[ジャズ沼のほとり]オルガンジャズファンク JIMMY SMITH と BEASTIE BOYS【超極私的名盤探訪vol.13】
前の記事で、MILES DAVIS がエレピを導入しまくった「エレクトリックマイルス」時代に触れました。その時、エレクトリックピアノについてもアレコレ触れまして…、その時、エレピもいいけど、オルガンジャズもいいよなあと思ったんです。だから、今日はオルガンジャズの第一人者 JIMMY SMITH を取り上げます。
教会音楽/ゴスペルに浸透したハモンドオルガンをジャズに導入
アメリカの発明家 LAWRENCE HAMMOND が1934年に開発したハモンドオルガン。これは礼拝に用いるパイプオルガンの代替品を想定していたそうな。これが黒人さんの集まるおカネのない教会に普及していき、ゴスペル音楽の発展に寄与。そして、ハモンドの音を耳に馴染ませたミュージシャンによってジャズの世界に持ち込まれていったという。COUNT BASIE は1939年には自分たちのバンドでハモンドを採用しており、1950年代にはレコード録音も始まっていた。
JIMMY SMITH は子供の頃からピアノを独学でモノにした男で、兵役では海軍の楽隊でベースの演奏も学んだという。そんな彼が除隊後にハマったのがこのハモンドオルガン。早速ローンで購入して、足元ペダルの鍵盤も駆使しベースパートも兼ねる斬新な演奏技術を習得。だから初期の彼のバンドはドラムとギターとオルガンというトリオ編成。「ベースをクビにしてギャラの取り分をよくした」なんて評判が立つほどだったという。
そんな彼を BLUE NOTE の ALFRED LION が惚れ込んで40以上のセッションに参加、この名門レーベルでリーダー作を十数枚もリリース。1962年には VERVE に移籍。最初はクールな演奏で、モダンなスパイ映画のサントラのような雰囲気もあったのだけれども(「THE CAT」1964年とか)、時代が進むにつれ徐々にハモンドオルガンが持つ、ワイルドな野趣を前面に出すようになっていきます。
傑作ジャズファンク「ROOT DOWN LIVE!」1972年

時代はグッと下がって1972年。MILES DAVIS「BITCHES BREW」の次の年。彼の代表作と言ってもいいアルバム「ROOT DOWN」がリリース!これがアグレッシヴなほどファンキーでカッコイイのです!
ロサンゼルスのライブハウス BOMBAY BICYCLE CLUB(←UKに同じ名前のバンドが今いるね) での録音。さすがにこの時期のバンドにはベーシストもいて、パーカッションにブルースハープも組み込んでます。メンバーはジャズ分野にとらわれず、R&B/ブルース界隈から集まってきた連中。この翌年の MARVIN GAYE「LET'S GET IT ON」に参加するようなメンツがいる。MILES といい、MARVIN といい、時代の潮流の変わり目になる作品を出しまくってた時期に、ジャンルを超えて様々な才能が色々な現場でコラボしてたんだなー。その一枚がこの「ROOTS DOWN」でもあるわけだ。
一曲目の「SAGG SHOOTIN' HIS ARROW」がもう痛快なスピードファンク。ドラムとベースが「LET'S GET IT ON」参加組とあって、もう足腰が強すぎる。もうちょっと補足するとベース WILTON FELDER は THE JAZZ CRUSADERS の立ち上げメンバーで JACKSON 5「I WANT YOU BACK」にも参加。そんな強者をDFに構えて、FWには JIMMY のオルガンと、ワウワウペダルで並走するギターがガッツリソロを取ったりして大暴れする。
二曲目はちょっとメロウなミッドテンポでホッコリテイスト。現代に至るまで鉄板の人気機種 HAMMOND B3 の味わい深い音色が人肌のヌクモリで、かつ JIMMY の手数が多くてとてもファンキー。三曲目は、グッと腰を落としたスローで泥臭いブルース。とはいえ JIMMY のオルガンは饒舌で密度が高い。シカゴブルース仕込みのギタリスト ARTHUR ADAMS(彼もTHE JAZZ CRUSADER 近辺や QUINCY JONES 周辺で演奏してきた強者)のプレイもガッツがあって良い。ブルースハープも加わってホントイイ感じ。
四曲目が表題曲「ROOT DOWN」だ。これがとにかくカッコいい!イントロからクールすぎるベースライン、タイトなドラム、ギターの切れ味鋭いアクセント、からのグッと抑えたオルガンプレイ、そしてブレイクに向けてのアンサンブルが渋い!そして前衛でのギター/オルガンでのソロの交換でテンションは徐々に上がっていく。各自のプレイがキレッキレに洗練されていて確かにジャズ、そして同時に見事にファンク。ドラムの仕事の多様さに舌を巻く!とはいえやっぱりオルガンがいい。倍音を含んで震えるようにロングトーンを響かせるハモンドオルガンの質感、それを魔術師のように多彩に変化させていく JIMMY の技。名演ですわ。
五曲目は、サザンソウルの名曲 AL GREEN「LET'S STAY TOGETHER」。お客もこの選曲にイェーイと沸く。原曲の雰囲気を濃厚に残したホッコリソウル、R&B 世界での基礎戦闘力が高いバンドだから違和感ゼロでこっちもゴキゲン。六曲目は締めにもう一度スピードファンク「SLOW DOWN SAGG」という曲名なのに全然スローダウンしない。パーカッションやベースのソロパートまであって敢えての全員野球、そして全員名選手。その上で無邪気に跳ね回る JIMMY の自由なオルガンプレイがとにかく気持ち良い。
いやほんとコレ、ジャズリスナーというよりロックリスナーに聴いてもらいたいです。この躍動感を、ジャンルの中に閉じ込めるのはどうしたってモッタイない!
ボクのCDは2000年あたりの再発モノなので「ROOT DOWN」の別テイクがボーナストラック収録されてるけど、同じ具材なのに全然別の空気感に持っていってしまっている。優れたミュージシャン同士が気分変えようぜと敢えて仕向ければ、あっという間に違う曲になってしまうのかと、思い知る。すげえなあ、マジで。
「ROOT DOWN」を BEASTIE BOYS がサンプル!/後世への影響
で、ボクが JIMMY SMITH のこのアルバムを知るキッカケが、ニューヨークのヒップホップユニット BEASTIE BOYS なのです。彼らの四枚目「ILL COMMUNICATION」1994年に、ズバリ「ROOT DOWN」という楽曲で、ガッツリ JIMMY SMITH の演奏をサンプルしているのです。元ネタ楽曲のイントロから1分間くらいを全部サンプルして編集構築したようなトラック。これがこれまた実にクールなもんで…。リリックに JIMMY SMITH って名前も出てくるし、MVにもジャケ写も映ってて、あっという間に元ネタが知れるという仕掛け。そもそも歌詞の内容が「地に足つけてリラックスしながら初心に帰ろうぜ」というトーンで(彼らの口調だとイケイケな感じはするんですけど)、音楽の先駆者たち、NYヒップホップのオールドスクーラーから BOB MARLEY までに敬意を払う楽曲なんです。実際に JIMMY のアルバムまで到達するにはCD再発まで待つことになったので、学生の頃に聞いた曲に決着つけるのは結婚した後になったのですが。
おまけに BEASTIE BOYS は ハモンドオルガンにも愛着があるようで。彼らはヒップホップ始める前は完全なパンクバンド(というかその後もパンクチューンをいくつも作って、ライブでも楽器を演奏するタイプ)。上に貼った動画は三枚目のアルバム「CHECK YOUR HEAD」1992年に収録されている「GRATITUDE」という曲。バンド形態で演奏されるこの曲の終盤にハモンドオルガン、おそらく JIMMY と同じ型番 HAMMOND B3 とそれとペアで使われる機材 LESLIE SPEAKER が映ります。LESLIE SPEAKER は中でパーツがくるくる回って音を出してる不思議な装置で、初めてこのMVを見た頃は「なんだこりゃ」と思ったモノでした。しかも色々あって、HAMMOND も LESLIE も日本企業が商標権を保持してるそうです。あ、「GRATITUDE」MV の野外演奏は PINK FROYD のポンペイライブへのオマージュになってるとのこと。ロケ地選びや撮影手法などが参照踏襲されてるし、とりあえず機材ラックに PINK FROYD って書いてある。
さらにウンチクを付け足しますと、このオルガン奏者が、MONEY MARK というアーティスト。日系ハワイの父とチカーノの母を持つミックスルーツで本名は MARK RAMOS NISHITA。生粋のNYっ子だった BEASTIES がロスに拠点を移す時の自宅改装に雇われた大工さんが MARK だったという縁で、音楽活動を始めるという奇縁。大工さんがオモロいと自分のバンドに組み込む BEASTIES の度量が深いってトコロですが、実際彼の音楽はユニークで、イギリスのレーベル MO'WAX から複数ソロを出すなど、とにかくボクは彼の音楽が好き(サブスクにあまり出してないけどね)。BEASTIES のライブ映像の中で、テンション上がりすぎてオルガンの鍵盤の上で逆立ちする勢いの彼を見たことがあります。ご注目!
さて、JIMMY SMITH の演奏は、後代のヒップホップにサンプルされるだけでなく、もっと広範な影響を与えたとされてます。60年代モッズ期から70年代プログレ期にかけて活躍するキーボーディスト BRIAN AUGER(THE TRINITY の頃の彼が大好き!)、そしてDEEP PURPLE の JON LORD、EL&P のKEITH EMERSON。JON や KEITH は LESLIE SPEAKER を通り越してギターアンプにオルガンをブチ込む実験精神を発揮。時代をもっと下れば、ジャムバンドトリオ MEDESKI, MARTIN & WOOD とか。ハモンドだけでなくクラビネット、メロトロンなどのヴィンテージ機材を駆使してファンク/ヒップホップを演奏したりしてます。
それと、BEASTIE BOYS、2012年にメンバーの一人 MCA がガンのため47歳の若さで亡くなってしまい活動が完全に止まっちゃった…。でも、MIKE D が今度ソロアルバムを発信しますね!いつの間にか60歳、還暦になってまして、映像だとちょっとシワシワになってた。目つきも温和になってた、狂犬のようなキャラだったのに。でも応援してます!実は、今回の記事の動機は BEASTIE BOYS の方が大事だったかも!
今回もダラダラした文章を最後まで読んでいただきありがとうございます。note 記事の文字数ってホントはもっと少ないのが普通?ってことがやっとわかってきた…。あと改行多めとか行間空けるの多めが普通?全然そのマナーに乗っかることができない感じ…。
気づいてなかったんですが、運営さんが記事を英語にしてくれる場面があるんですね。始めたばっかりなんだけど3分の1くらいの記事が英語になってるっぽい。そういうモノなのかな??海外の方のご意見、ぜひ聞きたいモノです。
