いきものレジン標本作成の裏側 #はじめてのnote
いきものを、未来へ手渡す。VITA CASTのレジン標本ができるまで
はじめまして。いきものレジン標本を作成・販売している VITA CAST です。
レジンやいきものが好きなみなさまと繋がりたくてnoteを始めるに至りました!
さて、、、
昆虫の翅の細かな脈。甲虫の硬い輪郭。植物が重ねてきた時間。
生物には、写真だけでは伝えきれない立体の美しさがあります。けれど、乾燥標本は繊細で、気軽に手に取ったり、裏側まで観察したりすることは簡単ではありません。
そこで私たちVITA CASTは、生き物を透明なレジンの中に封入し、手に取ってさまざまな角度から観察できる標本を制作しています。
今回は、VITA CASTが目指していることと、ひとつのレジン標本ができあがるまでの8つの工程をご紹介します。
VITA CASTとは
VITA CASTという名前には、Vita(生命を)/cast(鋳造し直す)という思いを込めています。掲げている言葉は、「Encasing Life: The Everlasting Biopedia」。生命の尊厳と美しさを記録し、未来へ手渡すことを目指す生物標本プロジェクトです。
出発点にあったのは、生物学の研究を続けるなかで感じた、従来の標本技術の限界でした。
レジン標本は、透明な立体の中に生き物の姿を残します。壊れやすい乾燥標本とも、平面の写真や図鑑とも異なり、表から、横から、裏から、形や色を直感的に観察できます。展示物として楽しめるだけでなく、フィールドへ携帯できる「触れられる図鑑」として、教育や研究にも生かせる可能性があります。
一つひとつ、手作業でつくる
レジンに入れれば、すぐに完成するわけではありません。
気泡をできるだけ残さず、生き物を望んだ位置に保ち、透明感のある表面に仕上げるため、洗浄、固定、二度の樹脂注入、脱泡、硬化、研磨を重ねます。標本ごとに大きさも形も異なるため、毎回同じ方法で仕上がるとは限りません。個体の特徴を見ながら工程を調整していきます。
1.標本を洗浄する

最初に、標本をエタノールで丁寧に洗浄・消毒します。表面の汚れを落とすことは、完成後の見え方を左右する大切な下準備です。細かな凹凸や脚の間まで、傷つけないよう慎重に整えます。
2.第一層の樹脂をつくる

シリコーン型に二液混合エポキシレジンを流し込み、まずは標本を支える「足場」をつくります。第一層を先に硬化させることで、完成品の中で標本を安定した位置に配置できるようにします。
3.固定用のUVレジンを塗る

標本の脚部末端など、足場に接する部分へ少量のUVレジンを塗布します。主役はあくまで生き物そのもの。固定材が目立たないよう、必要な箇所を見極めながら少しずつ作業します。
4.UV光で標本を固定する

型の下からUV光を当て、標本を第一層の足場へ固定します。向きや姿勢が決まる、緊張感のある工程です。ここでしっかり固定することで、次の樹脂を流し込む際のずれを防ぎます。
5.第二層の樹脂を流し込む

固定した標本を覆うように、二液混合エポキシレジンをゆっくり流し込みます。細かな隙間にも樹脂が行き渡るよう、標本の状態を確かめながら進めます。透明な層が満ちていくにつれて、生き物の姿が「標本作品」へと変わっていきます。
6.脱泡装置で気泡を集める

樹脂の中には、流し込みの際に生じた微細な泡や、標本内部に残っていた空気が現れます。脱泡装置を使い、それらを液面へ集めます。透明感を高め、生き物の細部を見やすくするための重要な工程です。
7.表面の泡を一つずつ取り除く

液面に集まった泡を、ヒートガンやピンセットで丁寧に取り除きます。大きな装置を使う工程のあとに待っているのは、目と手による細かな仕上げ。透明なレジンだからこそ、小さな泡にも向き合います。
8.完全硬化後、表面を整える

適切な温度と湿度のもとで完全に硬化させたら、型から取り出します。制作中に生じた鋭利な部分や表面の傷を、アートナイフ、コンパウンド、研磨装置などで整えます。手に取ったときの安全性と、標本を見渡せる透明感を確かめて、ようやく完成です。
※写真は別作品の仕上げ例を含みます。
虫が苦手な人も、思わず見入る標本へ
2025年の「鶴岡サイエンスパークまつり」を紹介した地域メディア「ショーナイツウ!!」では、VITA CASTについて、慶應先端研で研究する学生が立ち上げた活動として取り上げていただきました。
記事で印象的だったのは、虫が苦手な取材者の方も、レジン越しなら直接触れずにさまざまな面を観察でき、「まじまじと」見てくださったことです。当日は、昆虫・植物・貝殻などを封入するレジン標本体験や、珍しい標本の展示も紹介されました。
「苦手だから近づけない」と「もっと知ってみたい」の間を、透明なレジンがつないでくれる。VITA CASTがつくりたいのは、そんな新しい生き物との出会いです。
透明な小さな方舟を、次の世代へ
自然の造形は、一つとして同じものがありません。標本には、その個体が生きた時間と、それを見つめてきた人の記憶が重なります。
VITA CASTは、ノアの方舟から着想した「現代の方舟」という理念のもと、生き物の美しさを文化・科学・教育のための記録として残すことを目指しています。透明な小さな方舟を手に取ったとき、名前を知らなかった生き物にも、きっと新しい発見があるはずです。
現在、オンラインショップでは昆虫、クモ類、植物などのレジン標本をご覧いただけます。大型メタリックタマムシ Euchroma giganteum、タランチュラ類、松ぼっくりなど、形も色も異なる標本を掲載しています。
気になる一体が見つかったら、ぜひ、正面だけでなくさまざまな角度から眺めてみてください。






