「詩人と鍵束」【異伝】海満ちては崩れ、月は変わらず
大河のほとりに、ある国の王都でもある街があった。
これからその街で起きた、勇気と友情の物語を語る。これは、少し未来の物語だ。私がなぜそれを語れるのか——そんなことは、どうか聞かないでほしい。語ることだけが、私に残された役目なのだから。
長く支配していた王がいた。盛者必衰の理に従い、王は静かに退いた。代わりに現れたのは、機械仕掛けの王。
新しい王は宣言した。
「宇宙の彼方に、本当の宝がある。それを見つけた者には、褒美を与える」
人々は応えた。科学技術の英知を結集して、空を見上げ、王の願いに応えようとした。その努力は、街のあらゆる場所に広がった。
そんなある日、雨が降り続いた。その雨には、潮の香りが混ざっていた。それは同じくして宇宙の宝を求める者たちの動きだった。魚と共存する一族が、街を襲ったのだ。冗談のような話だが、その一族は先代の王の縁戚だった。そして、戦乱が起きた。どこかで聞いたような戦い。だがそれは、確かにこの街で起きた。人々は疲弊し、言葉を失い、夢を閉ざした。
戦いが続いたある夜、月が綺麗だった。疲れはて、闇に閉ざされた人々の心に、月が語りかけてきた。
「あなたたちは、またばかげた戦いをしてしまった。けれど、私はまだここにいる」
宇宙にある宝は見つけられなかった。だが人々は、もう一度そこにある美しい月を思い出した。そして彼らは、少しずつ友情を取り戻したのだ。
かくて人の世の友愛はあたかも海の如く、常に満ちては崩れ、月は変わらず勇気をともす。
やや長いあとがき
この短編は「詩人と鍵束」公式単独ルール:004によって即興的につくられた物語をベースにしています。

結果的にセオリーから考えれば「どうしてそうなるの」というハチャメチャな超展開もありますが、それでもなんとか仕立て上げているのです。でも、遊んでみると案外できてしまうし、きれいに仕上がり切らないところに逆に現実は案外こんなものかもという説得力が生まれると気づいたりもします。
ファシリテーションスキルの前提が若干は要求される面もあります。それでも、何もないところから生み出すよりははるかに簡単に、創造の不条理や偶然の出会いを楽しめます。遊びながらこんな物語をつくってみませんか?
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