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新しい価値を創造し続ける「イノベーション」 #92

■ マーケティングとの違いから考える

「企業の目的は何か?」

マネジメントの分野で有名なピーター・F・ドラッカーは、次のように答えています。

企業の目的は顧客の創造である。

企業は利益を得るために存在していると考えられがちですが、ドラッカーはそれを結果にすぎないと述べています。
企業の本質的な目的は、顧客を生み出し、社会に価値を提供することです。

これは近年よく言われる「パーパス(企業の社会的存在意義)」の考え方にも通じています。

そして、この目的を実現するための機能こそがマネジメントです。

■ 企業が持つべき2つの機能

ドラッカーは、企業が持つべき機能を次の2つだと述べています。

・マーケティング
・イノベーション


極端に聞こえるかもしれませんが、ドラッカーはこの2つだけだとまで言い切っています。

マーケティングという言葉は、すでにビジネスの世界で広く浸透しています。
一方で「イノベーション」という言葉もよく耳にするようになりました。

しかし実際には、

マーケティングとイノベーションの違い

については、あまり整理されていないように感じます。

そこで今回は、両者の違いを考えるために
USP(Unique Selling Proposition)という考え方を基点に整理してみたいと思います。

■ 企業の価値は「USP」で決まる

マーケティングには「3C分析」という有名なフレームワークがあります。

3Cとは次の3つです。

・自社(Company)
・競合(Competitor)
・顧客(Customer)

企業が社会の中で存在意義を持つためには、
他社には提供できない独自の価値が必要になります。

これをコアコンピタンス(Core Competence)と呼びます。

そして、その価値を顧客に伝える形にしたものが
USP(Unique Selling Proposition)です。

つまりUSPとは、

「顧客がその会社を選ぶ理由」

と言い換えることができます。

企業は、このUSPを顧客に提案し、受け入れられたとき、初めて「顧客の創造」を実現できるのです。

■ マーケティングとイノベーションの違い

USPを基準にすると、マーケティングとイノベーションの違いは次のように整理できます。

マーケティング
既存のUSPの見せ方や切り口を変え、その価値を高めること

イノベーション
新しいUSPそのものを生み出すこと

イノベーションとは、直訳すれば「革新」や「変革」です。

企業にとってのイノベーションとは、

新しいUSPを創造すること

だと言えるでしょう。

そして、その本質は

既存の市場の固定概念を壊し、新しい顧客を生み出すこと

にあります。

■ イノベーションは「天才の発明」ではない


イノベーションという言葉を聞くと、多くの人が

・画期的な技術
・大きな発明

のようなものをイメージするかもしれません。

しかし、マーケティングの父と呼ばれるフィリップ・コトラーは、次のように述べています。

イノベーションとは、基本的に失敗のマネジメントである。

つまり、優れたアイデアを得るためには、
大量のアイデアを試す必要があるということです。

また、『アイデアのつくり方』の著者であるジェームス・W・ヤングは、

アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである

と定義しています。

つまりイノベーションとは、

ゼロから何かを生み出すことではなく、
既存の要素を新しく組み合わせること

とも言えるのです。


■ すべてのビジネスには寿命がある

製品やサービスには
プロダクトライフサイクルという考え方があります。

一般的には次の4段階です。

導入期→成長期→成熟期→衰退期

イノベーションによって生まれた商品やサービスも、マーケティングによって成長し、成熟していきます。

しかし、どれほど画期的な商品であっても、時間が経てば次第に斬新さは薄れていきます。

・競合が参入する
・模倣が生まれる
・価格競争が始まる

やがてその商品は市場において
当たり前の存在になります。

これをコモディティ化(一般化)と呼びます。

■ 一度の成功に依存することの危険


企業はイノベーションによって競争優位を築こうとします。

しかし現実には

・イノベーションは計画通りには生まれない
・再現性が高いとは言えない
・成功しても永続しない

という厳しい側面があります。

つまり、

一度の成功に依存すること自体が最大のリスク

なのです。


■ イノベーションは「プロセス」である

だからこそ企業にとって重要なのは、

イノベーションを一度起こすことではなく、
イノベーションを生み出し続けることです。

たとえ大きな成功を収めたとしても、それに依存しない。

生み出した価値を顧客ニーズに合わせて改良し続ける。

イノベーションとは、完成形ではなく
継続的なプロセスなのです。

■ マネジメントの役割

真に強い企業とは、
革新的な商品を一度生み出した企業ではなく、
革新を更新し続けられる企業ではないでしょうか。

そのためには

・イノベーションで新しい価値を生み出し
・マーケティングでその価値を顧客に届け続ける

この2つを同時に機能させる必要があります。

単発の大きな革新を起こすことよりも、
小さくとも、革新し続けられる組織こそが、
顧客を創り続けることができる。

それこそが、ドラッカーが言う
マネジメントの本質なのだと思います。

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