尾盛駅に行くためだけに山を越えた日|道路も電波もない秘境駅へ
静かな稜線を歩く時間が好きです。
今回の目的地は山頂ではありません。
向かったのは、南アルプスの麓を走る井川線の秘境駅 尾盛駅。
道路がなく、携帯電話の電波も届かず、車で行くこともできない駅です。
そんな駅へ、千頭駅から栗代山を越えて歩いて向かいました。
山を歩く理由は人それぞれですが、この日は少し変わった目的でした。
「尾盛駅で電車を待ってみたい」
ただ、それだけです。
尾盛駅とは
尾盛駅は、大井川鐵道井川線にある小さな無人駅です。
駅の周囲に集落はありません。
道路もありません。
駅へ行くには、
井川線で降りる
登山道を歩く
ほぼこの二択です。
そのため「日本有数の秘境駅」として知られています。
今回歩いたルート
千頭駅から出発し、
鷹取山→栗代山→大小屋戸山→尾盛駅
という縦走ルートを歩きました。
距離約19km。
累積標高は約2,000m。
尾盛駅へ行くだけにしては、なかなか本格的です。

山を越えて向かう秘境駅
早朝の千頭駅を出発。
桜が残る大井川沿いを歩きながら山へ向かいます。
しばらくは林道歩きですが、尾根に取り付くと一気に急登になりました。
鉄塔巡視路は整備されていますが、途中から尾根を外れる場所もあります。
地図を確認しながら進む必要がありました。
春の花が迎えてくれた
この時期の奥大井は花が多い季節です。
ツツジが咲き始め、
イワカガミもあちこちに咲いていました。
歩きながら何度も足を止めます。
急登は大変ですが、こういう時間があるから山歩きはやめられません。

栗代山は想像以上の急登だった
栗代山の山頂直下。
見上げるとテープが真上に続いていました。
「本当にここを登るの?」
そう思うくらいの急斜面。
実際に登ってみると、なかなかの手強さでした。
山頂に着いた時は思わず笑ってしまうほどです。
栗代山はどちらから登っても急登ですが、この日は改めてその厳しさを実感しました。
尾盛駅への下りが本当の核心部
栗代山を越えれば終わり。
そう思っていました。
しかし本当に難しかったのは、その先でした。
尾盛駅へ下るルートには標識があります。
ところが踏み跡は非常に薄く、場所によっては道が消えかけています。

最後のトラバース区間では、
崩落箇所あり
赤テープあり
踏み跡ほぼなし
という状態でした。
線路が見えた時は本当にほっとしました。

線路が見えた瞬間
樹林帯を抜けると、目の前に井川線の線路が現れました。
あとは線路沿いを少し歩くだけ。
山頂に着いた時とはまた違う達成感があります。
そして現れた尾盛駅。

本当に何もない駅だった
駅に着いてまず感じたのは静けさでした。
車の音は聞こえません。
人の気配もありません。
聞こえるのは風の音と鳥の声だけ。
ベンチに座って電車を待ちます。
急ぐ理由もありません。
スマートフォンを見る必要もありません。
そもそも電波がありません。
だからこそ、不思議と落ち着きました。

尾盛駅は目的地になる
普通の駅は移動のために利用します。
でも尾盛駅は少し違います。
駅そのものが目的地です。
山を越えてたどり着き、
静かなホームで電車を待つ。
それだけなのに強く記憶に残っています。
山頂からの絶景も好きですが、
こういう少し変わった場所を目指す山旅も面白いものです。

おわりに
尾盛駅には、
コンビニもありません。
道路もありません。
携帯電話の電波もありません。
でも、そこには今ではなかなか出会えない静かな時間がありました。
もし奥大井の山を歩く機会があれば、
栗代山や大小屋戸山と組み合わせて訪れてみるのもおすすめです。
きっと「駅へ行くために山を越える」という少し不思議な体験ができます。

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