Master of Wineへの準備
反町主演のGTOがドラマで復活するらしい。言いたいことも言えなかった世の中は、言ってもいいけど焼け野原になる世の中になってしまった。今の教師は授業だけでなく、生活指導、いじめ問題、多様性問題、保護者対応、ネット問題への対処まで担うよう求められるし、周囲からの厳しい要求の中、一歩間違えれば一撃で役満に振り込むような鉄火場の南3局を日々生き抜いているのだ。
先日、中学校で教員をやっている地元の友人と久しぶりに焼肉に行った。普段の仕事内容を聞いてみると、「生徒が帰宅していない」と親から連絡を受けて周辺を探しに行くこともあるらしい。完全にOut of Scopeだと思うのだが、日本はこの辺りの線引きが曖昧で、なんでもかんでも教員に負担がのしかかる。
言うことを聞かない生徒も多いらしい。偏差値の高い私立校では学習習慣が身についている生徒が多いため落ち着いた授業ができるが、地元の公立校ではほぼ猿山になり、言葉を理解させるのも難しい。
授業中に「まじギュンギュンギュン!」と歌い出す生徒は逆刃刀でぶん殴っていくしかないと思うのだが、家のローンがあるから難しいと答えたそいつは、25年の時を経てちゃんと大人になっていた。
さて、以前「Master of Wineへの道」という記事を書き意外に大人気だったので、その恩恵にあやかろうという企画。前回の記事ではいかにあの試験が難儀なのかを調べて書いたが、一方で手続き的な部分には全く触れていなかったため、今回そこを深掘りしてみる。この記事では、MWプログラムに登録するための要件と出願手続きを、IMW公式情報に基づいて体系的に解説する。
なお、本記事の内容は2026/27年度サイクルの情報で、IMWは要件を毎年更新するため、実際に出願される際は必ずIMW公式サイトで最新版を確認されたし。
1. 応募資格 ― まず満たすべき3つの条件
出願するには、次の条件を満たしている必要がある。
① ワイン資格 WSET Diploma、または同等のワイン資格を保持していること。「同等」には、ワイン醸造学・ブドウ栽培学の学士号/修士号、あるいは高度なソムリエ資格などが含まれる。Master Sommelierや、ガイゼンハイム大学の修士なども問題ないだろう。
② 実務経験(3年以上) 出願時点で、ワイン業界での「現在進行形かつ継続的な専門的実務経験」が最低3年以上あること。ブドウ栽培・醸造から、販売、執筆、教育まで、幅広い職種が認められる。この実務経験は、実際にワインを醸造販売している方だけでなく、講師として教壇に立っていたり、ワインライターとして活躍されている方も対象だ。
③ 実務への従事度 その仕事が主要な生計手段であるか、週20時間以上従事していること。IMWはワイン業界プロフェッショナルの会員組織であるため、これは必須要件となる。1日8時間、週5日で40時間だから、だいたい平日の半分以上をその仕事に充てている必要がある。副業でワインの販売をやっていますという程度では認められないかもしれない。
なお、①のワイン資格や、②の経験年数などの条件は該当しなくても、IMWの理念に合致すると考える場合は入学委員会に特例を申請できる。ただし、③ワイン業界での実務への従事という要件だけは例外が一切認められない。
2. 出願フォームで求められる提出物・記入内容
出願フォームはすべて英語で記入する。主な内容は以下の通りである。
個人情報・連絡先
最低3年間の職歴の詳細と職歴の概要
ワイン資格および学歴の詳細
WSET Diploma等の修了証明書のコピー
短い経歴(最大150語)
3つのエッセイ(各最大150語)
プログラムへの志望動機
これまでのテイスティング経験と、学習中のワイン入手方法
試験準備に向けて、どのように十分な学習時間を確保するか
各種規約(不正行為防止ポリシー、入学試験規則、費用規約、学習同意書、学生行動規範)への同意
なお、自由記述の質問の回答の質は応募者によって大きくばらつくとIMWも指摘しており、雑だと選考でかなり不利になる。
3. 推薦状(レフェリー)の要件
出願には、自分の資質を証明する推薦状が1通必要になる。田舎のおばあちゃんから推薦してもらってもダメで、以下の要件を満たす推薦者からの推薦状だ。
推薦者の条件:マスター・オブ・ワイン、またはワイン業界で15年以上の経験を持つシニア・プロフェッショナルであること。なお、プログラムに再出願する場合は、MWによる推薦が求められる。
評価される内容:推薦者は、応募者が「将来MWメンバーとしてふさわしいか」「高度なテイスティング能力を持っているか」「プログラムの内容を理解し成功する見込みがあるか」を確認する。
機密性:推薦状はオンラインで直接IMWに送信され、内容は機密扱いとなる。出願者本人がコピーを受け取ることはできない。
4. 入学試験 ― 理論とテイスティングの2本立て
出願フォームの提出後、オンラインの入学試験が課される。英語での記述が必須で、資料の持ち込みは不可。剽窃検知ソフトウェアで厳格にチェックされる。この辺りは以前「Master of Wineへの道」でも書いたので、詳細はそちらを参照されたし。
理論試験(90分)
「ブドウ栽培」「醸造および瓶詰め前の手順(ワインの取り扱い)」「ワインビジネス」といった分野からランダムに提示される3つの設問のうち1つを選び、エッセイ形式で回答する。実例を挙げて論理的に構成する力が問われる。
テイスティング試験(90分)
事前に指定された4本のワインを自分で購入し、試験中に実際にテイスティングしながら設問に答える(入手できない場合は「ドライテイスティング」も可)。自分で買ったワインなので答えは分かっているが、ポイントはグラスの中の証拠に基づいて、品種・産地・醸造法・品質・商業的魅力などをどれだけ説得力をもって論証できるかにある。
答案の書き方はWSETとは根本的に違うようで、香りの記述を並べたり、BLICを機械的に当てはめたりするものではない。品質・醸造法・商業的魅力などを問う設問に対し、すべての主張をグラスの中から取れる証拠に結びつけて論証する。例えば「新樽のフレンチオークで長期熟成」と述べるなら、「バニラ由来の強いオーク香とタンニンの骨格が感じられるため」と、証拠と結論をセットにする、といった具合になる。問われるのはなぜそう言えるのかを説得力をもって示す論理力ということになる。
なお、居住地域などで指定ワインが入手できない場合、実際に飲まずに、テクニカルシートやデータなどの情報のみに基づいて解答することが公式に認められている。これを「ドライテイスティング」と呼ぶ。
5. 2026年度の出願スケジュールの例
すでに今年度の出願は終わってしまっているのだが、来年度以降の参考にはなるだろう。おおむね以下の要領で進行される。
2026年4月20日:出願受付開始
2026年5月8日:出願フォームの提出+出願料支払いの締め切り(Part 1)
2026年5月8日:推薦者による推薦状提出の締め切り(Part 1)
2026年5月13日:オンライン入学試験へのアクセス開始
2026年5月27日:オンライン入学試験完了の締め切り(Part 2)
2026年9月9日:出願結果の通知
出願は毎年5月ごろに締め切られ、結果が出るのは9月。Diplomaの結果待ちと同様に長い待機期間がある。
6. 出願経験者の体験記
公式情報だけでは見えない「出願を通過する人・落ちる人の差」を、出願経験者の証言から掘り下げてみる。
プログラムに進めるのは出願者の50〜60%
公式な合格率は公表されていないが、あるポッドキャストの推定では、出願者のうちプログラムへの参加を認められるのは50〜60%程度とされる。Diplomaを持ち、3年以上の実務があり、推薦状を得て、入学試験を受け、しっかり準備した人でも、4〜5割は落ちる。また、よくある不合格の要因として、
出願フォームの記述が不十分:IMWは「自由記述の質は応募者によって大きくばらつき、雑・未完成・急いで書いた回答は不利になる」と明言している。
推薦状の熱量が低い:ある経験者は「推薦状は思っていた以上に重要だった。推薦者が中途半端な支持しかしてくれないなら、別の人を探すべき」と語っている。
設問の読み違いと時間切れ:テイスティング設問には誤答を誘う「ひっかけ」があり、タイピングが速くても思考時間が足りず時間切れになるケースが多いとのこと。
3つのエッセイの書き方
直接入力せず下書きする:オンラインポータルに直接書き込まず、Wordなどで下書きし、文法エラーがないか第三者にチェックしてもらう。
「与える視点」で書く:自分が何を学びたいかだけでなく、「自分がIMWやワインコミュニティに何を提供・貢献できるか」に焦点を当てる。実際、無料ワインクイズの運営や学生指導といった実績を挙げ、「ワインコミュニティにおける卓越と学びの促進」というIMWのミッションへの適合をアピールした例がある。
推薦者の選び方
推薦状は肩書きよりも「自分を深く理解し、強力に推してくれるか」が本質。MWの知り合いがいなくても、業界15年以上のシニアで代替できるので、第一候補に加え、バックアップの推薦者を用意しておくと安心かもしれない。
入学までの情報は以上。こちらの記事もまだ読んでいない方はぜひ参照されたし。
