【シロクマ文芸部】晴れた日に
晴れた日に、魔女はよく空を飛んだ。
街の人々はその姿を見つけると慌てて家に駆け込み、窓を閉め、雨戸まできっちり施錠した。
子どもたちは外遊びをやめ、洗濯物は一斉に取り込まれた。
「災厄の魔女だ」
誰かがそう言って、皆がそれに同意した。
魔女が街の上を通ったあと、下は決まって大騒ぎになるのだ。
目をこすりながら歩く人、何度も顔をぬぐう人、うつむいたまま動けなくなる人。
広場にはぐったり座り込む者まで出る始末で、医者も薬屋も休む暇がない。
「見ただろう?あいつがきた後、必ず」
「やっぱり呪いを振りまいてるんだ」
そんな噂は、遠くの街まで広がっていった。
魔女本人は、その評判を知らない。
ただ晴れた日は気分がよく、ほうきにまたがって空を散歩するだけだ。
ある日、旅人が街にやってきた。
ちょうどそのとき、魔女が街の上を飛んでいった。
人々は慌てて家に駆け込んでいく。
旅人は空を見上げて言う。
「なるほど」
しばらくして、街のあちこちで人々が顔をしかめ始めた。
旅人も鼻を押さえながらつぶやいた。
「そりゃあ災厄だよ。晴れた日に、あんな杉の箒で飛ばれたら」
(459文字)
前回のお題はこちら⇩
*この記事は下記企画に参加しています*
