3. 有名大学との共同研究は信頼の証か?
今回の研究は、順天堂大学医学部との「共同研究」として発表されており、それがあたかも信頼性の証明であるかのように報道されています。しかし、「大学が関与しているから信頼できる」という認識は、必ずしも正しくありません。
まず、大学にとって企業との共同研究は、研究資金の獲得、論文業績の確保、大学広報としての効果など多くの利点があります。とくに医療系大学や学部にとって、外部資金は運営や評価に直結するため、企業との関係はきわめて重要です。そのため、意図的ではなくとも、研究成果が企業にとって「都合の良い」方向に傾きやすくなる構造的バイアスが生じやすいのです。
このような構造は「アカデミック・インダストリアル・エンタングルメント(学産癒着)」と呼ばれ、過去にも多くの事例が問題化しています。たとえば2015年には、米国の複数大学がコカ・コーラ社から研究資金を受け取り、「肥満の原因は糖質ではなく運動不足だ」とする論文や広報活動を行っていたことが報道され、激しい批判を受けました(出典:New York Times, 2015年8月9日)。
本件においても、カルビーと順天堂大学の間で利益が一致していた可能性を無視するべきではありません。「共同研究」という形式そのものが信頼性を担保するわけではなく、
むしろ、宣伝効果を目的とした“権威付け”として機能している懸念すらあります。
実際、こうした「大学名の権威化」による誤信効果は複数の先行研究でも指摘されています。たとえば、Ioannidis(2005)の有名な論文「Why Most Published Research Findings Are False」では、研究成果の正しさは、研究の設計・バイアス・利害関係によって大きく歪められることが明言されています。
また、国内でも近年、製薬企業から資金提供を受けた大学病院が行った臨床研究が、都合の良いデータのみを強調して発表していた事例が複数報道されています
代表的な事例:バルサルタン臨床研究問題
2013年、日本の複数の大学病院が製薬企業から資金提供を受けて実施した降圧薬バルサルタンの臨床研究において、企業に有利なデータ操作や不適切な統計解析が行われた疑惑が浮上しました。日本小児循環器学会
この問題は、研究の質と信頼性に関する重大な疑念を招き、国際的な医学誌に掲載された複数の論文が撤回される事態となりました。日本小児循環器学会
この事例は、企業からの資金提供が研究結果に影響を及ぼす可能性があることを示す典型的な例として、学術界で広く認識されています。
出典:
日本小児循環器学会「利益相反(COI)」に関する解説では、バルサルタン臨床研究問題を取り上げ、企業からの資金提供が研究のバイアスリスクを高める可能性について言及しています。日本小児循環器学会
日本医学会が公表した「COI管理ガイドライン 2022」では、製薬企業から資金提供を受けた臨床研究における利益相反の管理の重要性が強調されています。日本医学会+1日本小児循環器学会+1
このように、「大学名がついているから信頼できる」と考えるのは極めて危険であり、情報の出どころではなく構造と設計を見抜く視点こそが、今後ますます求められる時代に突入しているのです。
