企業はもう“成長”できないのか─縮小時代の戦略と最適化 #213
前年の売上実績に対して、一律で上乗せして立案するような拡大戦略ありきの時代ではありません。
世界の人口は長期的には減少へ向かっており、
日本は世界で最も早く人口減少に直面する国の一つです。
そのスピードは、他国と比べても突出しています。
もはや人口減少は「例外的な問題」ではなく、あらゆる意思決定の前提条件です。
人口減少はそのまま市場縮小を意味する現代では、
従来のような拡大前提の成長戦略は、もはや成立しません。

■ スマートシュリンク─縮む中で価値を最大化する
そこで注目されているのが、「スマートシュリンク(賢く縮む)」という考え方です。
人口が減る中でも、人々のウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良い状態)を高めること。
規模ではなく、質を高めることに軸足を置く発想です。
この考え方は、企業経営にもそのまま当てはまります。
単純な売上拡大が難しい環境で問われるのは、規模に見合った利益をいかに維持・最大化するかです。
かつては「売上を増やす=成長」とされました。
しかし、今の時代は売上を追うだけでは利益は確保できません。
重要なのは、売上よりも利益の最大化です。
利益拡大は、売上の質と戦略次第で実現可能です。
削減だけに頼るのではなく、価値を高める財務戦略が必要です。
■ USPで勝ち残る
利益を高める最初の鍵が、USP(Unique Selling Proposition)です。
USPとは、「企業の独自性=他社には真似できない強み」と「顧客のニーズ=市場が本当に求める価値」が重なる価値のこと。
この2つが重なるところを磨くと、価格競争に巻き込まれない、販売単価の向上、値下げ圧力の抑制が可能になります。
選ばれる理由がない企業は、市場から淘汰される時代です。
■ 生産性向上は待ったなし
人口減少は、労働力不足にも直結します。
だから生産性向上は必須条件です。
手段として真っ先に考えられるのが、機械化・デジタル化です。
ただし、すべてを置き換えられるわけではありません。
人間にしかできないのは、創造性、判断力、共感力であり、この領域に集中させることが重要です。
■ 人材の価値向上と過剰な資産
人が減る時代、重要なのは人数ではなく一人あたりの価値です。
発揮能力を高め、少人数でも高成果を出せる組織をつくる。
それができれば、給与水準を上げることも可能です。
縮小はマイナスではなく、資源の再配置チャンスになります。
もう一つの課題は、拡大戦略で積み上がった使われなくなる設備や過剰に広い工場やオフィスなどの過剰な資産です。
ロボット化やデジタル化、働き方改革で必要性は低下するはずです。
企業にとっての特に活用価値の低い固定資産は重荷となってくるはずです。

■ 拡大ではなく「最適化」へ
これからの企業に求められるのは、拡大ではなく最適化、量ではなく質です。
大きくなることが価値ではありません。
適切であることが、これからの価値です。
私たちは、どこまでが必要で、何を手放すべきなのかを判断することが、縮小時代に生き残る企業の未来を決めるのです。
