【毎週ショートショートnote】曼珠沙華は恋をする
感情のある花が流行った。愛情を注げば注ぐだけ返してくれる。
声をかければ茎を揺らし、水をやれば歓喜に花びらを震わせた。
最初は、紫陽花が人気だった。凛とした佇まいに、人々はひんやりした愛情を求めた。
これがツンデレだと熱狂的なファンが後を絶たなかったが、飽きられるのも早かった。
次に人気が出たのは、赤い曼珠沙華。情熱的な愛情表現に、人々はすぐに魅了された。
けれど曼珠沙華の愛はあまりに熱く、受け止めるには重かった。かくして道端は、捨てられた恋する曼珠沙華に埋め尽くされた。
人々は都合のいい愛を求め続けた。
そんな人々に、研究者は次なる花を差し出した。
チューリップ。思いやりの花。
優しさに包まれる心地よさに、群衆は夢中になった。花びらがふわりと揺れ、喜びを示す。人々はまた熱心に花を買った。
*
研究室の窓辺には売れ残った紫陽花がしおれ、棚の上では赤く乾いた曼珠沙華が静かに横たわっている。
実験室の奥、試験管の中では白い蕾がゆっくりと開こうとしていた。
研究者はその花に手を伸ばし、小さくつぶやいた。
「……次も、よく売れるといいな」
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