毎週ショートショートnote 『かもしれない弁天』
春が近い。しめった生ぬるい海風が頬を撫でる。白い砂浜とひとつなぎの白い石段の奥には、小さな鳥居の赤が海を見下ろしている。
放課後、一緒に帰ってきた友達と途中で別れ、僕はひとりで鳥居をくぐった。境内に着くと、待ち合わせていた彼女がうつむいて座っている。
「わたし、もうだめかもしれん」
ほら、いつもの『かもしれんタイム』が始まった。
「心配すんなって。大丈夫や」
「根拠を言ってよ」
んなもんないんよ。
「わかった。じゃあ、このコインを投げて、表が出たら大丈夫。裏が出たら......まぁ出ないよ。じゃあ、いくよ?」
ぼくはコインを思いっきりぶん投げて
天高く舞い上がったコインは
くるりと弧を描いて、お社の屋根に見事に乗った。
カラン♪
「んもう!ちょっとぉー!表か裏かわからへんやん」
そんなふたりのやりとりを、弁天さまが笑って見ている気がした。
僕たちも自然と笑った。
「もう!笑ったらおなかすいたわぁ」
もう!笑ってるきみがめっちゃ好きなんよ。
(410字)
今週も、たらはかにさんの毎週ショートショートに参加します。お題は『かもしれない弁天』です。
月曜の夜にショートショートを考えるのが習慣になりました。最初はネタが出てこないけど、書き始めるとまとまってくる感覚が好きです。
今回は410字で如何に情景描写を入れられるかを意識してみました。
セットのお題『だろう温泉』はこちらから。
併せてお読みください。
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