相棒へ from路地裏の絵描き
晴れた日の蒼色のトーンが薄くなって
まだ冷たさが残る中にも
どこか温もりを感じる風が吹くようになった
春の空を見上げて ふと
キミの事を描いてみたくなった
俺が高校に通ってた時の
この地域にしてはやたら暑かった
ある夏の日
うちに引っ越してくる事になったばあちゃんに遺された唯一の家族として
キミは我が家にやってきた
ケージから出てきたキミは
俺を観る事もしないかのように
一目散に逃げていった
人見知りにも程があるだろ
ひどい時は
「ヴゥゥゥゥゥ゙!!」と
唸るように威嚇されたっけ
全身の毛という毛が逆立つって
本当なんだな
キミは仲良くしてくれないって覚悟した
あの時は。
その年の
例年より寒く感じた冬のある日
ソファーに腰掛けていた俺のところに
ノソノソと歩いてきたキミは
恐る恐る俺の太ももに乗っかって
その時に来てた白と青色のフリースを
前足を引っ掛けて舐め回し始めて…
正直 すごく戸惑ったし
ひょんなきっかけではあったけど
あの日からキミと俺は
一気に打ち解けていったよね
俺が社会で戦い始めてから
勝手気ままだけど癒やしてくれる
キミの存在が
どれほどの支えになったか…
ある時 仕事の疲れがピークに来てて
帰宅するなり
甘えて欲しいとねだったキミを
つい威嚇して追い払ってしまった
あの夏の日とはまるで逆の立場
立ち直れないまま
ソファーにうなだれていた俺の隣に
逃げたはずの 怖がってしまったはずのキミが
ほんの僅かだけ距離を置いて
いつもより柔らかい声で何度も俺を見て鳴く姿に
心が震えて思わず泣いてしまった
あの時はキミの真意が分からなかった部分も
あったけど
その後の「ある」出来事で
キミの心の優しさを確信出来た
俺達は間違いなく
「相棒」になっていた
その時の事は
キミと俺だけの秘密にしておく。
今 俺は
noteっていう街の路地裏で
動物とかの絵を描いてる
キミの事を描こうとは余り考えてなかったんだけどさ
もう少ししたら
ばあちゃんの息子がそっちに行く事になってね
俺も心のどこかが少し感傷的になってて
今の俺の気持ちの赴くままに
キミを描いてみる事にした
でも…
キミの「色」が出せない
何度描いても
キミにはならないんだ
描けなくて燻ってる俺の感覚に
偶然…なのかな
路地裏で仲良くしてくれてる
「モスキート」なエッセイストの
ある記事がヒントをくれた
俺はキミと一緒に過ごした
思い出という
たくさんの【色】に囚われてしまって
描く事を憚れていたのかも
そう思った
だから
白と黒の世界でキミを描いてみた

今の俺には
この姿のキミが一つの「正解」だと思ってる
ばあちゃんは
短く丸まった異型の尻尾を持つキミを
「尻尾がしっかりしてれば血統書モノ」
って言ってたけど
そのユニークな尻尾も含めて
個性のカタマリなキミが好きだ
毛づくろいがとても上手で
身だしなみに気を使っていた
キミからしてみれば この絵も
「やり直し!」
と言われてしまうかもしれないね
だから…
表現を磨いて また描くよ
もし俺が生きているうちに
キミの満足してくれるイラストが描けなかったら
そのときは
なんのはなしですか
といって謝るよ
だから もう少しだけ
長い目で観ててくれよ。
今でもキミを相棒と思ってる 路地裏の絵描きより
※ヘッダー画像お借りしました。
