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ビビっと!トーク③【ママタルト】土俵に上がるための戦略的なネタバレはあり

ビビッと!マガジン(ビビマガ)編集部です。

ビビマガでは、人生を振り返り“ビビっと”来たタイミングにフォーカスして語っていただくインタビュー連載『ビビっと!トーク』を実施しています。

これまでは、ビビプロ主催・ヤーレンズさんが連載に登場しました。

第3回となる今回登場いただくのは、ビビプロ旗揚げライブから出演しているママタルトさん!お二人の芸人人生を振り返り、いくつかの“ビビっと”ポイントを深堀りさせていただきました!


ママタルト(左:檜原洋平、右:大鶴肥満)

ママタルト インタビュー

土壌に上がるためのネタバレ

———芸人人生を振り返り、ママタルトとしての“ビビっと”ポイントを教えてください。

檜原洋平(以下、檜原): 僕が「見ている」状態の漫才から、僕もコントに入る「コント漫才」に変えたときくらいですね。僕のまま・肥満のままでどこかに行って、僕が多めにしゃべるという。それが良いと気付いて、2023年秋くらいに話し合いをしました。この年のM-1でやった「キャンプ」のネタや「大食いトーナメント」みたいに、普通のままでしゃべれてコント漫才になっているネタが良いかもと。これは大きいですね。

———お二人のままでやるコント漫才ということは、認知度が上がったことも関係しているのでしょうか。

檜原: そうですね。日常会話の延長みたいな。それでM-1準決勝に行けたこともあって、前よりリラックスして挑めるようになったと思います。

———肥満さんが思うママタルトの“ビビっと”ポイントはいかがですか?

大鶴肥満(以下、肥満): 「大食いトーナメント」は僕も大きいですね。当時(2019年頃)、かが屋さんがYouTubeきっかけでめちゃくちゃ跳ねたことがあるんですよ。寺田寛明さんがTwitter(現X)で「かが屋のこのネタ面白すぎる」と発信したのが大富豪のネタで、これきっかけでみんな「おもろ!!!」と注目して、そこからあれよあれよと『ツギクル芸人グランプリ』、『ゴッドタン』とばーっとテレビに出て。それで、めちゃくちゃ面白いネタはYouTubeに上げるべきという空気になったんですよ。当時は芸人があんまりYouTubeをやってなかったですし、そもそもネタを隠したい文化だったので「ネタをYouTubeに上げるなんて!」みたいな状態。でもかが屋さんが注目されたのを目の当たりにして、これは「めちゃくちゃウケたネタはUPしたほうが良いぞ」と思って、「大食いトーナメント」のネタをUPした(2019年)んです。
で、その結果注目いただけるようになって。これは完全に覚えてますね。「ライブであんだけウケてたのに……」という芸人がまわりに多すぎて、こんなんなら「ウケた証拠としてUPしたほうが良いよ」って話になりました。

———そうなんですね。YouTubeに上げるとネタバレになるので、芸人さんは嫌なんだと思っていました。

肥満: 動画を上げると、たしかにウケは減ります。当時は強いネタなんて何本も持ってなかったんで、賞レースのためにも「隠したい」と思ってたんですけど、強いネタを持っていたとて土俵に上がれなきゃ意味がない。だから「土俵に上がるためにも」っていうのはありました。

檜原: たしかにそうです。みんな「知られてないからウケない」と「ネタバレするとウケない」という矛盾したことを言っていて、それだったら「ネタバレしていて知られている」ほうが「ネタバレしてなくて知られていない」よりも良いんじゃないかと。この辺から、僕はネタバレにそんな過敏じゃなくなりました。

———「大食いトーナメント」をUPして、反響はいかがでしたか?

肥満: すごい反響ありました。うちらはずっとM-1は2回戦落ちだったんですけど、その年は初めて2回戦を通ったんですよ。「あっ、これは3回戦で違うネタをやって、準々決勝で大食いトーナメントで……いけるぞ!」と思ったら、3回戦が全然ウケなくて。そこで「大食いトーナメント」をやるきっかけを失ってしまったっていうのはありますね……。それで、2019年に動画を上げました。ネタバレとM-1の兼ね合いをどうしようかと思ったけど、UPしたら市民権を得たというか。「イロモノじゃない」みたいな空気になりました。

檜原: 最近、やっと「まだまだ誰もネタを見ていないんだ」と気付きました。「大食いトーナメント」のネタは、2020年時点でたしか6万回再生されてたんですね。だから僕らは「6万回も再生されている、つまり全員知ってる!」と思ってたんですけど、今思えば、6万回くらいだったら全然大丈夫。当時は100人規模の会場しか出てなかったんで、「ここにいる100人もあそこの100人も、全部足しても6万回に行かないぞ。ってことは全員見てるじゃん」と思ってたんですけど、全然そんなことないなって思いました。

死を意識し無理を厭わなくなった

———個人としての“ビビっと”ポイントはいかがでしょうか?

檜原: スラッシュパイル片山さんの言葉ですね。大学卒業後は就職しようと思ってたんですけど、3月くらいに「やっぱり芸人やろうかな」と思って。それで当時の相方から、「片山さんが松屋牛丼380円(当時)。どんなに貧乏でも、1日1回380円で牛丼食べられたら、若いうちやったらなんとかやっていけるんとちゃいますか?」と言っていたという話を聞いて、ちょっと苦労しても、せっかくやったらチャレンジして良いかも……と。「発展した日本にタダ乗りするか」みたいなことを思いました。日本やし、苦労はするかもしれないけどバイトしながらお笑いできるなと。

肥満: 僕は2019年1月ですね。2018年12月31日に喘息で息ができなくなって、緊急搬送されたんですよ。歩くだけで心臓が痛くなって、寝ていても息ができなくて、死ぬかと思いました。大晦日なんで、救急車もつかまらなくて…‥‥それで、電話で「本当に死んじゃうんで、救急車来なかったら恨みます」って言ったら「じゃあ1台用意します」となって、近くの病院に搬送されたんです。そのとき酸素濃度85とかで、チアノーゼ1歩手前で。緊急入院になったんですけど、お正月なんで先生がいないんですね。それで、酸素ボンベでずっと酸素吸って点滴打って安静状態でした。トイレも基本尿瓶でとなりました。その日救急車に搬送される前からおしっこに行ってなくて点滴も打ってるからか、おしっこしたら尿瓶がどんどん埋まっていって、「溢れるなんてことないよな」と思っていたら表面張力ギリギリのところでおしっこが止まりました。ナースコールで看護師さんを呼んで尿瓶を渡したら、「恥ずかしがらず一回使ったら毎回呼ぶこと!」と怒られました。「これ、一回分なんです」と答えたらびっくりしてめちゃくちゃおしっこ溢してました。

———本当に極限状態だったんですね。

肥満: はい。で、1月1~3日で少しずつ症状が落ち着いて、4日の朝に呼吸器内科の先生が出勤するんで「そこで今後どうするか決めましょう」となったんですよ。でも1月4日の夜に、無限大ドームで『魔人無骨のBM』っていうライブがあったんですね。どうしても魔人無骨(現「令和ロマン」)のライブに出たくて、お医者さんに「どうしてもこの後退院したい」と言ったんですよ。お医者さんは「いやいやさすがに、どうなるかわかんないから」という反応だったんですけど、「どうしてもライブに出ないといけないんです」と言って、「まぁそう言うなら」……と。

檜原: (笑)。詳しくは聞かずに。

肥満: それで退院して、ライブに出たんですよ。コーナーライブだったんですけど、初めて病を押し切ってまで出て、自分の生命に対する意識が変化しました。俺はコロナより先に酸素ボンベつけてるぜって自信もありましたし、ライブに出ることへの強い意識が生まれた感がありますね。

———命よりライブが優先ということですか……?

肥満: ゲホッと咳をしたら血管の形をした血の塊が出るかもしれなかったんですよ。

檜原: 気管支炎の最上級みたいなやつね。

肥満: 「30歳で死ぬ」って言ってたけど、いざ死にかけたら「嫌だな」って気持ちになりました。「生きたい、死にたくない!」と思いました。死が近付くことによって生を実感するということもあるので、難しいところですね。生に対して、しがみつくくらいの意識を持ったほうが良いかもしれないですね。それから、どこでも楽しくなりました。「まぁ、こんなん大丈夫だろう。生きてないかもしれなかったし」みたいな。それで無茶することを厭わなくなりました。

———それは良いことなんですかね?

檜原: (笑)。

肥満: 笑ってくれよ、死んだら。

賞レースは行けば楽しい

———ママタルトさんの芸人人生を振り返ると、M-1に限らず、けっこう賞レースにチャレンジしている印象があります。ママタルトさんの活動において、賞レースはどんな立ち位置にあるものですか?

檜原: そうですねぇ……。お見送り芸人しんいちさんが「ZAZYと『ダブルインパクト』に出る」って言ってたんで、「しんいちさん忙しそうだし、M-1だけで良いんじゃないですか?」と言ったんですよ。そしたらしんいちさんは「こういうのはその場に全部おることが大事やねん」と言ってて。「おったらみんなの話題に出るけど、出ぇへんかったら最近見んやつになっていく。だから全部出たほうがええねん」と言ってて、しんいちさんの言うとおりだなと思いました。しんいちさんが僕とZAZYに「なんで俺がいっぱい仕事あるか知ってるか?みんながな、楽屋でしゃべってるときとか、俺だけひとり早くスタジオに行って、全員の顔と名前を憶えて挨拶して帰ってんねん」って言ってて。

———意外ですね。

檜原: 「えっ!?そんなんしてるんですか?」と言ったら「そうや、『オールスター感謝祭』のときも、俺だけ全員と挨拶してたんやで」と。「裏切りもんじゃないですか!」と言ったら「そうや。そうせな生き残らへんねん」と言っていて、たしかに賞レースに出ておくのは大事なのかもと。

———まずは「出る」のが大事。

檜原: 『ツギクル芸人』も、3回出てるけど去年はエントリーしなかったんですね。それで、僕も家にいるよりは出たほうが良いなと思いました。輪に参加できるだけでも良いよなと思います。賞レースは、行ったら楽しいんですよ。『キングオブコント』も、準々決勝のあとに春とヒコーキとトゥリオと一緒にハンバーガーを食べて帰ったんです。それがすごく楽しくて(笑)。『キングオブコント』にエントリーしなかったらハンバーガーを食べることもなかったんだなと思ったら、行けばきっと楽しいと思いますね。

———ママタルトさんは、ビビプロの旗揚げライブから出演いただいています。最後に、今後ビビプロに期待することを教えてください。

檜原: ツアーですね。温泉地に行きたいです。伊香保温泉とか。

肥満: たしかに。内P(内村プロデュース)を観て育ったんで、宴会場で大喜利やるみたいなことはやってみたい。お酒飲みながらライブするとかも、配信できるなら面白いかなと思いますね。

———以前ヤーレンズさんにお話を聞いたとき、お客さんは「吉本だから」とかではなく、事務所関係なく面白い人を観に行っているので、面白いことをやり続ければ来てくれる……と言っていただきました。これがビビプロに求められていることでもあるのかなと思うのですが、ママタルトさんはどう思われますか?

檜原: そうですね……。僕らはいつも吉本主催のライブに呼んでいただいてお邪魔することも多いので、ビビプロのようなライブで座・高円寺やなかのZEROに吉本芸人を呼べると嬉しいですね。

肥満: なんかさ、2~3組吉本芸人がライブにいると、そこはもう“吉本”になるよね。だから吉本芸人を呼んでも彼らが“ゲスト”になることはない。でも逆に、僕らが吉本主催ライブに呼ばれて出演しても、それが“吉本ライブ”でしかないかと言われたらそうでもなくて。つまりビビプロライブとは、事務所関係なく面白い芸人が出るものだというコンセプトは、もうお客さんのなかで出来上がってると思うんですよ。

檜原: そうですね。だから不自由しているみたいな感覚は別にないんですよ。

ビビプロ主催:そうなんですね、ありがとうございます!ビビプロもお二人に暴れていただけるようなライブをたくさん企画できたらと思うので、頑張ります!


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【協力:ワラパー】
取材・文・編集:堀越 愛

写真:ビビプロ