組織が共有する価値観「経営理念」 #194
■ 経営理念は“飾り”ではなく、意思決定の軸
人は一人でできることには限りがあります。
だからこそ、目的を共有する人たちと組織をつくります。
企業は、その典型です。
その役割は、経営資源(ヒト・モノ・金・知識・情報)を活かして価値を生み出し、その価値を継続的に社会へ届ける活動です。
経営を一つに束ねるものは何か。
それが「経営理念」です。
経営理念とは、企業におけるセオリーの根幹です。
セオリーとは単なる定石ではありません。
企業においては、あらゆる意思決定の軸、基準となるものです。
ここが曖昧だとどうなるか。
・判断が人によって変わる
・行動に一貫性がなくなる
・評価も検証もできない
変化の激しい時代では、これは致命的です。

■ 理念は“非常時”にこそ試される
経営理念の重要性を本当の意味で認識したのは、
東日本大震災のときでした。
未曾有の混乱の中で、ある行動が強く印象に残っています。
あるテーマパークのキャストは、避難していた来場者に対して、商品であるお菓子などを躊躇なく提供しました。
また、あるパンメーカーの配送スタッフは、立ち往生した駐車場で、同じく立ち往生していた人たちに荷台にあったパンを配ったといいます。
本来であれば、どちらも売り物です。
個人の勝手な判断で配ることは、簡単なことではありません。
それでも、なぜ彼らは迷わず行動できたのか。
それは、「顧客や社会を最優先にする」という理念が、すでに組織の中で共有されていたからです。
平時には、理念がなくても何とかなります。
しかし、不測の事態では違います。
マニュアルは機能せず、上司の指示も届かない。
そのとき、最後に頼れるのが理念です。
私はこの出来事に強い衝撃を受けました。
そして形だけの経営理念ではなく、本当に意味のある経営理念をつくろうと決めました。

■ MVVではなく、あえてVMVにする理由
経営理念は一般的に、
MVV(Mission / Vision / Value)で整理されます。
• Mission:社会における使命
• Vision:実現したい未来
• Value:行動指針・価値観
ただ私は、あえて順番をVMVにしています。
まず、実現したい未来(Vision)を描く。
次に、その未来を実現するための使命(Mission)を定める。
そして、それを支える価値観(Value)を明確にする。
それは、ビジョンに共感できなければ、人は動かないからです。
そして、その行動を支え続けるのがバリューです。
強いバリューがあるからこそ、迷ったときにもブレずに判断できる。
その積み重ねが、ミッションの達成につながり、結果としてビジョンの実現につながると考えています。

■ 経営理念は、SDGsが原点
現在の経営理念は、2016年に制定しました。
それは、前年の国連総会で採決されたSDGsに感銘を受けたからです。
ビジョン
社会における存在意義を高め〝サステナブル企業〟を目指します
ミッション
現在だけでなく未来を考えた 配管の開発と供給を通して 信頼あるライフラインの構築をご提案します
バリュー
私たちは ビジョンの実現に向けて〝誠実〟に ミッション遂行に取り組みます
スローガン
知恵と勇気を持って 変化にチャレンジしよう!
当時は、まだまだ、SDGsやサステナブルが認識されておらず、社員たちも何のことが分からない状態でした。

■ 経営理念の浸透と発信
経営理念は、作ることに意味はありません。
共有されていなければ、存在しないのと同じです。
だからこそ必要なのが、理念を社内に浸透させるための取り組みです。
いわゆるインナーブランディング(インターナルブランディング)です。
また、企業とは社会の中で存在しています。
価値や意義を示せなければ、存在し続けることはできません。
だからこそ、経営理念は社外にも発信する必要があります。
結果的に顧客、取引先、株主、金融機関、地域社会。
いわゆるステークホルダーからの理解と信頼につながります。
■ 浸透させるなら「節目」を使え
心理学に「フレッシュスタート効果」という考え方があります。
人は、新しい区切りのタイミングで行動を変えやすくなります。
新年、新年度、期初、月初 ―
こうしたタイミングで理念を共有することで、浸透の効果は大きく高まります。
当社では、経営理念が形骸化しないために、日常の中で触れる機会を意図的に設けています。
例えば、
・節目ごとに理念を振り返る機会をつくる
・意思決定の場で理念に立ち返る
・評価の軸に理念を組み込む
・共有し合うための経営理念勉強会の開催
といった形で、「活かすもの」として扱うことを徹底しています。
また、現在、「(仮称)経営理念記念日」の創設を
2015年ニューヨークの国連総会てSDGsが採択された9月25日にしようと検討しております。

■ 経営者としての想い
本来であれば、経営理念に共感した上で入社するのが理想です。
しかし現実には、そこまで理解されているケースは多くありません。
だからこそ、入社後にどう共有し、どう浸透させるかが重要です。
そしてそれは、会社だけの責任ではありません。
働く一人ひとりにも関係することです。
あなたは、自社の経営理念を自分の言葉で説明できますか。
そして、迷ったとき、何を基準に判断していますか。
その答えが、これからのあなたの行動を決めます。
※この記事は、企業で働くすべての社員に向けて書いています。
特に、自分の会社で働くメンバーにこそ読んでほしい内容です。
