきたいと思っています。

忘れても、心は残る。

それが、私がエクアドルで伝えたいComfortable Careです。

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