【毎週ショートショートnote】こざかしい落下
捜査は難航していた。
深夜のビル街で起きた転落死。遺体の損傷は激しく、身元確認に時間がかかった。事件性が高いと判断されたが、手掛かりは一向に見つからない。
現場の刑事たちは、近くの防犯カメラを片っ端から確認していった。けれど肝心の瞬間はどれも死角。
唯一の手がかりは、向かいのビルで偶然トンビを撮影していたアマチュア写真家の映像だった。
拡大すると、落下する人影がかすかに写っている。しかしどの写真も姿勢が不自然だった。
警察署の一室で映像を繰り返し再生する。
頭を下に、両手を広げ、次の瞬間には体をねじり、まるで踊っているような動き。
「……何か、形を作ってないか?」
ひとりの刑事が呟いた。
フレームを静止させ、落下の軌跡を並べていく。
手足の角度が、ひとつの意味を帯びていく。
“ハ”
“ン”
“ニ”
“ン”
“ハ”
“ヤ”
“ス”
部屋の空気が変わった。
全員の視線が、黙って立っている捜査員のひとりに向かう。
彼はたしか被害者の友人で、名前はーーー。
彼はしばらく口を閉ざしていたが、やがて深く息を吐いた。
「まったく、最後までこざかしい奴だ」
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