宮崎県沿岸部のまがりもちについて
※下記の原稿はnotebookmlで作成しています。
宮崎県の豊かな海岸線には、その土地ならではのユニークな食文化が根付いています。今回は、特に中部沿岸部で春の訪れを告げる珍味、**「まがりもち」とその原料である海藻「マガリ」**についてご紹介します。
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「マガリ」とは何か?
宮崎県で**「マガリ」と呼ばれている海藻の正体は、紅藻類に属するカギイバラノリ**(学名:Hypnea japonica)です。
その名前の由来は非常に分かりやすく、枝の先が「カギ」のようにくるんと曲がっているという特徴的な形態からきています,。宮崎県内でも地域によって呼び名や食べ方が微妙に異なりますが、その独特の形状は共通のシンボルとなっています。
カギイバラノリの分布と生育環境
カギイバラノリは、日本の広い範囲に分布しています。
• 主な分布域: 太平洋沿岸の中部・南部、瀬戸内海、九州、日本海南部、南西諸島。
• 生育環境: 低潮線付近から漸深帯(潮が引いたときでも水に浸かっている場所)の岩の上に生育したり、ホンダワラ類などの他の海藻の体に絡みついたりして育ちます。
宮崎県沿岸は、冬は温暖で夏は高温多湿な黒潮の影響を強く受ける気候であり、こうした環境が多様な海藻の生育を支えています,。
伝統の味「まがりもち」を食べる地域
カギイバラノリを加工した**「まがりもち」は、主に宮崎市の中部沿岸部である青島や内海(うちうみ)**という限られた地域で作られ、親しまれています,。
まがりもちの作り方と特徴
1. 採取と洗浄: 2月〜4月頃に採取し、きれいに洗って選別します,。
2. 煮溶かす: 火にかけて長時間煮ると、海藻の形が崩れて溶け出し、赤褐色だった色が鮮やかな緑色の煮汁へと変化します,,。
3. 固める: その煮汁を型に流し込んで冷やすと、寒天やコンニャクのような弾力のある状態に固まります,。これを**「まがりもち」**と呼びます。
地域による食べ方の違い
• 中部地域(青島・内海): 豆腐のような形に固めたものを切り分け、酢味噌で食べるのが一般的です,。
• 南部地域(南郷町など): 南部では「まがりもち」として固めるよりも、熱湯をかけて酢醤油で食べたり、酢味噌で和えたりして食べられています,。
宮崎県で食用とされる多様な海藻類
宮崎県は南北に長く、それぞれの地域で採れる海藻の種類や利用方法が非常に豊かです,。
• 北部地域(北浦町など): ヒジキ、ヒトエグサ(アーサ)、トリノアシ、トサカノリ、ユカリ、テングサ、フノリ、ムカデノリなど非常に多くの種類が利用されています,,。
• 中部地域(宮崎市近辺): 前述の**マガリ(カギイバラノリ)**のほか、トサカノリ、ムカデノリ、ワカメ、ミルなどが食卓に並びます,。
• 南部地域(日南市・南郷町): ムカデノリの味噌漬けはこの地域独特の保存食として有名です,。その他、ハギノリ、マツノリなども食べられています,。
特にムカデノリは、宮崎地域での通称(学名はトゲキリンサイ)であり、マガリと同様に煮溶かして固めて食べられる、宮崎を代表するローカルフードの一つです,。
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宮崎の海岸を訪れた際は、磯の香りと共に、地元の人々が大切に守り続けてきた「まがりもち」のような伝統的な海藻文化に触れてみてはいかがでしょうか。春の限られた時期にしか味わえないエメラルド色の輝きは、まさに海の恵みそのものです。
【参考文献】
李善愛
磯資源の利用と食文化に関する事例研究(1):日向灘沿岸を中心に
宮崎公立大学人文学部紀要 8巻1号
