「病院事務のAI副業」 - 見えない仕事は、なかったことになる【実録vol.23】
元病院事務のAI副業実録 — 第二部・石ころの影
元病院事務がAIで副業に挑戦している実録です。
初めての方はこちら👇
戻る途中、遠くから見えた。
自分の机に、何か貼ってある。
出ていく前、部下が上司を呼び出していた。
少し離れた場所で、2人で話していた。
その時から、嫌な予感があった。
近づくほど、確信に変わっていった。
やっぱりか。
脱力した。
呆れなのか、疲れなのか、自分でもよくわからなかった。
机の前に立った。
メモだった。
「あのプロジェクト、代わりにお願いします」
とだけ書かれていた。
自分が育てようとしていた時間まで、否定された気がした。
そのプロジェクトは、部下に任せていた。ステップアップのためだった。フォローはすると、上司にも伝えていた。
顔を上げた。
上司の席は、すぐ近くだった。
戻ってきたのは、見えているはずだった。
それでも、こちらを見なかった。
メモを持って、歩いた。
数歩の距離だった。
「これは、どういうことですか?」
上司が、ようやく顔を上げた。
「あの子が、できないと言っていたから」
それでも、やらされるなら辞めます。そう言っていた、と付け加えられた。
言い返した。
「でも、誰かがしないといけないでしょ?」
上司は、それだけ言った。
自分がまわしていた
最初の頃は、定時に帰るなんて想像もできなかった。毎日誰かに呼ばれて、席に着く暇もなく、気づけば日が暮れていた。
だから、定時に帰れる日が出てきた時は本当に感動だった。
いつのまにか、あらゆる場面で一番詳しい人間になっていた。
あの人に聞けば、全部解決する。そう言われる存在になっていた。
いろいろな部署の人間が、噂を聞きつけてしょっちゅう駆けつけてきた。電話が鳴りっぱなしの日もあれば、廊下で呼び止められて立ち話のまま解決策を考えることもあった。
忙しかった。
でも、楽しかった。
頼りにされていた。
信頼されていた。
自分がまわしている。そういう感覚が、心地よかった。
そのおかげで、いろいろな部署の問題まで把握できるようになっていた。
全体が見えていた。
後輩たちにも、少しずつ同じ動き方が伝わっていくのがわかった。
自分が教えたわけでもないのに、似た動き方をする人間が増えていった。
そう感じていた矢先だった。
やったら負け、という空気が、そこにぶつかってきた。
見えていなかった
なぜ、そんなことになったのか。
理由は単純だった。
問題は大きくなる前に消していた。誰も気づいていない次元で。
みんなが笑顔で働ける場所にしたかった。
それだけだった。
自分が多く抱えても構わないと思っていた。誰かが楽になるなら、それでよかった。
あれが正しかったのかは、今でもわからない。
一人が誰かのために動く。その環を、少しずつ広げていきたかった。誰かに気づいてもらうためではなく、ただ、そうすれば全体が少し楽になると思っていただけだった。
後輩たちの中に、能動的に問題を拾いに行く人間が出てきた。
問題は大きくなる前に潰した方が、結局は楽だ。そう理解している人間が、増えていった。
環は、確かに、広がっていた。
でも、そうやって先に動く人間が出てくると、次第に、違う動き方をする人間も現れた。
いつも先に動くあいつに、やらせておけばいい。
そうすれば自分は何もしなくて済む。
最初は、一人か二人だった。忙しい時期が続いていたし、誰か一人が動かないくらいで現場全体が崩れるとは、その時は思っていなかった。
気づかないふりをした。それくらい大した違いはないと思っていた。
でも、その考え方は静かに広がっていった。
動かなくても、誰かが拾ってくれる。動かない方が、楽だ。
いつのまにか、動くことの方が、損になっていた。
やった者が、負ける。
あの日のメモが、その延長線上にあったのかどうか、今でもわからない。
ただ、同じ匂いがした。
わかっている人がやればいい
平和になってから、聞くようになった言葉があった。
「あの時は、大変だったんですよ」
言っているのは、あの時、机の下で息を潜めていた人間たちだった。
戦っていなかった人間ほど、戦争が終わった後に武勇伝を語る。いつのまにか、それは、その人の手柄になっていた。
平和になった後もトラブルは起きた。
その度、何もできなかった。何もしなくても、いずれ誰かが終わらせる。そう思っている人間には、動くだけ損だった。
それでもトラブルが解決すると、また同じように語り出した。
ある日、新しい仕事を振ろうとした。
「なんで仕事をわかっていない私がやらないといけないんですか」
「わかっている人がやればいいじゃないですか」
「その方が早いですよね」
正しかった。
効率だけで言えば、正しかった。
でも、その正しさを盾にして、みんな手を引っ込めていった。
やらない人間ほど、平和になった。
傷を負わなかった人間ほど、声が大きくなった。
新体制に後から乗ってきた人たちもいた。
最初は距離を置いていたのに形が見え始めた頃には、もう自分たちがやったことのように振る舞っていた。
まるで、最初からそうだったかのように。
石ころの正体
あの環を作っていたのは、石ころだった。誰かが黙って抱えていた不満も、後輩がふと漏らした一言も、全部、拾ってから動いていた気がする。
vol.21で、それを「石ころ」と呼んだ。
誰も気にも留めないものを、拾う。
声のわずかな揺れ。
目線が一瞬泳ぐ瞬間。
問題が、問題になる前に。
その拾い方は、別の記事に書いた。
問題を大きくなる前に消していたのも、
後輩たちにそれを広げようとしていたのも、
全部、石ころを拾う視点だった。
でも、多くの人間は今しか見ていなかった。目の前に問題がなければ、それで十分だった。問題が起きなかった理由を、誰も遡って考えようとはしなかった。
過去は、今と、繋がっていなかった。
今、大きな火が上がれば必死に消しにいく。
それは目に見えるからだ。
目に見える火を消した人間だけが評価される。
今のうちに消える小さな火には、目が向かなかった。それが、この先何になるかなんて、誰も考えていなかった。
考える理由が、なかった。
過去も、未来も、切り離されたまま、今だけが見られていた。
石ころを拾うということは、今だけを見る人間には見えない場所で起きていることだった。
見えない仕事は、いつも成果だけが見られる。
道具が変わっても、それは変わらなかった。
誰でも使えるようになった
周りを見渡しても、プロンプトが上手い人間、資料を作らせるのが得意な人間、返信を書かせるのが得意な人間、効率化のコツを語れる人間はいくらでもいる。
そういう意味では確かにそうだ。
でも、それはAIに何をやらせるか、というタスクの話だ。
自分が何を見てきたか、何を拾ってきたか。それをAIに渡す話は、まだ、ほとんど誰もしていない。
AIの答えも同じだった。
今、それらしく見えるかどうか。そこしか見られていない。
その答えの裏に、何を渡してきたか。
何年、何を拾い続けてきたか。
そこは、今度も見えないままだった。
見えないまま時間だけが過ぎていけば、いつかまた同じことが起きる。
気づいた時には、もう追いつけないくらい差が開いている。
自分の話だけではなかった。
見えていない努力はどこにでもある。
誰かが、今日も何かを大きくなる前に消している。
それは今のところ誰の目にも入っていない。
AIも同じだった。
今、それらしい答えが返ってきているとしたら、それはAIが過去に蓄積された膨大なデータから、それらしい答えを組み立てているからだ。
そう説明することもできる。
でも、それだけでは説明できないことがあった。
同じAIに同じ質問をしても、渡す人間によって返ってくる答えは違う。
渡した本人が何を見てきたか。
それが答えの中身を決めていた。
その答えの裏にあるものを見ようとしたことは、あっただろうか。
自分自身も何を渡してきただろうか。仕事でも、雑談でも、AIとのやり取りでも、渡しているものは結局同じだった。
これは、病院事務の話でもAI副業の話でもない気がしている。
誰もが何かを渡しながら生きている。
渡しているものは、これまで自分が何を蓄積してきたかだった。
あなたは、何を蓄積してきただろう。
今日、何かを見過ごさなかっただろうか。
今日、誰かが拾った石ころに、あなたは気づいただろうか。
机に置かれた一枚のメモ。何年も前のことなのに、あの時の指の冷たさだけは、今でもはっきり覚えている。
あれは仕事を戻された紙じゃなかった。
見えない仕事は評価されない。
その現実を突きつけられた紙だった。
まだ、答えは出ていない。
正直な現在地
----------
収益:1,700円
クラウドワークス:登録完了・案件待ち
ココナラ:サービスページ公開中・問い合わせ待ち
X:フォロワー420人・違和感接触装置として運用中
note:フォロワー1,210人・主戦場
有料記事:公開済み・全面アップデート済み
有料note:公開済み・記録用アプリ「石ころノート」も公開中
番外編・画像編:公開済み
AIとのやり取り:工程ごとに分けて管理中
noteシリーズ:vol.23(前編)まで公開完了
----------
見えていない努力は、まだどこにも数字になっていない。
それでも続ける。
(vol.24(後編)に続きます。)
シリーズ記事はマガジンにまとめてあります👉
「AIで副業」を考えてる人、一緒に試行錯誤しましょう。質問はXのDMへ。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします!!!!!いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!!