狂言にコントの真髄を見た|「早稲田狂言の夕べ」初鑑賞
小中高生のころ、国語の教科書に載っていた「狂言」「能」のページが苦手だった。
セリフを読んでても言葉が古いから何言ってんのかわからんし、意味は理解できても「何が面白いの?」って感じだった。
しかし、先日、人生で初めて狂言を観て、衝撃を受けた。
狂言ってコントじゃん!!
現代人でも普通に笑って楽しめるんだ!!!!
そう、狂言は日本の「お笑い」の原点であり、平安時代〜室町時代に発展した「喜劇」、つまりコントだ。
能と狂言はあわせて「能楽」と呼ばれるジャンルで、能は比較的シリアスな内容も多いのに対し、狂言は庶民が笑って楽しめる大衆娯楽。
私は能はまだ観たことがないが、狂言の方が敷居が低い印象だ。
この記事では、人生で初めて狂言を観劇した私が、素人目線でその魅力を語っていく。
狂言を観ようと思った理由

今回、私が観劇したのは「第17回 早稲田 狂言の夕べ」。
早稲田の学生や卒業生が無料で招待され、野村万作氏や萬斎氏をはじめ、狂言の大家たちが大隈講堂で演舞する。野村万作氏が早稲田卒ということで、毎年1回開催されているようだ。
私がこのイベントに出向いてみようと思った理由は以下の4点。
①文化大好き文化構想ガールなので、教養として狂言を観てみたい。
②幼い頃「にほんごであそぼ」でよく見ていた野村萬斎を生で見たい。
③普段はあまり入らない大隈講堂に入りたい。
④無料で人間国宝(野村万作)見れるんだから行かない方が損。
以上だ。
②〜④はただのミーハーである。そしてケチ。
ただ、私が思うに、人たるもの、ミーハーであるべきである。
「え、野村萬斎? 名前聞いたことある! 見てみたい!」だけで狂言を観にいくフットワークの軽さを持つべきだ。
プログラム
プログラムは以下のように構成されていた。
・解説 by野村萬斎
・小舞『景清 後』
・休憩15分
・狂言『木六駄』
全部で1時間半(休憩含む)。
普段から演劇やクラシックコンサートに行っている私にとっては、正直に言うと短くて物足りないくらいだった。
しかし、私は小学生の頃、歌舞伎に連れて行かれ、かなり長くて退屈した記憶がある。
初心者にとっては、今回のような時間設定がちょうどいいのかもしれない。
野村萬斎氏、かっこいい
開演時間になると、ステージ上に作られた能舞台の上に野村萬斎氏が登場。
私の第一印象は以下。
姿勢いい!!!!
演舞に携わる方なのだから当たり前である。
が、それにしても登場時の背中がピンと伸びた姿があまりにもかっこよかった。
そう、かっこいいのだ。
御年60歳。
60歳!?!?
大人の落ち着いた魅力を備えていらっしゃる。よい老け方だ(まじで何様?)。
60代になってもかっこいいのはB'zの稲葉浩志(61歳)だけではないことを知った。
そして、声が良い。
低くて抑揚のある声。
「にほんごであそぼ」で聞いていた声だ。
この人の台詞回しや謡(うたい)を早く聴きたい!と思う。
解説の内容は、今回演じられる2演目について。
ユーモアを交えた内容で、クスッと笑いながら聞けた。
観客の中には、私のように初めて狂言を観る人も少なくないようだった。
あらすじを知っているといないとでは観劇の満足度が格段に違うため、こうした解説パートがあるのはありがたい。
小舞『景清 後』、思ったより短い
萬斎氏による解説の後は小舞。
源平合戦の1シーンを景清が1人2役で謡い語る。
演目時間はわずか数分。
内藤連氏の声がよく響いて、とても良かった。
後ろで数人が声を揃えて謡う「地謡(じうたい)」も相まって、迫力がある。
あっという間に終わるので、萬斎氏の解説がなければ「はにゃ? 何が起きた??」で終わっていたかもしれない。解説に感謝。
狂言『木六駄』まじでおもろい
休憩を挟み、今回のメインである『木六駄(きろくだ)』へ。
太郎冠者(たろうかじゃ、召使い)が主人に頼まれ、木六駄と炭六駄と酒を、都にいる伯父に届ける話だ。
ここでの六駄とは、牛6頭に積んだ量のこと。6頭の牛に積んだ木と、6頭の牛に積んだ炭を届けるため、12頭の牛を連れて行かなければいけないということだ。
この話をかなり現代語寄りにしてざっくりまとめるとこんな感じ↓(かなり適当なので間違いがあったらごめんなさい)
主人「太郎冠者、伯父さんにお歳暮届けてよ」
太郎冠者「大雪だし行きたくないんすけど」
主人「まあまあ、行ってくれたら防寒用の綿と足袋あげるからさ」
太郎冠者「しゃあない、行くか」
牛12頭に荷物を乗せて出発する太郎冠者。
大雪の山中で12頭もの牛を統率するのはひと苦労だ。
太郎冠者「茶屋に着いた。酒でも飲んであったまるか」
茶屋の主人「これはこれは」
太郎冠者「やっほー⭐︎ 酒ある?」
茶屋「あいにく切らしとりまして」
太郎冠者「そんなぁ酒だけを楽しみに来たのに」
茶屋「あんた酒持ってんじゃん、それ飲んだら?」
太郎冠者「これは主人から頼まれたやつで」
茶屋「ちょっとくらい飲んでも変わらんっしょ、水を足して薄めればなんともないって!」
太郎冠者「そっか! 飲んじゃお⭐︎」
ゴクゴクゴク。
太郎冠者「うめぇ。ちょっと飲んでみろよ、うめえから」
ゴクゴクゴク。
茶屋「うめえな。あんたももうちょっと飲むかい?」
ゴクゴクゴク。
太郎冠者「酒の肴にちょっと舞うか」
『鶉舞(うずらまい)』を舞う太郎冠者。
茶屋「舞めっちゃええやん。もっと飲もうや」
ゴクゴクゴク。ゴクゴクゴクゴク。
太郎冠者「あれぇ? お酒なくなっちゃったけど、まいっか⭐︎」
太郎冠者「こんなとこいると寒いっしょ? 木あるから一駄やるわ」
茶屋「ありがと⭐︎」
太郎冠者「いい酒だったな〜。あ、都についた」
太郎冠者「主人からの歳暮でーす。これ、手紙ね」
伯父「手紙に木六駄って書いてあるけどなんか足りなくない?」
太郎冠者「実は自分、改名してまして。木六駄って自分の名前っす」
伯父「なわけあるかい。酒はどうしたよ」
太郎冠者「……飲んじゃった⭐︎」
伯父「コラー」
太郎冠者「わー」
以上だ。
主役の太郎冠者を演じたのは、人間国宝・野村万作氏。
なんと94歳だという。
加齢を感じさせず、むしろその演技力に圧倒される。
太郎冠者のお茶目で愛すべき人柄を見事に表現していた。
12頭の牛を率いる場面では、舞台上にいないはずの牛たちが見えたような気がした。
鶉舞(うずらまい)の場面では、泥酔しながら舞う演技が絶妙。
人間国宝の持つ力を見せつけられた。
また、野村万作氏が太郎冠者、野村萬斎氏が茶屋の主人、その息子である野村裕基氏が太郎冠者の主人を演じていた。親子三代ってすごい。親と子、祖父と孫だからこその息の合い方。
特に太郎冠者と茶屋の掛け合いは最高だった。
日本文化、やるじゃん
能楽は若者に不人気で将来が危ういと世間が言うので、もっとつまらないものかと思っていた。
でも実際見てみたら、めっちゃおもろいコント。
一度その世界に足を踏み入れれば、「東京03のコントいいよね〜」のノリで「野村万作と萬斎の狂言、最高だよね」「私も見てみたい〜」と言い合えるのではなかろうか。
私も狂言だけでなく能も観てみようと思う。
ぜひ、次のお休みはお近くの能楽堂へ。
Xやってます♪
