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私の人生を支えた、想像の翼。



私には、
私の人生を支えてくれた本が二冊あります。


一冊は、小学生の頃に出会った『赤毛のアン』。


もう一冊は、大人になって出会った
ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』です。


少女の物語と、極限の世界を生き抜いた記録。


まったく違う二冊なのに、私の中では一本の線でつながっています。


その線の名前は、「想像の翼」です。


幼い頃の私は、
『赤毛のアン』に登場する「いちご水」という言葉が大好きでした。


ラズベリー酒と間違えて、ダイアナが酔ってしまう、あの有名な場面です。


多くの人は、アンの前向きさや、困難にも負けない強さに心を動かされたのかもしれません。


でも、私は違いました。


「いちご水」。


その言葉を読むだけで、
見たこともない景色が浮かび、甘い香りまで想像できたのです。


私は物語より、その言葉の響きに惹かれました。


その頃から私は、想像することが好きでした。


想像の翼を広げることは、現実から逃げることではないのです。


まだ見ぬ世界を思い描くこと。


心を豊かにすること。


『赤毛のアン』は、その喜びを幼い私に教えてくれました。


だから今でも私は、心が華やぐものが好きです。


ガラス瓶に入った色とりどりのジェリービーンズ。


アンティークのチュールレース。


海外の美しいレターカード。


綺麗な香水の瓶。


部屋に飾った植物。


ふわりと香る金木犀。


眺めているだけで、心が華やぐ。


私は、そういうものが好きなんです。


三十代から四十代にかけて、私は二度の心臓手術を経験しました。


医師からは、妊娠、出産を諦める人生になると説明を受けました。


入退院を繰り返し、思うように身体は動かず、手術直後は本を読むことさえできませんでした。


それでも少しずつ回復すると、
お気に入りの本や、美しいノート、小さな雑貨を病室へ持ち込みました。


心が華やぐものを、そばに置いていたかったのです。


そして、大人になって出会った『夜と霧』は、その想像の翼をさらに確かなものにしてくれました。


ヴィクトール・フランクルは、極限の状況の中でも、人は心の自由まで奪われることはないと語っています。


未来を思い描くこと。

愛する人を思い浮かべること。

想像すること。

それは、生きる力になる。


その言葉を読んだとき、
幼い頃から大切にしてきた「想像する力」が、誰かを思う力にもつながっているのだと感じました。


相手を思う心。

それは想像する力。


二度目の心臓手術を終え、意識が戻ったとき。

手術は予定より長時間に及んでいました。


私が最初に口にした言葉は、

「家族は大丈夫ですか?」

でした。


手術を受ける私は眠っています。


でも、家族は違います。


何が起きているのか分からないまま、
ただ待ち続けるしかありません。


その時間がどれほど長く、不安だったか。


私は手術を受ける前から、家族のことを考えていました。


だから最初に気になったのは、
自分のことではなく、待っていてくれた家族のことでした。


想像の翼は、いつの間にか私の一部になっていたのだと思います。


そして『夜と霧』は、その翼が、
どんな現実の中でも心を失わずに生きる力なのだと教えてくれました。


本を読むことは、知識を増やすことだけではありません。


人生を変える一冊は、その人の生き方になります。


少女の頃に出会った『赤毛のアン』。


大人になって出会った『夜と霧』。


二冊の本は、私に同じことを教えてくれました。


想像の翼は、現実から逃げるためのものではない。


心を失わずに生きるためのもの。


そして、
自分だけではなく、誰かを思いやるためのもの。



今日も私は、
心が華やぐものを大切にしています。


ガラス瓶のジェリービーンズ。


アンティークのチュールレース。


美しいレターカード。


あの日、
『赤毛のアン』を読んだ私の中に、
「想像の翼」というものが生まれました。


その翼は今も、私の中にあります。


Viviane.





イラストPii.(Viviane.)



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