タイパ・コスパ時代だからこそ大量行動 #62
■ 効率だけを追い求めても、質は生まれない
タイパ(タイムパフォーマンス)やコスパ(コストパフォーマンス)が重視される時代です。
少ない時間や少ないコストで、大きな成果を得ることが求められています。
しかし、忘れてはいけないことがあります。
それは、経験値がない状態で、本当の意味で質を高めることはできないということです。
もし、経験を積まずとも簡単に高い質を実現できることであれば、それはAIでも十分に代替できる領域になっていくと考えられます。
人間が価値を生み出すためには、試行錯誤を通じて得られる経験が不可欠です。
物事には、必ず表と裏があります。
成果だけを見て、そこに至る過程を省略することはできません。
■ コインの表裏から考える「確率」と「経験」
コインには表と裏があります。
1回投げた場合、表が出る確率も裏が出る確率も理論上は50%です。
では、2回投げたら必ず表と裏が1回ずつ出るでしょうか。
答えは違います。
2回とも表が出ることもありますし、2回とも裏が出ることもあります。
つまり、理論上の確率と、実際に起こる結果には差が生じます。
この差を埋めるために必要になるのが「試行回数」です。

■ 「ニーズに応えたのに売れない」という矛盾
ビジネスの世界でも、同じようなことが起こります。
例えば、お客様のニーズに応えた製品を作ったのに売れないという現象です。
ここで考えなければならないことがあります。
そもそも、その製品は本当にお客様のニーズに応えたものだったのでしょうか。
また、その判断は、どれだけの情報をもとに導き出したものだったのでしょうか。
10人のお客様の声を聞いた結果なのか。
100人なのか。
1,000人なのか。
1万人なのか。
当然ながら、参考にするデータ量が増えるほど、判断の精度は高まっていきます。
■ 大数の法則が示す「行動量」の重要性
確率論・統計学には、大数の法則(law of large numbers)という考え方があります。
簡単に言えば、「試行回数を増やすほど、実際の結果は理論上の確率に近づいていく」というものです。
例えば、コインの表が出る確率は理論上50%です。
しかし、投げる回数が少なければ、結果は100%表になることもあれば、0%になることもあります。
一方で、100回、1,000回、1万回と試行回数を増やしていけば、徐々に50%という理論値に近づいていきます。
つまり、「行動量を増やすことで、仮説だったものを、事実に近づけていくことができる」ということです。

■ やるべきことをやり切ったのか―
お客様のニーズに応えたた製品であるはずなのに売れないという問題を考える場合、大きく2つの視点があります。
1つ目は、本当にニーズを捉えていたのか。
お客様の声を十分に集めたのか。
市場全体の傾向を確認したのか。
限られた一部の意見だけを「ニーズ」と判断していないか。
ここを検証する必要があります。
2つ目は、十分な人数に届けたのか。
どれほど優れた製品でも、存在を知られなければ購入されません。
マーケティングのAIDMAの法則でも示されるように、まずは認知されることが必要です。
つまり、「誰に、どれだけ届けたのか」という行動量も重要になります。
そもそも、「やるべきことをやり切ったのか」です。
やり切りもしない状態では、正しい判断をすることは到底できるわけがありません。
■ 量なくして、質は磨けない
もちろん、単純に行動量を増やせば必ず成功するわけではありません。
どこかの段階では、行動の質を高める必要があります。
しかし、質を高めるためにも、まずは量が必要です。
なぜなら、十分な試行をしなければ、何が良くて何が悪いのかを判断する材料が得られないからです。
問題を可視化できなければ、改善することもできません。
この考え方は、「発散と収束」という言葉でも表現できます。
「発散」の段階では、質よりも量を重視します。
考えられることを試す。
行動できることをやり切る。
結果から得られる情報を増やす。
たとえ、自分の予想と違う結果が出たとしても、先入観で排除してはいけません。
そこには、次の成長につながる重要な情報が含まれている可能性があります。
そして、大量行動によって十分な情報が集まった段階で、「収束」に移ります。
収束では、得られた情報を分析し、論理的な根拠をもって選択肢を絞り込みます。
そして、より質の高い行動へ変えていきます。
場合によっては、再び「発散」に戻ることもあります。

■ 成果を生むのは、量と質の循環である
成長や成果創出には、最初から完璧な答えを求めることはできません。
まず行動する。
経験を積む。
結果から学ぶ。
そして、質を高める。
この循環を繰り返すことで、少しずつ正解に近づいていきます。
タイパやコスパが求められる時代だからこそ、忘れてはいけないことがあります。
それは、「質を求める前に、必要な量を経験すること」です。
そして、「量から得た事実をもとに、質へ転換していくこと」です。
この発散と収束の繰り返しこそが、成果を生み出すための本質なのではないかと考えます。
