宮崎県沿岸部のムカデノリについて
宮崎県の豊かな海が育む食文化。前回の「まがりもち」に続き、今回は日南海岸を中心に愛されている、さらにディープな海藻文化、**「ムカデノリ」**についてご紹介します。
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「ムカデ」のような見た目? その正体とは
宮崎県で**「ムカデノリ」と呼ばれている海藻は、学名をトゲキリンサイ**(Eucheuma serra)といいます。
そのユニークな名前の由来は、磯に生えている時の姿が、節々からトゲのような枝を出し、まるで「ムカデ」のように見えることからきています。生の状態では濃い赤褐色(または濃紫色)をしており、見た目は少し驚くかもしれませんが、宮崎では古くから親しまれている海の幸です。
ムカデノリの分布と生育環境
ムカデノリ(トゲキリンサイ)は、日本の各地で見られ、主に潮間帯(潮の満ち引きがある場所)の岩の上に生育しています。
宮崎県内では、北部から南部まで広く見られますが、特に日南市の鵜戸、宮浦、油津といった南部沿岸の岩礁地帯に多く分布しています。梅雨時期に大きく成長するのが特徴で、5月〜7月頃に最盛期を迎えます。
伝統の保存食「ムカデノリの味噌漬け」
この海藻を語る上で欠かせないのが、日南地方のソウルフード**「ムカデノリの味噌漬け」**です。
驚きの手間暇:作り方のプロセス
1. 洗浄と天日干し: 採ってきた海藻をきれいに洗い、何度も天日干しを繰り返します。この過程を4〜10回ほど繰り返すうちに、元の赤褐色から薄いピンク色へと変化していきます。
2. 煮溶かす: 乾燥させた海藻を水で戻し、火にかけてドロドロになるまで煮詰めます。
3. 固める: 型に流し込んで冷やすと、寒天のような弾力のあるゼリー状になります。
4. 味噌漬け: これを適当な大きさに切り、味噌に数日間漬け込んで完成です。
食感と文化
完成した味噌漬けは、**「プルップルとした独特の食感」と、「磯の香りと味噌の風味」**が絶妙にマッチした味わいです。
• 食べる地域: 主に**日南市(飫肥、南郷など)**で盛んに作られており、お盆に神様へ供える行事食としても大切にされています。
• 中部地域(青島など): 中部でも食べられますが、南部ほど大量には採れず、自分たちで食べる分だけを加工することが多いようです。
宮崎県で食用とされる海藻たち
ムカデノリ以外にも、宮崎県沿岸では非常に多様な海藻が食べられています。
• 北部(北浦町など): ヒジキ、ヒトエグサ(アーサ)、トリノアシ、テングサ、フノリ、トサカノリなど20種類以上が利用されています。ムカデノリも酢の物や味噌和えで楽しまれます。
• 中部(宮崎市): **マガリ(カギイバラノリ)**が有名で、ムカデノリと同様に煮溶かして「まがりもち」として食べられます。
• 南部(日南市・南郷町): ムカデノリの味噌漬けが代表格です。他にもハギノリを砂糖醤油で煮たり、マツノリを吸い物に入れたりして食べられています。
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宮崎のムカデノリは、近年の環境変化によって採れる量が減っており、今では非常に貴重な珍味となっています。
見た目は少し個性的ですが、一口食べればそのプルプルとした食感と深い味わいに、先人たちの知恵と海の豊かさを感じることができるはずです。日南を訪れた際は、ぜひこの「エメラルドの宝石」ならぬ「ピンクの伝統食」を探してみてください。
