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京都のまちには「怪人」が欠かせない。~千年千人プロジェクト「まちを肴にVol.1」レポート~

京都に関わるひとりひとりの「語り」から、京都基本構想が示す3つの価値への“気づき”の機会をつくる「千年千人プロジェクト」。
その一環で、トークイベント「まちを肴にVol.1」を源湯さんで開催しました。今回は、イベントの様子と自分の考察をまとめてみました。

源湯さんを会場に開催!

千年千人プロジェクトとは

次の千年へ。京都の「まち柄」を、わたしたちが編んでいく。
「千年千人プロジェクト」とは、京都基本構想が示す3つの価値軸(「歴史と文化を介して人間性を恢復する」、「自然への畏敬と感謝の念を抱く」、「自他の生をともに肯定し尊重する」)への“気づき”の機会をつくる取組。京都基本構想の策定に関わった若者で構成する「京都市未来共創チーム会議」の皆さんが呼びかけ人となり、立ち上げたものです。

基本構想を行政の言葉で伝えるのではなく、京都に関わる人々が、くらしや仕事など日々の営みの中で京都らしさを感じた瞬間をひとりひとりの言葉で紡ぎ、様々な取組を通じて、基本構想が描く「こういうまちであり続けたい」という京都の“まちの姿”を共有していきます。

具体的には、日常の小さな気づきを発信する日記コンテンツ「KYOTO 1000 DIARY」、対話型イベント「トーク&ワーク-まちを肴に-」等を展開。プロジェクトの企画・運営を、合同会社バンクトゥ、Eat, Play, Sleep inc.、Nue incなどで構成する民間企業チームに委託していますが、委託者・受託者の垣根を越えて、「京都の理想を千年先の未来へとつないでいきたい」という思いを共有しながら、時には侃侃諤諤の議論をしながら、共に歩みを進めています。

未来共創チームはもちろん、基本構想の策定の審議会メンバー、市職員で構成する「京都の未来を紡ぐチーム」、その他さまざまな方が緩やかに関わり始めており、業務量はかなりタフなのですが、個人的にもとてもワクワクしながら進めております。

「スナック基本構想」開店!

スナックの世界観にこだわった特製カウンターは、STUDIO MONAKAさんに制作いただきました

まずは登壇者(共創チームメンバー)が「ママ」となり、参加者とゆるく語らう「スナック基本構想」が開店!
イベント公開後、すぐに満席となっただけあって、参加者は「まちを語りたい」人ばかり。スナックにはすぐに人だかりができ、受付時に配布した基本構想のキーワードカードを肴に、あちこちで語り合いが繰り広げられていました。

「千年千人書店」Powerd by 誠光社
LINNÉ×株式会社マガザンによる「心拍」のドリンクも。雑草も含めて醸したクラフトサケが胸熱
プレイリスト「このまちの音楽は、ずっとおもしろい-京都の楽曲200」Powerd by ANTENNA

基本構想で示している価値観を体現する書店やクラフトドリンクの販売も出店する中、お年寄りから学生まで、教師、クリエイター、庭師、福祉団体、ビジネスパーソン等多様な方が同じ場を共有しました。
それこそ銭湯のように、無理に語らなくとも同じ場所にいても良い、という世界観を大切にしたつもりです。

トークセッション「あつまりたい場所どんな場所?」

浴室で行ったトークセッション

その後、 「あつまりたい場所どんな場所?」をテーマに、「京都市未来共創チーム会議」メンバーの大竹莉瑚さん、杉田真理子さん、三川夏代さんによるトークセッション。三人に共通することは、京都に住んでまだ数年ながら、様々なバックグラウンドの方とつながりながら活動されている、ということです。それぞれ、異なるエリアに根を下ろし、まさに基本構想で示す価値観を体現されるような活動をされています。
京都は閉鎖的なまちのイメージと思われがちですが、三人をみていると、必ずしもそうではないと感じていただけると思います。

トークセッションでは、それぞれの活動や価値観も交えながら、「スナック基本構想」を通した参加者の「語り」から、京都のまちらしさ(まち柄)を掘り下げました。

大竹 莉瑚さん(大学生)
洛西エリアのまちづくりをはじめ、環境、文化など、様々な領域で、新たな関係性を編み直す活動をされています。社会の違和感に真っすぐに向き合う姿勢が素敵で、尊敬する若者の一人です。
基本構想の審議会委員との対話でも、若者からの問いかけを臆せずに投げかけておられました。
パリからオンラインで参加された杉田真理子さん(一般社団法人for Cities共同代表/都市デザイナー)
魅力的な人と営みが集まる浄土寺エリアの中心的存在と感じており、
京都市の重要プロジェクト「*** in Residence Kyoto」でもご活躍。
基本構想策定においては、審議会委員と共創チーム会議委員を兼任されるという
重責を担っていただきました。
三川 夏代さん(株式会社メルカリ 研究開発組織「R4D」
「月光観測所」共同オーナー)
「自分の定点観測」をテーマに、様々な方のゲストトークと深い対話の時間を味わえる「月光観測所」は、僕も何度も参加させていただいています。自由闊達であるが故にとりまとめに苦労した共創チーム会議の提言書を美しく整理。他のプロジェクトでも何かと助けていただいています。
モデレーターは、堤大樹さん(Eat, Play, Sleep inc.代表取締役)

詳しくは、後日アーカイブを公開しますが、個人的に感じたことは以下の通りです。

  • 私有地のような鴨川

基本構想策定過程から、京都らしさを表す場所として何度も言及されたのが、鴨川。公共空間であるはずなのに、本当に自由で、多様な過ごし方ができる空間です。でも、みんながある程度いい塩梅で秩序が守られているのは、なぜなのか。それは、倫理観が駆動しているからなのでは、という話になりました。
僕がライフワークにしている都市公園は、禁止の看板だらけで、実際マナー違反も少なくありません。違いは、その場所への愛着なのではと感じます。
僕自身の経験からも、管理しよう、コントロールしようと締め付ければ、余計に管理者と利用者は分断され、愛着が生まれない、と実感しています。
まちづくりもビジネスも同じ側面があるのではないでしょうか。

  • 人に導かれ、辿り着く

異口同音に語られていたのは、三人それぞれが根を下ろして活動しているエリアは、人を介して導かれていったということ。「巻き込まれ力」さえあれば、自分の「好き」に辿り着けるのが京都。最初は意味をなしておらずとも、出会った人のレコメンドにふれていると、自分がいるべき場所や営みにたどり着く。僕もそう感じることが多々あります。合理性とは別に、自分の直感を大事に人とつながることの大切さを再確認することができました。

  • インディペンデンスな活動から生まれる価値

京都は「怪人」が多い。それは、小商いに象徴されるとのこと。確かに、他都市と比べて、尖った個人のお店がまちのあちこちに残っていると感じます。杉田さんによると、パリも公のものだけに頼らず、それぞれがプライドを持って活動している、そこが京都と似ているとのことでした。

「銭湯文化」をつなぐ・湊三次郎さんの警鐘

湊三次郎さん(株式会社ゆとなみ社代表/銭湯活動家)

その後、会場の源湯を運営されている、ゆとなみ社の湊三次郎さんが登場。そこで告げられたのは、個人商店や「怪人」が圧倒的に減っているという現実。怪人が育つのは場所、お店がたくさんあるから。2015年以降は京都にインバウンドが増えて、これまでいた人々が地方に分散。そこでコロナが生じて、スカスカになってしまった。今の京都は、「地」ではなく、「外」が出すぎていて面白くない。
「怪人」たちが形づくってきたのが京都。そういう人たちがいなくなると京都が京都でなくなる。そんな危機感が共有されました。

「怪人」の価値

セッション終了後、湊さんと「怪人の価値」について意見交換したところ確認できたのは、怪人は「自分もそうありたい」と感じた新しい怪人を呼ぶ、ということ。
今回登壇された三人を見ていても、僕が尊敬するまちのプレイヤーをみていても、本当にそのように思います。
小さな活動に見えても、それが無数にあれば、まち全体としては、とても大きな価値になる。それは、そのまちにしか生めないものだと思います。

ちなみに、湊さんが「怪人がいることの価値」について気づきを得たのは、昨年、批評家の宇野常寛さんとトークセッションしたことがきっかけとのこと。企画した立場として、とても嬉しい言葉でした。

「怪人」が育つまちをつくるヒント

いみじくも、杉田さんがトークセッションの締めくくりに話されていたことがヒントのように感じます。
「今日の話を通して、改めて京都はおもしろいまちだと感じた。何かやりたいというときのハードルが低いのが京都。家賃を考えると、パリは無理。東京も無理。京都もそうなりつつある。でも、就職しないといけないという恐怖がなかったら、できるはず。そういうハードルが低いまちであり続けたいという想いが込められているのが、基本構想」

夢中と感動。ほんまもん。謙虚に自然と関わり続ける。支え合い。個性や価値観の尊重など。確かに、基本構想には「怪人」であることを肯定するようなキーワードが並んでいます。

近代以降、永らく右肩上がりの経済成長を続けるために、ある側面では大きなシステムが効率駆動するよう、個人は最適化、つまり個性を消して全体の歯車の一部として生きることを強いられる側面があったと思います。
人口減少局面かつ変化が激しい現代においては、それがうまくいかなくなっている。成長ではなく、洗練を追い求める社会経済が必要だと強く思います。
その上で、セッションでも議論されていたように、「怪人」が育つような街の環境をどう維持するかが問われます。

僕は、それは公園や河川、道路、例えば市営住宅など公有地の跡地活用など、公共空間を活かすことが鍵になるのではと感じています。
少なくとも、僕も公園に関わることを通じて、「怪人」の側に近づいている気がするので。
安宅和人さんの話題の著書「風の谷という希望」の中で、「サンゴ礁モデル」という比喩で社会の理想像を説明しておられます。サンゴ礁は、無数の生命が拮抗しながらも全体として豊かな生態系を保つ空間。いろんな生きものが棲める隙間があって、なぜか混ざりきらず、でも出会うことができる空間。

そんな場所は、これまでは民間の建物にたくさんありましたが、再開発に伴い減っていると僕も感じています。
他方、制約だらけだった公共空間は、柔軟に利活用できる流れが生まれており、また単なる「場所貸し」から「価値を生む場所」へ捉え直す動きも少しずつ始まっています。

いたるところで、「怪人」と出会えるまち。きっとそこから「外れ値」的に、100年、1000年続く文化が生まれるのでは。それは結果として、計り知れない社会的インパクトを創出する。そんな仮説を、これからも様々な公共空間のプロジェクトを通じて実証していきたい、「サンゴ礁」を増やしていきたい。そんな思いを強くできるイベントとなりました。

トークセッション終了後、再びスナック基本構想で語り合う時間

フォトグラファー:服部健太郎 Photo by:Kentaro Hattori


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