(表)毎週ショートショートnote 『達人のお気に召すまま』
学校の帰り道。弁天さまのお社で、僕らは毎日、たわいも無い時間を過ごしている。海沿いの町に流れる空気はあったかくて、今日もゆったりしている。
「ねぇ!あれ、できる?10秒ピッタリあてるやつ!」
「え?どうかなぁ」
「私ね、これ得意なんだよっ!もうねぇ、達人なんだから!10秒の達人と呼んでくれたまえ。えっへん」
「わかった、わかった。じゃあやってみて?」
「うん、OK。達人のミョウギ見せてしんぜよーう」
彼女は神妙なおももちで、目をつぶって時計のストップウォッチをスタートさせる。
しばしの沈黙。そして、
「……じゅう!!よし、どうかなー??ほら!!9秒98!!!」
「ピッタリじゃないじゃん」
「いやいやいや、難しいんだからね!んじゃもいっかいやるから!見てて!」
再び目をつぶり、数をかぞえている。
すこし眉間にしわをよせて、一生懸命かぞえている様子をみて、胸がキュンとなる。やっぱり、かわいいな。
「……じゅう!!よしゃ!どうよ?10秒05!!?あれ?!おっかしいなぁ」
「いやぁ、さすが達人!いよっ!たつじん!!」
「ちょっとぉー!むかつくぅ!じゃあ、こんどは交代ね。やってみて!」
「えーーー、なんだよ。おれ得意じゃないのに」
ぶつぶつ言いながらも目をつぶる。
「じゃあいくよ?いち、にぃ……」
「ちゅ」
「え!?今なにした??ちょっと!」
「はい、今15秒!ざんねーーん!!やはり達人にはかなわぬようだなぁ。はっはっはー」
弁天さまはそんな僕たちを今日も微笑んで見ていた。
これが、初めてのキスの思い出。
春風があたたかかった。
(646字)
たらはかにさんの毎週ショートショートに参加します。
お題は『連続達人事件』でした。
こちらは、裏のお題『連続執事試験』とセットでお楽しみいただけます。こちら↓↓↓
ちなみに、この2人の物語は以前も書いていました。よろしければ、こちらもご覧下さい。
最後までありがとうございました。
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