新・德川家康 ~数正と正信、智謀の諍臣の巻~
「故・右大臣家の理想を敷衍すればすなわち、
天下統一。羽柴筑前はその後継とすれば、
国内の大名小名須らく跪かせることと相成ろう。
先の戦を制したご当家、これも例外ではない。
筑前は名うての謀略上手、軍師・黒田官兵衛も
控えておるが、ご当家には弥八郎が居る。
しかし、その前にご当家を一枚岩の堅きに
固めねばなるまい。」

「ご城代、まことに汗顔の極み。が、その一枚岩、
いかに仕上げるおつもりにて候や?
なにとぞ、ご教示願わしゅう・・・!」

三州・岡崎城の書院には小姓が何度も燭台の丁字を
剪りに来ます。石川数正と本多正信による
“差し・・・”の話し合いは深更に及びました。
「筑前の天下は簒奪したもの、これはまさしく
正鵠。では筑前の恐れるものとは如何なものと
思われる?」
「されば、恐れるものとは・・ご当家に有って
羽柴秀吉に足らざるものにござりましょうか?」
と本多正信。
「左様。弥八郎、思うままを申してみよ?」

「されば大義名分、門地門閥、戦火を厭わぬ
譜代の臣それと・・・」「それと何であろう?」
「時・・・にござりましょうか?」
「ウム、さすがは弥八郎。よう観たの」
「世の大方の物事は時が解決するものじゃ。
したがその“時”、我らにも等しく与えられる
もの。殿は秀吉よりもお若い。待てば
待つほど最後に笑うのは我らが殿じゃ
弥八郎。筑前があれほど大坂築城を急ぐのも、
この“時”に追い使われておるからに
相違あるまいて。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さすがは家康と一心同体の石川伯耆守数正。
その深い洞察に本多正信も目を瞠る思いでした。

「Hikaru's réputation1」、
最後までおつきあい、ありがとうございました。
次回もどうぞお楽しみに!
— Hikaru
