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激動の時代、物事の本質を鋭く見通せる心「透察力」を持て #05

高度経済成長期には、モノ不足からもたされる「作れば売れる」時代が続きました。
そして、国際的にも日本の製造業の高い技術力が評価され「良いモノを作れば売れる」時代に遷りました。
しかしながら、現代では技術力だけに頼ったビジネスモデルでは、既に限界を迎えていることは明らかです。
いつまでも「良いモノを作れば売れる」的な思考に依存していては、この限界から脱却はできません。

これからの時代は、「良いモノを作る力」から、「必要とされる価値を創る力」へと転換が求められています。

経済成長期の工業地帯

■ 不確実な時代に求められる経営とは

現代の経営環境は、VUCA(ブーカ)で例えられるように、予測のできない大きな変化をもたらす環境にあります。
さらに2020年、世界規模で発生した新型コロナウイルス感染症は、このVUCA環境の想定を超える出来事となりました。
また、企業活動に限らず、地球環境や社会課題への対応も求められる時代になっています。
SDGsへの取り組みが象徴するように、企業には利益だけではなく、社会との共存や持続可能性への責任も問われています。

このような環境では、過去の成功体験だけに依存することはできません。

必要なのは、現在の状況を正しく理解し、未来に起こり得る変化を想定しながら、自ら進む方向を描く力です。
環境変化にただ対応するだけではなく、自ら新しい価値を生み出し、未来の変化を創り出していく姿勢が求められています。

VUCAとは―

■ 成果を出し続けることの難しさ

現代では、かつて時代の寵児として称賛された企業経営者、政治家、有名人でさえ、予想もしなかった失敗や不祥事によって、短期間で信用を失うことがあります。

一時的に注目され、成功しているように見えることと、継続的に価値を生み出し続けることは別のものです。
もちろん、一時的な成功にも実力や努力は必要です。
しかし、長期的な成果を生み出すためには、環境変化を認識し、自ら変わり続ける力が必要になります。

本当に難しいのは、成功することではありません。
成功を維持し、さらに成長し続けることなのです。

■ 現状維持は衰退と同じ

福沢諭吉氏は、次のような言葉を残しています。

「進まざる者は必ず退き、退かざる者は必ず進む。」

人には、現状を現状のまま維持したいと思う無意識の欲求があるといわれます。
しかし、現実の社会は常に変化しています。
何もしないことは、決して現状維持ではありません。

周囲が変化している以上、変わらないことは相対的な後退を意味します。
だからこそ、現状に満足したり妥協したりすることなく、新しい挑戦を続けることが重要になります。

もちろん、挑戦すれば必ず成功するわけではありません。
しかし、重要なのは失敗しないことではありません。
失敗から学び、次の行動につなげることです。

成長する企業とは、失敗を避ける企業ではなく、失敗を経験として蓄積し、学習し続ける企業なのです。

■ 大きな決断より、小さな決断の積み重ね

経営者に求められるものとして、よく「決断力」が挙げられます。

以前、会社の成長を左右するものは、経営者が重要な岐路に立った時に行う「英断」なのだと思っていた時期がありました。
大胆な投資や大きな方向転換など、歴史に残るような決断こそが企業を変えるものだと考えていたのです。

しかし、実際には、そのような大きな決断の場面は頻繁に訪れるものではありません。
本当に成長する企業は、大きな決断の瞬間を待っているのではありません。

そもそも、一度の決断ですべてが解決することはありません。
また、どれほど正しい決断であっても、環境は常に変化します。
そのため日々の経営の中で、先手先手で小さな決断を積み重ねています。
そして、その選択を正解に変えるために、実行し、改善し、育て続けています。

会社の未来は、何を選んだかだけで決まるものではありません。
選んだものを、どのように育て、価値あるものへ変えていったかによって決まるのです。

決断する。 実行する。 結果を検証する。
そして、また新たな決断をする。

経営とは、この積み重ねの繰り返しなのだと思います。

■ 求められる「透察力」

実業家である松下幸之助氏は、
「自分が得意だと思っていることに溺れるな。物事の本質を鋭く透察する心を持て。」
という趣旨の言葉を残しています。

透察とは、物事の本質を見極め、将来を見通すことです。

過去の成功体験や現在の強みに頼りすぎることなく、変化の兆しを読み取る力。

そして、未来に必要とされる価値を考える力。

これこそが、これからの時代に必要な能力ではないでしょうか。

松下幸之助 氏

■ 未来の存在意義を創る

企業の存在意義は、現在の成功だけによって決まるものではありません。

現在持っている強みを活かしながら、未来に必要とされる価値をどのように創造していくか。

そのためには、経営者だけではなく、組織全体が変化を感じ取り、行動できる力が必要です。

現場から生まれる小さな気づき。
小さな改善。小さな挑戦。

それらの積み重ねが、やがて大きな成長につながります。

未来のあるべき姿(ビジョン)を描き、その姿から逆算して現在取り組むべき課題を明確にする。
そして、決断と実行を繰り返しながら、その未来へ近づいていく。

変化の時代に求められるのは、過去の成功を守る力ではありません。
未来に必要とされる存在へ、自ら変化し続ける力です。

「良いモノを作る力」は、これからも日本企業の大切な強みであり続けます。
しかし、それだけでは十分ではありません。

これから問われるのは、
何を作るべきなのか。
誰に、どのような価値を届けるべきなのか。
未来に必要とされる存在とは何なのか。

その答えを探し続ける「透察力」なのではないでしょうか。

そして最後に問われるのは、企業だけではなく、私たち自身もまた、
変化する時代の中で、未来から必要とされる存在であり続けられるのか。
ということなのだと思います。

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