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難解すぎる?京都基本構想 3つの価値から読み解いてみた(前編)

2025年12月、京都市会において全会一致で議決された京都基本構想。「こういう京都であってほしい」、「こういう京都であり続けたい」という理想を分かち合うために、2万件を超える幅広い方々から寄せられた御意見や若者世代が中心となった未来共創チーム会議の議論等をもとに、総合計画審議会において審議いただくなど、本当にたくさんの方の思いを紡いで策定したものです。
2050年の未来を見据えた内容となっていますが、100年先、1000年先も、この価値を将来に伝え遺したいとの願いが込められています。

僕は、事務局側の人間として、「未来共創チーム」や若手市職員で構成する「京都の未来を紡ぐチーム」、リアル・オンラインでの対話の企画・運営に携わりました。
(以下は、そのアーカイブです)

関わっていただいた本当にたくさんの方々の心意気に応えたいし、市職員として、京都のまちとひとが大好きな一人として、多くの方に京都基本構想をお読みいただき、ともに未来に残すに値する京都のまちづくりを進めていきたい、との思いから、記事にしようと考えました。
難解な内容が多いため、以下の通り、前編と後編に分けたいと思います。

  • 前編 基本構想策定経緯や3つの価値観の独自解釈、今後の動き

  • 後編 3つの価値観の具現化につながると信じて取り組む自分の事例紹介

※具体的な内容から理解されたい方は、後編をお読みいただくことをお勧めいたします。

1.京都基本構想とは

従来は基本構想と基本計画が別々につくられていた

今後の長期的な京都の在り方を示す、市政の羅針盤のようなものです。
京都市では、文化による世界平和の実現を希求した「世界文化自由都市宣言」をあらゆる政策の最上位の都市理念と位置付け、この理念の下に京都市基本構想(計画期間:25年)と京都市基本計画(計画期間:5~10年間)策定し、市政を運営してきました。
これらの計画が2025年末に終了するため、新たに「京都基本構想」を策定することになりました。

全文及び市公式の解説は、以下のリンクからご覧いただけます。

次に、京都市の最高理念である、「世界文化自由都市宣言」についてご紹介します。

2.世界文化自由都市宣言

「都市は、理想を必要とする」から始まる短い文章ですが、これからの社会経済を考えるうえで、とても大切な内容が詰まっていると感じています。
特徴的なことは、京都のまちのことだけではなく、世界平和に貢献することを考えている点、そして過去の栄光だけに囚われずに、また孤立することなく交わりながら、優れた文化を創造し続ける永久に新しい文化都市でなければならないとしている点です。

ビジネスシーンにおいても、パーパス経営(自社の社会的な存在意義に従って経営すること)やCSV(社会的価値創造)が重視される潮流になっていますが、自治体として、1978年にこのようなstatementを発表しているのは本当にすごいなと感じます。

分断社会に対する危機感が世界的に広まっていると感じていますが、文化には、それを乗り越えるカギになる。文化の都である京都が果たす役割は大きい、そんな思いを抱くことができます。そして、単なる国際交流ではなく、新しい価値創出のために文化交流を行うことがポイントなのかなとも思います。

個人的にも、市職員として迷いがあるときは何度も読み直したりしていました。

3.なぜ、こんなに抽象的かつ難しいの?

以下は、前回の「京都市基本構想」です。読み比べていただければ分かりますが、今回策定した「京都基本構想」は、かなり難解なものになっています。

審議会での議論やパブリックコメント、市会においても、「内容が難しい」
「抽象的で理解しにくい」との指摘がありましたが、敢えてこの内容にこだわりました。その理由について解説します。

  • 都市の理想について掘り下げたい

今回、基本構想と基本計画を一つにまとめたことになります。多くの自治体では、計画性を重視したものとなっていますが、京都市では逆に理念を重視するという選択をしました。
もちろん、計画的に市政を進めることはとても重要なことです。一方で、これだけ変化が速く、激しい時代においては、10年先のことなんて予測することは困難です。
ならば、計画性よりも、これまで1200年以上もの長い歳月をかけて、このまちでくらす人々が、日々の営みの中で、大切に育み、受け継いでいた京都の価値についてとことん掘り下げよう。それらは、時代が劇的に変化しようとも、京都がめざすべきまちの姿を示してくれるはず。

  • まち柄を大切にしたい

「まちの名前を伏せたとしても、京都らしさがにじみ出る構想にしたい」
これが、審議会や共創チームでの議論を重ねる中ででの共通認識となりました。
この手の総合的な計画や構想は、どうしても総花的なものとなり、「安心安全」「快適」「にぎわい」「活性化」「多様性」といったスローガンが盛り込まれがちです。結果、そのまちらしさとは何なのか、先人たちは何を大切にし、未来に何を残すべきなのか、人の顔が見えないものになってしまうことが懸念されます。
人に「人柄」があるように、まちにも「まち柄」がある。それらは有名無名を問わず、先人たちの営みの中で蓄積されてきたもの。そういった営みの風景を想像できるような内容であることが大切だと思います。

  • 解釈を読み手に委ねたい

文化人、起業家、リサーチャー、学生、市職員など多様なメンバーで構成された未来共創チーム

自ら考え、行動していくためには、多様な価値観を認め合い、それを受け止める「余白」がビジョンから感じられると良いのではないか。

「未来共創チーム」がとりまとめた提言書に盛り込まれた内容の一つです。
個人的にも、今は「個」を大切にする時代だと感じています。「タイパ」「コスパ」に代表されるような合理的な生き方、偏差値教育やエビデンスに偏った社会は、時に息苦しさが感じられます。
失敗を許されない選択肢を迫られ、結果、均質的な生き方、社会となってしまう。これでは、大きな変化が生まれたとき、多くの人々は適応に苦しむことになるのではと危惧しています。
そのため、一人ひとりが自分が大事だと思う「軸」をもって生きつつ、その根底で互いをつなぐ拠り所として、京都基本構想が機能すれば、完全なカオスではなく、先人たちが大切にした価値を時代に合わせてうまく取り入れながら、まさに「永久に新しい文化都市」であり続けられるのではないか。
そのためにも、敢えて解釈が多様にできる抽象的な内容とすることに意味があると感じています。

4.序文で示す3つの価値を言い換えると…

そんな思想の下でつくられた京都基本構想では、序文において、京都が大切にしてきた3つの価値を示しています。

わたしたち京都市民は、京都市が、 わたしたちと世界中のあらゆる人々にとって、 歴史と文化を介して人間性を恢復(かいふく)できるまち、 自然への畏敬と感謝の念を抱けるまち、そして、自他の生をともに肯定し尊重し合えるまちであり続けるために、不断の努力を重ねていく。

京都基本構想「序文」の冒頭のstatement

僕は、この3つの価値はすなはち、「人文知」「自然資本」「社会関係資本」のことだと解釈しています。
この手の行政文書では、通常「経済の活性化」といった言葉が強調されることが多いです。実際、そういった文言が盛り込まれていないことに対する批判もありました。
ですが、僕は、「人文知」「自然資本」「社会関係資本」が豊かなまちは、経済合理性だけに偏らない独自の価値を創出し、結果として経済的な豊かさも伴ってくると確信しています。

後編では、そう信じて自分が取り組んでいるプロジェクトの事例も含めて、序文の残りの内容についてもご紹介したいと思います。

5.目指すまちの姿

基本構想第四章において、3つの価値に紐づく形で、9つのまちの将来像を示しています。以下は、京都市公式の解説内容になっています。

これに基づき、今後京都市は各種政策を具現化していくことになります。
こちらについても、ぜひ本文をお読みいただきたいところですが、抽象的な内容が多く、具体的なイメージがつかみにくいかもしれませんね。
少し乱暴ですが、総論としていえることは、短期的な合理性を追求するのではなく、長期的な視点に立ってまちづくりをしよう、ということを重視していると思います。

例えば、「夢中」と「感動」に溢れ、学び続けられるまちは、価値が定まっておらずとも、インプットを大事にしようという解釈ができます。
また、謙虚に自然と関わり続けることは、ビジネスシーンおいてはコストと捉えられる場合が多いですが、欧米では生物多様性に配慮したビジネスでないと信用が集まらない動きが加速しています。長期的には自然との共生を前提にビジネスを考えなければ立ち行かなるなることでしょう。
ひとりひとりの個性や価値観を尊重し合えることも、組織運営の視点ではある意味で非合理的なものかもしれません。ですが、これができないと大きな変革が起きた時、その組織は適応できる挙動が取れる選択肢が少なくなるかもしれません。

上記の例示も抽象的なので、伝わりにくいかもしれませんね。。。
後で説明していますが、基本構想策定の事務局としては、今後新しく立ち上げるプロジェクトを通じて、皆さんの解像度を高めていければと考えています。

6.未来への問いかけ

京都を生きるわたしたちもまた、現在そして未来において、数多の課題と向き合っていくこととなる。利便性や快適性を追求する技術革新が人間同士の生身のつながりを収奪あるいは再定義していく中で、両者の均衡をどう見定め、どう実現していくのか。人口動態の変化を見据えて、どのように共同体や産業のあり方を再設計し、また、どのように創発を促進していくのか。観光客が増加を続けていく中で、わたしたちの生活や生業と観光産業をどのように調和させ、伝統的な町並みや商いに支えられているまちの魅力や活力の向上につなげていくのか。少子高齢化をはじめとする社会的要因で支援・ケアを必要とする人が増え続けつつも支援やケアを担う人材が減少していく見込みであるところ、どのように誰ひとり取り残さないまちを築いていくのか。 わたしたちの日々の営みは、このまちの歴史と文化を体現し継承していくという責任を果たせているのか。政策や市民活動が、直近の時勢や目先の課題にのみ囚われたものでなく、このまちが守り育んできた価値観や思想に立脚できているか。わたしたちの京都が、このまちの千年の歴史に対して、ひいては、これから千年先の未来に対して、胸を張れるものであるか。

京都基本構想第5章 未来への問いかけ

京都基本構想は、終章となる第5章において、この手の行政文書では異例となる「問い」を読み手に投げかけています。
これも、「未来共創チーム」による以下の提言を踏まえたものになっています。

京都は、人が有機的に結びつきをつくりだしてきたまち。だからこそ、今の 課題とその解決方法に対する全員の合意が取りにくくなっている時代において、 計画という「ゴール」をデザインするのではなく、どうすれば多様な主体が動き出せるかという「スタート」をデザインすることが、重要なのではないか。

これからの25年、 京都のまちづくりにあたって 大切にしたい思想・価値観(抜粋)

短期的に市場から評価されること、コミュニティから承認されることではなく、長期的な価値を希求するために大切な判断軸となる問いとなっています。
京都が京都らしくあるために、市政の方向性に疑問を感じることがあれば、ぜひ、この問いを僕たち市職員に投げかけてみてください(笑)

7.今後の展開

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
この記事を読んでも、本文を読み進めるのは中々しんどいのではと感じます。そもそも、この記事にたどり着いた方は、京都のまちのことを考えておられる方や、社会の今後の在り方についてモヤモヤしておられる方だと思います。大半の方は、そもそも基本構想の存在すら知らないでしょう。

そのため、今年から、基本構想を広めるために、「未来共創チーム」や「京都の未来を紡ぐチーム」、そして民間の伴走支援チームと一緒に、語り部をふやしていくプロジェクトを立ち上げます。既に、内部で活発な議論が始まっており、個人的にもワクワクしているところです。

このプロジェクトを通じて、基本構想を体現する人や場所や営みをテーマにしたイベントやワークショップを開催し、実際に基本構想の話を聞いたり、世界観を体験することで基本構想を読むきっかけをつくっていきたいと思います。
詳細については、また別の機会にご案内いたします。

後編では、基本構想の世界観を知ることができる内容になると思います。お読みいただければ嬉しいです。

https://www.city.kyoto.lg.jp/sogo/cmsfiles/contents/0000343/343316/02.pdf

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