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【毎週ショートショートnote裏】いとおかし作家

人の泣き笑う顔に、わたしは“いとおかし”を見つけた。
初めて自分の感情に気づいたのは、友人が恋に破れ、涙と笑いを同時に零した夜だった。それは、天啓に打たれたような経験だった。
その日を堺に、"いとおかし"な顔を探し観察するのがわたしの生きがいとなった。街角で落ち込む学生、電車で無理に笑顔を作るサラリーマン。その表情をこっそりカメラに収めるのが日課になった。

やがて、手を加えることを覚えた。少しだけ誘導して、理想の“いとおかし”な表情を作らせる。
膨れた記録をSNSにまとめると、投稿は瞬く間に広がり、私は作家と呼ばれるまでになった。

けれどある夜、警察が来た。「通報があったんです」とカメラを押収され、ニュースでは“異常者”と報じられた。

もう観察はできない。その事実に悲しみと悔しさが溢れて、泣きたいのに笑ってしまう。
ふと窓の外を見ると、ガラスに映った自分の顔が見えた。その顔は、これまで見てきた誰よりも、理想的にいとおかしかった。

(413文字)

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