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「蒸す=やわらかくするもの」と思っていたけれど

生で食べられることが多い野菜を、よりしゃきしゃき・みずみずしくしてくれるという事が、

最近、特に腑に落ちた感覚があります。


「蒸す」という中でも特に

「低温蒸し」というものに着目して、野菜や豆、穀物などのまだ見ぬ魅力を日々紐解き続け、

おかずからおやつまで、幅広く考案してきているですが

栄養やうま味成分が溶けだしたり、なくなってしまうのを抑えながら、野菜などを美味しく加熱処理することができる

食材の素材の成分の中に含まれる "あく" や "悪臭" 、"えぐみ" などをなくすのに効果的

過去の記事「"低温蒸し"に魅せられて」より

という低温蒸しのメリットに触れることが多く、柔らかくなる以外の食感については、そこまで深く言及してきていませんでした。


何でもかんでも"柔らかくなるまで蒸したらいい" というわけではなく、


素材それぞれ良さがあって、

中には、しゃきっとした歯ごたえが残った方がいいものもあるというのは、確かに感じていたことで。

色々なものを一度に蒸し始めて
蒸し上がったものから引き上げる
というのが私のスタイル

低温蒸しに対する慣れもあり、私の中では無意識に各素材によって蒸し加減を調整して楽しんでいたのですが、

あえてちゃんと言語化することで、低温蒸しの奥深さ・魅力をお伝えできる(=より多くの方が、もっと料理を楽しめるようになる)

のではと思い立って、この記事を書くに至ります。


そもそも低温蒸しって

という方は、まず⇩でまとめた記事を見て頂くと、

一般的な低温蒸しに加えて、

私が日常で取り入れやすくアレンジした方法などの基本に対して、理解を深めて頂けると思いますが、

今回はこれに加えて、

低温で蒸すことで
野菜の歯ごたえがよくなる

ことがあるというのを、参考文献実際に実験してみた結果も合わせてまとめていきます◎


同じ "低温" でも

一般的には、"30~60℃"、"70℃"、"60~90℃"などと、幅広い温度があるようなのですが、

その中でも、60度前後(55~75℃あたり)の低温で加熱をすると、

細胞膜・細胞壁などでの変化(※)が起きて、硬化現象が起きる(=固くなる=歯ごたえが出る

という調査結果があるようです…!

※科学的な詳細が気になる方は、以下の文献などをご覧ください ^^

参考文献:

八木昌平, 乙黒親男, & 金子憲太郎. (2005). 新技術としての低温蒸気加熱加工法について―低温蒸気で加熱処理した野菜は硬化して保存性も高まる―. 日本調理科学会誌, 38(2), 209-213.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1995/38/2/38_209/_pdf

香西みどり. (2002). 野菜の硬化とその機構. 日本調理科学会誌, 35(4), 387-392.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1995/35/4/35_387/_pdf


とはいえ、

こちらの記事でも書いていたように、日常で低温蒸しを取り入れるとなったときに、

毎回、厳密に温度を測りながら調理するのは、なかなか難しい部分があったり、数字に固執しすぎるのも、料理の本質を見失いかねないと思ったりしていて。


それもあって温度は測らず、お湯の沸き具合や蒸気の出具合、野菜の状態を見て調整し、それを毎日繰り返す中で自分にとってベストなやり方を見つける

というのが私のスタイルなので、

今回のこの60度前後で蒸す、というのも、

蒸しプレート付近の蒸気に手をかざして「あたたかい~少し熱い」と感じるくらいに温度調整

野菜の色表面の湿り具合などを見ることで判断

と決めて、自分なりに実験してみることに。


よく生で食べられることが多い

2つの野菜を、「生の状態」「低温で蒸して硬化が起こったであろうもの」とで比較してみました。

①レタス比較

左:生
右:低温蒸し後

レタスは、緑色が濃くなって、全体的にしっとりしんなりした頃に引き上げて、生のものと比べっこ。

左:生
右:低温蒸し後

ぱっと見て分かるのは、かさがぐっと減って、柔らかい葉先が濃い緑色になったことで、

左:生
右:低温蒸し後

食べてみると、ほんのり潤いが増した中に程よいしゃきっと感が際立って、生のものでは感じられない、心地よい感じがあるな、という印象が。


②きゅうり比較

レタスと同じように、細かく切らず、まずは1本まるごと蒸し。

緑色が鮮やかになって、全体的にしっとりした頃に引き上げてから刻み、生のものと比べてみました。

左:生
右:低温蒸し後

生の方は、もちろんみずみずしいのですが、低温蒸しの方を食べると、生のもののように水っぽさがなく、でも中までしっかり潤いがある、という違いが。

左:生
右:低温蒸し後

それぞれ塩もみして10分置くと、生の方からは小さじ2ぐらいの水分がでて、水切りしないと味が薄まってしまう感じで、

低温蒸しの方は、小さじ1ぐらいの水分が絞れたものの、水分を絞らなくても味の薄まりはあまり気にならず(=水切りは必要ない?)、出汁を入れたようなほのかな旨味も感じられました。(塩の量は、生より少なくて十分な感じも)

余談ですが、きゅうりの表面にあるトゲは、
低温蒸しをすると気にならなくなる印象です◎


論文と自分の実験から考えると

低温蒸しをすると、野菜の細胞壁や細胞膜が壊れにくくなって引き締まる

=  野菜の水分が外に出ず潤って栄養や美味しさも逃げにくくなる

という事が起きたから、

今回比較したレタス・きゅうりが、しゃきっと、でも潤って濃い味わいになったように感じられたのかな、という結論に。

水っぽくないのにみずみずしい──っていう一見矛盾したような嬉しい感覚を味わえるのが、

この“低温蒸し”の魅力だなと、改めて思っています。


でも、そういえば…

しゃきっとするのではなくて、人参や玉ねぎを中まで柔らかく蒸すときのように、しっかり中まで火を通す場合の、水分や栄養などはどうなってる?

とモヤモヤしてしまいそうなので、ちょこっと補足を。


まず、生のままカットしたり、高温で蒸したり茹でたり炒めたりすると、

野菜の細胞が急に壊れて中の水分がどんどん出ていく
パリンと割れたコップから、中の水がこぼれてしまうようなイメージ

ですが、

これまで書いてきた「きゅうりのような野菜を低温で蒸すと、しゃきっとおいしく仕上げられる」というのは

細胞がギュッと引き締まって水分を中にとどめたまま“シャキッとした食感”が残るイメージ



根菜など、比較的固めなものを低温で蒸すと中まで柔らかく&甘く食べられる」というのは

細胞のつながりがゆるやかに変化して、 水分や栄養を外に出さず、
中にとどめたままやわらかくなる

カチカチに凍ったフルーツ入りゼリーが溶けるとぷるんとゆるむけれど、そのものの形は保たれて中身が出てこないような感じ

ということだと、私の中では理解しています。


ただ「蒸す」だけではなくて

低温で蒸すからこその魅力は、こういった栄養や美味しさ、食感を余さず楽しめるということが、やはり大きい。

とはいっても、それを味わうために、ガチガチに温度を測ったり、時間をかけて辛抱しながら蒸したりするのは、現実的ではない

だからこそ、どうやってどの程度蒸したら、効率よく無理なく、低温蒸しを楽しめるか

それを考えて生活に落とし込んでいくことが、暮らしの支えになってくれると思っているので

私が、これまで私なりに工夫して開拓してきたこと、また新たに見つけた低温蒸しの活用術を、

これからもお届けしていくつもりです。



あいり


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