なぜ、旅をするのか #157
人は、なぜ、旅をするのでしょうか・・・
ことわざに「可愛い子には旅をさせよ」というものがあります。
これは、子のことを想うのであるのならば、側に置いて甘やかすのではなしに、もっと外の世界で様々な経験させるべきという意味です。
ここには、子の将来を考え、その視点から視野を広げ、視座を高めて欲しい思いがあるのだと思います。
■ 旅は「その場に立つこと」から始まる
村上春樹さんの著書である「辺境・近境」を思い出しました。
「辺境・近境」とは、村上さんが1990年代に国内3箇所、海外4箇所、全部で7箇所の旅行記を一冊にしたものです。
その帯には、こう記されています。
「その場に 立って、触れて、はじめて わかることがある。」
まさに旅の本質を言い当てた言葉だと感じます。
その中の一文をご紹介します。
「細かい記述とか描写はなるだけ書き込まないようにする。むしろ現場では書くことは忘れるようにするんです。記録用のカメラなんかもほとんど使いません。そういう余分なエネルギーをなるべく節約して、そのかわりこの目でしっかりいろんなものを見て、頭の中に情景や雰囲気や匂いや音なんかを、ありありと刻み込むことに意識を集中するわけです。好奇心の塊になる。とにかくそこにある現実に自分を没入させることが一番大事です。」
旅とは「記録すること」よりも、「その場に没入すること」に意味があるのかもしれません。
■ 旅にまつわる言葉たち
また、著名な方々の旅に関する言葉も数多く残されています。
「旅の過程にこそ価値がある。」
● スティーブ・ジョブズ(米国の実業家・アップル創業者)
「旅をしない音楽家は不幸だ。」
● モーツァルト(オーストリアの作曲家・演奏家)
「旅というものは、時間の中に純粋に身を委ねることだ。」
● 福永武彦(日本の小説家・詩人)
「希望に満ちて旅行することは、目的地にたどり着くことより良いことである。」
● ロバート・ルイス・スティーヴンソン(英国の小説家・詩人)

「旅は私にとって、精神の若返りの泉である。」
● ハンス・クリスチャン・アンデルセン(デンマークの童話作家)
「言葉を友人に持ちたいと思うことがある。それは、旅路の途中で自分がたった一人だと言うことに気がついたときである。」
● 寺山修司(日本の詩人・劇作家)
「発見の旅とは、新しい景色を探すことではない。新しい目で見ることなのだ。」
● マルセル・プルースト(フランスの作家)
「人が旅をするのは、目的地に到着するためではない。それは旅が楽しいからなのです。」
● ゲーテ(ドイツの詩人・作家)
「貧乏旅をすれば、大学を二つ出たようなものだ。」
● 永倉万治(日本の作家)

「美しいものを見つけるために、私たちは世界中を旅行するが、自らも美しいものを携えて行かねば、それは見つからないだろう。」
● エマーソン(米国の思想家・哲学者)
「旅は人間を謙虚にします。世の中で人間の占める立場がいかにささやかなものであるかを、つくづく悟らされます。」
● フローベール(フランスの小説家)
旅に対する価値観は、人それぞれであることが分かります。

■ 旅と交流のかたち
旅行業大手である「株式会社ジェイティービー」の企業理念も興味深いものです。
「地球を舞台に、人々の交流を創造し、平和で心豊かな社会の実現に貢献する。」
ここには「旅」という言葉は使われていません。
事業ドメインは「交流文化事業」と定義されています。
旅は単なる移動ではなく、「人と人との交流そのもの」を指しているのかもしれません。
■ 時間と体験の鮮度
そしてもう一つ、旅や体験というものには、時間とともに変わっていく側面があります。
時間が有限である以上、
体験できることにも、ある種の“鮮度”のようなものがあるのかもしれません。
年齢を重ねるほど好奇心は静かになり、感受性も少しずつ形を変えていきます。
同じ景色を見ても、かつてのような強い感動がそのまま続くとは限りません。
やりたいことがあるのなら、先送りにせず、まだ心が動くうちに触れておくこと。
その方が、より深く受け取れるものがあるように思います。
■ 人は、なぜ、旅をするのか
人は、なぜ、旅をするのでしょうか・・・
もちろん、ひとつの明確な答えを出すことはできません。
それでも、旅を通じて新しい文化や価値観に触れ、人としての器を少しずつ広げていくことは、確かにあるように思います。
世の中には、まだ行ったことのない場所が無数にあります。
人生の中で、それらすべてを訪れることはできません。
だからこそ、これからの時間でどこへ向かうのか。
それを選ぶこと自体も、ひとつの楽しみなのかもしれません。
最後に。
時間をつくって、旅に出てみましょう。
