【長野】硫黄岳~本沢温泉 | 長野県南牧村 | 2003年
通年営業の野天風呂として日本最高所に位置する「本沢温泉」。当初はここだけを目的地とした一人旅を考えていたが、次第に八ヶ岳の端くれにでも登りたいと思い、計画を練り直した。
今回の旅は、「一人旅」ではなく、「単独行」にしたかったのだ。
通年営業としては日本で一番高地にある野天温泉「本沢温泉」。
林道分岐点を本沢温泉方面に進む。道が悪く、4WD以外の乗用車であれば途中で車を止めて、数キロ歩かなくてはいけない。
自分の車は4WDなので林道のゲート部分まで距離をかせぐ事ができた。

ゲート部分
車数台分の駐車スペースがある。
4WDでも車で行けるのはここまで。ここから本沢温泉まで約1時間歩くことになる。

穂高に比べると、道は単調だなと思っていたが、峠近くなるとやはり石がごろごろしだした。雪が無ければ特に問題ないのだが、やはり雪で滑るのは怖いので細心の注意をはらいつつ前進。変な所に力が入るせいか肩がこる。これで明日もまた筋肉痛だろうなとさらに気が重くなる。

1時間強をかけて夏草峠に到着。
ここでの景観を結構期待していたのだが、まわりは木々に囲まれてほとんど展望できず。さらに、こまくさ荘は閉鎖中。少し心細くなる。

ここで道は天狗岳方面と硫黄岳方面に分岐。目的地である硫黄岳に向かう。峠から見る硫黄岳はまだまだ遠そうだ。景色が変わらない事もあって疲労は通常の3倍。

ハイマツ地帯を越えると、ずっとガレ場が続く。
途中、このように崖と石の間をこえていく場所もあるのだが、強風で体があおられ、かなり恐怖。

尾根の左側には爆裂火口。
強風はこの火口に向かって吹くので、かなり怖い。写真を撮る時には四つんばいになって撮影。立ち止まって火口の方に体を向けると、ものすごい勢いで押されてしまう。

並んで立つケルンをいくつか通り過ぎて行き、頂上はもうすぐ。
下りの事を考えると少々ゲンナリ…。

硫黄岳頂上到着。
天気が良いので写真だとほがらかに見えるが、猛烈な風が吹き、気温も0℃前後だと思われた。体感温度にすればすでに氷点下。
頂上付近で話しかけてきた、おじさんは立派な口ひげをはやしていたが、自分と同じく、鼻水でガビガビになっていた。一通り見える山の説明をしてくれると、一目散に降りていってしまった。

柱につきささるように見える氷。
この写真で分かるとおり、風は基本的に同一方向から吹いていて幸いだった。もし四方八方からこの風をくらってしまえば、こけてしまいそうだ。

頂上にぽっかり口をあける爆裂火口。
出来ることなら覗き込んで写真の一枚でも撮りたいところだが、寒さと恐怖で近寄れなかった。

山の頂上というイメージとは異なる、硫黄岳の頂上。
だだっぴろい広場という感じ。足元はガレ場っぽく、地表から大きく顔を出す石は見当たらなかった。なにか石畳のようだった。

頂上の南側にあった非難小屋
初めて非難小屋というものを見た。
小屋の外に、いかにも登山家という感じのお兄さんと、写真撮りにきましたというおじさんが食事をしていた。小屋の中でもカップルが食事をしていたようだった。

風が強いのでバーナーになかなか火がつかない。小屋の蔭でなんとか着火。コンビニで買った鍋焼きうどんを温める。おにぎりもあったが食べる気にはならなかった。
写真は小屋の入口。写真向かって左側で食事をした。

カップルが去った後の小屋内部。
日はあたらないのに風は通るので、多分外より寒いだろう。中に入る気力もなく、カメラを突っ込んで写真だけ撮影。

頂上北側(非難小屋と反対側)から見える、根石岳、天狗岳(2646)。
写真を撮っていると、小屋の外で写真を撮っていたおじさんに話しかけられた。どっちから登ってきたかとか色々話していたのだが、おじさんがふともらした言葉に驚愕。
「単独行はお互い気をつけなきゃいかんね、先週も一人おじさんが滑落しちゃってね」
「滑落って事は亡くなったんですか?」
「そりゃそうだよ、(遺体を)引き上げるの結構大変だったみたいだよ。やっと引き上げたばかりらしいよ。」
おじさんの鼻の下のガビガビを見つめながら、誰か俺をおんぶして下山してくれないかなと心から思った。

横岳(2829)と赤岳。
その間をつなぐ狭い尾根を見ていると、果たして雪が積もっていなくても、高所恐怖症の自分には行けないだろうなと思った。

再び頂上北側。北アルプスがはっきり見える。雪をかぶった槍の穂はいつ見ても素晴らしい。
同時に穂高に登ったのが先週で本当に良かったと思った。日が暮れてからの移動なんぞ、プチ遭難ではすまなかっただろう。

頂上中心部にたつケルン。他のピラミッド型とは異なり、煙突型。
他にも数人登っていたが、この日が平日のせいなのか単独行が多かった。
自分を恐怖の淵に落としこんだ、ガビガビおじさん2号に頼まれてデジカメのシャッターを押すが、寒くてうまく撮れない。おじさんは画像を一度確認するともう一度、自分にカメラを差し出した。

夏沢峠で一休みした後、一気に本沢温泉まで下る。時間は3時半。なんとか日没までに間に合いそうだ。
入浴料(520円)を払って、野天風呂に向かって登る。

たった今登ってきた硫黄岳。

建物の前にある野天風呂の看板。実際には野天風呂はここにあるわけではない。

水飲み場のすぐ隣にある本沢温泉大権現。
仰々しい名前からすると小さな祠ではあるが、単独なので心細くもあり、お祈りする。

温泉の看板。
この特徴的なフォントは「篆書体(てんしょたい)」といって、歴史ある寺社や山小屋の看板などに「権威」や「伝統」を示すために使われるそうな。

野天風呂と登山道の分岐点。
左が野天風呂、右が峠への夏沢峠への登山道。

分岐点を野天風呂方面へ、しばし歩くと谷の下に野天風呂が見えてくる。話を聞くといつも誰か入っている感じだったが、幸い誰も入っておらず、貸切状態となる。

日が山の陰に入り、薄暗くなったが、まだ4時前。写真で見るより狭い風呂だった。畳2畳分はないだろう。

日本最高所と誇らしげに書かれた柱。
穂高ロープウェイの穂高口と同じくらいの標高。

画像処理をして少々色が変になっているが、脱衣所。
荷物全部をここに置いたら一杯になってしまった。幸いだれも来なかったからいいが、後から人が来ても荷物はここに置けなかっただろう。

脱衣所と風呂、すぐ下は谷。
目標にしていた風呂ではあったが、なぜかあまり感動しない。
風呂から出たら車まで、40分ほど歩かなくてはいけないからかもしれない。

風呂は白濁硫黄臭。これぞ温泉!無色無臭の温泉は自分の中では温泉ではない。
風呂の底は外と同じ砂利。温度は思ったよりもぬるめで長湯向き。ただし出にくい。

温泉につかりながら見上げると硫黄岳。やっぱりスリルがある旅は終わってみると楽しい。

少々長湯しすぎてしまい、かなり急いで駐車場へ降りる。予想以上に下りに時間を要してしまい、駐車場に着いたのは5時だった。危なく日没するところだった。
この後、近くの稲子湯で冷えた体を再度暖めなおし、松原湖近くで車中泊。20時過ぎには寝た。

<おわり>
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