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【第103回】ビジネス書との出会い:すぐに答えを教えるな。たった7つの質問が、チームを劇的に変える。『質問力で人を動かす』

この**【ビジネス書との出会い】**シリーズでは、私が出会い、人生やビジネスの視点を変えるきっかけとなったビジネス書を、毎回1冊ずつレビュー形式でご紹介していきます。


書籍と著者

本日ご紹介するのは、コーチング・コンサルティング会社「ボックス・オブ・クレヨンズ」の創設者マイケル・バンゲイ・スタニエ氏による**『1万人のマネジャーを指導したコーチングのプロが教える 質問力で人を動かす』**(原題:The Coaching Habit: Say Less, Ask More & Change the Way You Lead Forever)です。

  • どんな本か: 「忙しくてコーチングなんてする暇がない」と嘆くマネジャーへ向けた、1回10分以内で終わる「7つのキラークエスチョン」を伝授する超・実践的コーチングの教科書。

  • 著者の権威性: 世界中の1万人以上のマネジャーにコーチングスキルを指導してきたプロフェッショナルであり、本書は世界中でミリオンセラーを記録しました。

  • 以前紹介した本との関連: 本連載の【第84回】で紹介した『アドバイスしてはいけない』の著者の原点にして、世界的な大ブレイクを果たした前作にあたります。


導入:「教えたがり」の罠から抜け出せ

「部下が自分で考えて動いてくれない」 「いつも自分ばかりが忙しく、火消しに追われている」

もしあなたがそう感じているなら、それはあなたの能力が足りないからではありません。あなたが優秀すぎて、「すぐに答えを教えてしまっているから」です。

著者はこう断言します。 「少ししか話さず、多くを問いかけよ(Say Less, Ask More)。そして、あなたのリーダーとしてのあり方を永遠に変えよ」

私たちは部下から相談されると、つい自分の経験から「こうすればいい」とアドバイスをしてしまいます(著者はこれを「アドバイス・モンスター」と呼びます)。しかし、答えを与え続ける限り、部下の自律性は育たず、あなたは永遠に「解決係」のままです。 本書は、その悪循環を断ち切るための「質問の習慣化(Coaching Habit)」の作り方を教えてくれます。


本書の核:マネジャーを救う「魔法の質問」

本書が提唱する「7つの質問」の中から、特に強力な3つを厳選して解説します。

  1. AWEの質問:「他には?(And What Else?)」 著者が「世界最高のコーチング質問」と呼ぶのがこれです。最初の答えが「唯一の答え」であることは稀です。部下が何かを答えたあと、すかさず「他には?」と掘り下げることで、アドバイス・モンスターを黙らせ、本当の課題をあぶり出すことができます。

  2. フォーカスの質問:「あなたにとって、ここでの本当の課題は何?」 人は往々にして、「最初に目についた問題」や「他人の問題」を解決しようとします。しかし、本当に向き合うべきは「その人自身にとっての壁」です。主語を「あなた」に向けることで、部下自身に当事者意識を持たせます。

  3. 怠け者の質問:「私にどんな手助けができる?」 部下が困っていると、マネジャーはつい「私がやっておこう」と救済者(レスキュー)になりがちです。しかし、それでは部下の成長機会を奪います。「何を手伝えばいい?」と尋ねることで、相手に要求を明確にさせ、自分が背負いすぎるのを防ぐ「良い怠け者」になれるのです。


現代ビジネスへの応用 / 実践:トリガーを書き換える

では、私たちは明日からどうすればいいのでしょうか?

  • 「アドバイス」から「質問」へ習慣を上書きする: 行動を定着させるには「トリガー(引き金)」が必要です。部下から「〇〇の件、どうしましょう?」と相談された瞬間をトリガーにしてください。すぐに解決策を口にするのではなく、「君はどう思う?」「まずは、今考えていることを教えてもらえるかな?」と返すことをマイルールに設定しましょう。

  • 1on1の冒頭を変える: 会議室に入って「進捗はどう?」と聞くのをやめます。代わりに、本書のキックスタートの質問である「いま、何について考えている?」から始めましょう。それだけで、会議の主導権を部下に渡すことができます。


まとめ:コーチングは「イベント」ではない

コーチングとは、特別な資格を持った人が、月に1回1時間かけて行う「重たいイベント」ではありません。 日常の立ち話や、Slackでのやり取りの中で、「たった10分、相手に考えさせる時間を作る」という日々の小さな習慣(Habit)なのです。

魔法はありませんが、この法則を知っているだけで、世界の見え方が変わるはずです。 教えたい衝動をグッと飲み込み、明日から「他には?」と問いかけることから始めてみてください。あなたのチームは、必ず自律的に動き出します。


▼ 合わせて読みたい(過去の連載より)

『質問力で人を動かす』を読んだ方には、以下の過去記事もおすすめです。

  • 【第84回】『アドバイスしてはいけない』

    • 同じ著者の続編です。本記事で触れた「アドバイス・モンスター(すぐに教えようとする衝動)」がいかに厄介で、どうすればそれを飼いならすことができるかに特化した、よりディープな心理的アプローチが学べます。

  • 【第102回】『問いかける技術』

    • エドガー・H・シャイン教授の名著。「なぜ、教える(Telling)のではなく、問う(Asking)ことがこれからの時代に必要なのか?」という根本的な哲学と理論を補完してくれます。本書の実践を支える強固な土台となる一冊です。

  • 【第89回】『マネジャーの最も大切な仕事』

    • テレサ・アマビール教授の「進捗の法則」。マネジャーの仕事は部下の「障害」を取り除くことです。本書の「怠け者の質問(どう手伝えばいい?)」は、まさに部下の小さな進捗を生み出すための最強のツールとなります。


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