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京都らしさを形づくる「丸さ」とは。~千年千人プロジェクト「まちを肴にVol.2」レポート~

京都に関わるひとりひとりの「語り」から、京都基本構想が示す3つの価値への“気づき”の機会をつくる「千年千人プロジェクト」。
その一環で、トークイベント「まちを肴にVol.2」を梅小路エリアの河岸ホテルさんで開催しました。前回に引き続き、イベントの様子と自分の考察をまとめてみました。

アーティストが共同生活を送りながら創作活動できる「河岸ホテル」

千年千人プロジェクトとは

次の千年へ。京都の「まち柄」を、わたしたちが編んでいく。
「千年千人プロジェクト」とは、京都基本構想が示す3つの価値軸(「歴史と文化を介して人間性を恢復する」、「自然への畏敬と感謝の念を抱く」、「自他の生をともに肯定し尊重する」)への“気づき”の機会をつくる取組。京都基本構想の策定に関わった若者で構成する「京都市未来共創チーム会議」の皆さんが呼びかけ人となり、立ち上げたものです。

基本構想を行政の言葉で伝えるのではなく、京都に関わる人々が、くらしや仕事など日々の営みの中で京都らしさを感じた瞬間をひとりひとりの言葉で紡ぎ、様々な取組を通じて、基本構想が描く「こういうまちであり続けたい」という京都の“まちの姿”を共有していきます。

プロジェクトの特徴としては、今回の「まちを肴に」のように、人を介して、想いをつないでいくことが挙げられます。マス広告や大々的なキャンペーンを打つのではなく、また有名人を呼んでトークを行うのでもなく、一人ひとりの想いを共有できる機会をつくりたい。
これは、未来共創チームとの議論の中で、「価値観は説明して伝えるものではなく、対話の中で気付くもの」 「市民同士が語り合うことで初めて自分ごとになる」といった意見が出たことが大きなきっかけになっています。

広報ではなく、コミュニケーションをデザインするということ

また、京都市の政策推進パートナーで、「ファンベース」著者の佐藤尚之さんから、「マスメディア型の情報発信は、情報過多の時代では届きにくい」 「人が最も影響を受けるのは、身近な人や価値観の近い人からの口コミである」といった助言を受けていたこともあります。

僕個人としても、京都市の広報担当を8年間経験し、「伝え方」については自分なりに探求を続けてきました。手掛けてきた市民しんぶんなどで評価を得る一方で、「自分は京都のことを何も知らない」といった葛藤を経験(長くなるので、ここでは触れません。もしご興味のある方は、以下の投稿をご覧ください)。

公園利活用や都市経営戦略室で京都の多様な営みに顔を出しているうちにたどり着いたのは、小さなコミュニティが無数に点在し、それらが有機的につながっていくことこそが、意識変容、社会変革につながるのでは、という仮説です。
例えば、立ち上げに関わった「京都市定住移住応援団」も、そんな思いで交流会を企画しました。

一方で、コミュニティというものは、生まれた瞬間に「閉じた場所」になる、ということも実感しています。そこで、「千年千人プロジェクト」は、対話だけでなく、SNSをはじめ、本、食、音楽など様々なコンテンツを組み合わせて、関わりしろをつくる、ということを心がけています。
ご興味がある方は、下記の特設サイトをご覧ください。

「スナック基本構想」開店!

松井市長と語らう池坊さん
今回も、学生、クリエイター、ビジネスパーソン、まちづくり団体など、多様な方が集う場に
インディペンデントカルチャーメディア『ANTENNA』さんによる「音楽で感じる基本構想」の視聴コーナーも。特設サイトからも視聴できます。
「千年千人書店」Powerd by 誠光社は今回も大人気。僕はこれをゲット

今回も、登壇者(共創チームメンバー)が「ママ」となり、参加者とゆるく語らう「スナック基本構想」だけでなく、あちこちで対話が生まれていました。ですが、話すことが得意な人ばかりではありません。無理に話さずとも、様々なコンテンツを通じて、京都のまち柄を感じられるような場づくりを試みました。

トークセッション「文化が最近生まれるところ」

その後、 「文化が最近生まれるところ」をテーマに、「京都市未来共創チーム会議」メンバーの池坊 専宗さん、大井 葉月さん、仲田 匡志さんによるトークセッション。モデレーターは、今回も堤大樹さん(Eat, Play, Sleep inc.代表取締役)。それぞれの活動や価値観も交えながら、「スナック基本構想」を通した参加者の「語り」から、京都のまちらしさ(まち柄)を掘り下げました。

池坊 専宗さん( 華道家・写真家)
いけばなの根源 華道家元池坊の青年部代表を務める傍ら、京都の66の伝統工芸と職人を描いた写真集『よい使い手 よい作り手』を刊行されるなど、写真家としてもご活躍。個人的に、雑草の美しさに惹かれているので、「名もなき花を生ける」という姿勢をとてもリスペクトしています。
大井 葉月さん (京都市職員 所属:産業観光局)
「基本構想って難しくないですか?」共創チームでは、常に市民の目線で、たとえ相手が市長であっても、自分の素直な気持ちを伝え続けた大井さん。今は京都市のソーシャルイノベーション研究所(SILK)の事務局として、公と民の間に軽やかな関係性をつくっておられます。
仲田 匡志さん(株式会社SOU 代表取締役/U35-KYOTO プロジェクトマネージャー)
若者の起業や企業の課題解決の伴走支援のほか、U35世代の価値観や視点を京都のまちづくりに繋げるU35-KYOTOのプロジェクトマネージャーも務めておられます。基本構想のキーワードの一つ、「自利利他」を体現されておられ、京都がやさしいまちであるために欠かせない存在と思います
今回は、松井市長も駆けつけ、トークにもスポット参加!

詳しくは、後日アーカイブを公開しますが、個人的に感じたことは以下の通りです。

  • 「丸さ」があるから、「尖り」も同居できる

「池坊は最近丸くなっているのでは」
専宗さんにそう投げかけた参加者がおられたそうです。それを聞いて松井市長は「京都の歴史と伝統は、丸い水が支えている。水が丸いから、いいお出汁が取れる。尖ったものも包み込む。人も同じ。奇人、変人の価値観を許すのが京都。これを私は「ぬか床」と言っているが、尖っているものを同居させる。違うものをつなぐ、許すというある種の距離感。どこかでつながっている感覚。べたべただと許せなくなる」と語りました。
これを聞いて思い出したので、最近、別のイベントでも「凸と凹があるから相互扶助が成立する」という話で盛り上がったこと。意の異なる人から技術、知識を得て、培ってきたのが京都で、文化とは、そういった土壌から立ち上がってくるものと再確認することができました。

  • 生身の人間関係

「SNSやネットからは異物は入りづらい。好みを提供してくれるので、同調しやすくなっている。だから現実の中で行動しないと、異の異なる人とは出会えない」そんな話を通じて、やはり生身の人間関係の大切さを感じることができました。まさに、今回のようなイベントから、そういった関係を築けることができればと思います。
また、「語る」ことの大切さについても、意見が交わされました。基本構想は、解釈を読み手に委ねる余白を設けることをコンセプトの一つにしています。しかし現代は「炎上」に代表されるように、語ることがリスクになる社会。他の人の意見に同調した方が無難である、という風潮があるのも現実。
それでも、「千年千人プロジェクト」は、「語り」を広げていくことを目指したいと思います。教えること、語ることは学ぶことの裏返しでもある。基本構想で生まれた「学藝衆」は、まさにそのような理想を追求するものだと思いました。

  • 身体知を獲得することの大切さ

専宗さんが写真集「よい使い手 よい作り手」を手掛けられた際、「職人さんの技術や息遣いは言葉で表されているものではないので、同じような空気を吸うことが欠かせない」と感じられたそうです。東山区役所に勤務した経験のある大井さんからは、「そこにある文化は人が使ってこそ。作り手の思いがわかってこその文化」という意見が上がりました。
現代は、知識や学問が普及し、尊重される時代。数値化すること、KPIを求めることも大事ですが、そこに囚われ過ぎると、ものを感じる能力の方が知らず識らずのうちに、疎かにするようになってしまう。そうなると、美意識が失われていくという危機感を抱きます。
そんな時代だからこそ、京都は身体知を獲得できるまちとしての強みを生かしていくべきだと感じました。

「気付いたら、起業していた」(株)マガザン・岩崎達也さん

会場では、LINNÉ×株式会社マガザンによる「心拍」のドリンクも提供された岩崎さん

「今日の話を聞いていて、なぜ京都に居続けているのかという解像度が上がった」その後登場された岩崎さんは、そうお話されました。
岩崎さんは、「泊まれる雑誌」をコンセプトにした宿泊施設を手掛けられています。気づいたら、会社ができて、社員ができて…と続いていったそうです。楽しんでいるうちに、行政の仕事とつながりはじめ、公共の領域も面白く感じるようになったとのこと。
面白そうだと思ってやり始める人を受け入れるのが京都。それでいて、べたべたし過ぎず、軽やかな関係性でいられるとも、よく耳にします。
兵庫県三木市との二拠点生活をされている岩崎さんのような方が今後も増え続けることで、京都の文化の奥行きはさらに増していくのだと感じました。

多様な想いをつなぐ、京都基本構想

仲田さんは、京都市の最高理念、「世界文化自由都市宣言」の「都市は理想を必要とする」という一文を引用され、「明日に希望が抱けるから一緒に行動できるし、明日に希望があるように頑張れたりする」という想いを伝えられました。そして、頑張る源泉は、子どもたちにどんな未来を受け継げるかという、今を生きる市民としての責任感だそうです。そんな想いを聞くと、自分も同じ想いを抱きたいという刺激を受けることができます。
一方で、「まちを肴に」に集まる人からは、重苦しい責任感よりも、楽しさや軽やかさを感じることができました。

まちづくりに関わることは、「意識が高い」と思われるきらいもあると思います。でも、「意識が高い=まじめ」ではない。僕自身も、様々な京都のコミュニティに顔を出していますが、ゆるさもあり、どこかいい加減で、でもそれぞれの理想は肌で感じることができることが多いです。

京都基本構想をきっかけにした「千年千人プロジェクト」が、そんな方々の想いを受け止め、紡ぐ存在でありたい。今回のイベントを通じて、そう感じることができました。

vol.3は3月28日に開催します。また新たな「語り」が広がりますように。

フォトグラファー:服部健太郎 Photo by:Kentaro Hattori

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